出会った本、映画の感想。日々のこと。

by august22

C・イーストウッド監督作 『ヒアアフター』

d0109373_9222498.jpgパリのジャーナリスト、マリーは、恋人と東南アジアでのバカンスを楽しんでいた。だがそのさなか、津波に襲われ、九死に一生を得る。それ以来、死の淵を彷徨っていた時に見た不思議な光景(ヴィジョン)が忘れられないマリーは、そのビジョンが何たるかを追究しようと独自に調査を始めるのだった。サンフランシスコ。かつて霊能者として活躍したジョージ。今では自らその能力と距離を置き、工場で働いていた。しかし、ロンドンに暮らす双子の少年ジェイソンとマーカス。ある日、突然の交通事故で兄ジェイソンがこの世を去ってしまう。もう一度兄と話したいと願うマーカスは霊能者を訪ね歩き、やがてジョージの古いウェブサイトに行き着く。そんな中、それぞれの事情でロンドンにやって来るジョージとマリー。こうして、3人の人生は引き寄せ合うように交錯していくこととなるが…。







スピルバーグとイーストウッドとは意外な組み合わせに思えます。
それにしてもイーストウッド。毎年1本監督とは凄いペース。
脚本は『クイーン』『フロスト×ニクソン』のピーター・モーガン。
え、もう終わり?と129分がすごく短く感じるほど、テンポもよく充実した作品でした。

津波は冒頭すぐに始まり、ニュース映像そっくり。
舞台はサンフランシスコ、パリ、ロンドンを行き来し、最後に運命的に三者が集結するのも必然に感じました。
脚本も元からいいのですが、超能力者がテーマとなっていてもスピリチュアルな世界に偏らず、人間のドラマに仕上げられるイーストウッドの力量は見事です。
不思議な能力で見えてしまう「ヴィジョン」もことさら強調せずセーブしているところも、一線を画すところとなっています。

ジョージは独りの時間を少なくするためか、昨今流行りの言葉を選べば‘リア充’させようとしてか、料理教室に通っているんですが、この先生が典型的なイタリア人で。
授業中に「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」なんて掛けるんですね。
ドイツ映画『マーサの幸せレシピ』に出て来るイタリア人シェフ・マリオも同じようなことしてましたっけ。
隣りの生徒をチラ見して、「包丁違う?」「あの人はマイ包丁持ってきてる」と、この明るい料理教室が唯一心が解れる場面です。


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失った家族と話しができたら・・・とは誰もが1度は願うことなのかもしれません。
2度と会えないことを再確認するだけで、反って辛かったことを思い出してしまうだけなのに。
だから、料理教室で親しくなったメラニーも興味本位で要求したけれど翳の部分を見られることで思いもよらぬ情動が起こり、せっかく気が合い始めたのに離れて行ってしまうんですよね。
ひとりのテーブルで食事をするジョージの横顔は、喪失と焦燥が見てとれて、哀しい場面です。

確かに、触れただけで相手のヴィジョンが見えてしまうなんて。
強い精神力で自分を支えなければ、均衡を保つことは難しいのかもしれません。
この繊細な青年には超能力はあまりに重荷だったんですね。

ディケンズが好きで壁に肖像画まで掲げて、就寝前はデレク・ジャコビ(本人役)朗読の「クリスマスキャロル」を聴くのが習慣です。
壁の肖像をメラニーに尋ねられてちょっとはにかんで、でもちょっと嬉しそうに「ディケンズ」と答える表情がよかったです。
超能力で儲けようとする兄に反論も抵抗もできず、逃れて向かうのも、ディケンズ博物館観光。
観光客に混じって、ガイドの「ディケンズは子供が何人いたかご存じ?」に、最後尾でひっそり小声でしかも嬉しそうに「10人」と呟いたり、『ディケンズの夢』の絵を愛おしげに見つめます。
彼になら自分の苦悩も分かって貰えたかもと慕っているようです。
就寝前の習慣である朗読を聴いた後の安らかな寝息にも、それは表されています。

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双子の兄を亡くした少年の、会いたいという懇願に遂に応じた場面は当然涙を誘います。
でも、おしゃべり好きで陽気な兄らしい言葉を伝えながらも、「それは僕の帽子だぞ」は微笑ましかったです。
形見として大事にしたいのは遺族の当然の真意ですが、大切にしていたものは一緒に送ったほうがよかったのかな?なんて過りました。

それぞれがそれぞれなりの形で生き方を見つけたラストもよかったです。
幸せなヴィジョンも見られたし。


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どう置くのが正解か安定するのか
いまだに不明で不安で
緊張状態で頂きます。

^^; 

by august22moon | 2011-02-22 23:53 | 映画 | Comments(0)