2012年 02月 21日
行定勲演出 『パレード』 WOWOW放映
この作品は原作も読んで先の映画化も見ました。
原作は、その設定も構成も結末も面白かったです。
映画はほぼ原作に忠実に作られていて、結末知って見ているのに、その時の反応を俳優がどう演じるのか、その時の表情は私が想像した表情と同じか、という観点で楽しめました。
自分の中で完結しているせいもあって、残念ながら舞台版の配役で新たな魅力を感じるひとはいませんでした。俳優さんたちの経験の差もあるでしょうが全体にいろんな意味に於いて若い。それになんだか長過ぎるような。
舞台より映画で表現されたほうが生きるお話しだった気がしました。
良介はだいぶ雰囲気が違っていたので、それはそれでいいのでしょう。
琴ちゃんも気だるさは無く可愛い一色というのもまたいいのかも。
トオルは林遣都くんの圧倒的な透明感と生活感の無さは追随を許さないと思っているので、もう他は考えられなくて。
舞台版では、真犯人ではないかと疑惑を持たせる正体不明な感じが持てなかったですし。
直輝役に藤原くんのようなスターを配役しては、他のメンバーと並ぶと巧さのうえでもスター性でも突出し過ぎちゃって画面を独占されて彼だけの映画になってしまう。巧いし華があるのは仕方ないですけど。
それに犯人役と気付かないまでも何か重要な役であろうことは想像ついちゃうし、ミステリの意外性半減なんじゃないのかな?と懸念があったんです。
ところが、結末知っていて見てもやっぱり面白かったんです。ギャップを成立させるのが巧くて。
朝バスルームから出て来る姿がまず巧い。そこに住み慣れたようすが出ていたんです。
後で結末まで見てからもう一度見返した時に分かる、通り魔事件のチラシを見せられた時や「あんたがやったの?」とビデオの件で突然問い詰められる時の、戦慄と偽装を交錯させる瞬間の表情なんて巧かった。
未来が突破口を自ら開けつつあるのを知った背中とかね。
それでも、福士さんだと突出しない分、それが逆に巧く作用して仲間に馴染んで見えましたしサラリーマンぽいし、渇いて冷めた表情も良くて、淡々と日常を送っている人間が実は最も深い闇を抱えている意外性は感じられました。
あと福士さんは、姿勢がね、なんかいいですね。
映画版の完結させない恐怖と違い、直輝の決着やその後にまたいつもと変わらぬ日常が繰り返されるというエンディングは、また別の恐怖を描いて見せていて面白かったです。