出会った本、映画の感想。日々のこと。

by august22

岩井俊二監督作 『四月物語』 SDT放映

d0109373_17372945.jpg先日、地元TV局で放映されて今更ながら初めて見ました。
『花とアリス』も最近になって見ました。
「アリス」ほど心象風景や主人公を巡る風景が流れていくでもなく、主人公・卯月の片思いと新生活が淡々と描かれてゆく感じです。
卯月演じる松たか子さんが可愛らしいし、あこがれの先輩のバイト先へおずおずと行くのも微笑ましい。
まだ何ものにも染まっていない無垢なお嬢さん。
視線は泳がない。真っ直ぐ前を見据えてる。そこがアリスたちとの違い。

それよりなにより。
加藤和彦さんです。
画廊の社長さん?役で出演の加藤和彦さんに目を奪われてしまいました。

私は、北山修氏はいつもポーカーフェイスだった印象しか無くて。
加藤氏はいつも穏やかに微笑んでる印象でした。
『だいじょうぶ、マイフレンド』で久し振りに加藤氏の声に触れた時に
そうだこんなに繊細な歌声だったと思い出したのでした。
その頃、フォークルのメンバー募集を雑誌メンズクラブに出したというおしゃれなセンスも知ったのでした。
順調に活動されていたのに
突然逝ってしまわれたのがずっと残念でならなかったのです。

急な土砂降りで先輩が傘をと勧めるのを断って飛び出した卯月。
ようやく話しが出来ていっぱいいっぱいなんですね。
でもあまりの降りに画廊前で雨宿りしているところに出て来た加藤氏が傘を譲る。
自分は他の置き傘を使うからと。
買ってきて返しに来ますちょっとお借りしますと、先輩の勤める書店に戻って傘を借りてきて画廊へ返しに行く。
譲るつもりだったけどきみ正解だったよ置き傘がこれしか無かったと一端貸した傘を受け取る。
終始優しく微笑んで。
卯月にしてみたら、借りた傘を返しに行く口実ができたので、この紳士はまさにキューピッドなわけですね。

卯月から傘を返して貰って、土砂降りの横断歩道を渡って行く途中で振り向いて、傘を少し掲げてにっこり頬笑んで、そしてまた歩いて去って行くんです。
振り返って微笑んだその笑顔に、私はほんとうに久し振りに、いやもしかしたら初めて、
胸が絞め付けられました。
まさかそんなふうに感じるとは意外でした。
岩井氏はなぜ加藤氏の後ろ姿をずっと写したんでしょう。
なぜ振り向かせたんでしょう。
写してくれていてよかった。振り向かせてくれてよかった。
映画は残るから。

98年の映画ですが、加藤氏が「じゃあね」と言った声が聞こえたようでした。

さよなら、トノバン。

by august22moon | 2012-02-26 01:00 | 映画 | Comments(0)