伊坂幸太郎 『フィッシュストーリー』 新潮社

フィッシュストーリー

伊坂 幸太郎 / 新潮社



図書館で借りたら、裏面に「汚れ有り」のシール。
捲ってみると見返しから数ページがよれよれ。入浴中にでも読んでた方からの寄付かしら。
ページに油染みを発見したことがありましたが、それよりはマシですけれど。

表題作の他『動物園のエンジン』『サクリファイス』『ポテチ』の4編からなる短編集。
『ポテチ』は映画化作品。これのみ書き下ろしでした。
「野球は心配のスポーツ」という言葉を読んだのはNumberだったか忘れましたが、サッカーやバレーのようにフィールドやコートに立って常に攻撃・守備のために構えているスポーツと違って、さっきまでベンチに座っていた選手が出て行って攻撃を始めるという態勢は、剣道や相撲などの武道の立ち合いに似てはいますが、確かに‘心配’。
祈るような気持ちでバッターを見つめ、その選手が打った時の感動が醍醐味でしょう。
WBC決勝戦延長でのイチローのセンター前ヒットなんてね。

始まりから軽妙なセリフとキャラクターで笑えましたが、ストーリーが一見迷走しているようで。
いったいこれから何が起きるの?何か起きるの?と訝しくなってきたあたりで出て来るのが、新生児取り違え問題。
赤いシリーズか?百恵ちゃんか?と、ちょっと期待外れな気分でいたところのラストに泣けちゃうなんて。
誰もが過る親不孝という罪の意識。
それを、自らの人生に置き換えて表現されるピークを越え成績不振のベテラン選手の起死回生の一打に絡めて、琴線に触れる・・・・いや、感動的なラストでした。

「ただのボールがあんなに遠くに」
野球にまるで興味のなかった若葉さん感動の言葉が、真実。

『動物園のエンジン』はつまらなかったです。他作品は後日。


【17日追記】
『サクリファイス』 
探偵として人探しに訪れた村には、古から続く奇妙な風習があって・・・というお話し。
真に‘生贄’となっていた者は誰か、ということなんですね。
先に読んでいた『ポテチ』にも黒澤って出て来たなと思ったら、『ラッシュライフ』『重力ピエロ』から登場しているおなじみのキャラなんですね。 
黒澤というキャラをもっと知ってから読んだほうが、面白味も違ったでしょう。

『フィッシュストーリー』
これも映画化されていたんですね。知りませんで。
しかも主人公のひとり雅史役にまたも濱田岳さん。
オムニバス形式の展開はよくあるけれど、これは面白かったです。
ある本に書かれた印象的な一文が、時空を超えて起す奇跡のようなお話し。
売れないロックバンドがこの一文にインスパイアされて曲を作ったことで、より拡散したんですね。
ハイジャック場面は急に現実離れして見えましたが、お伽噺に陥らずに留めています。
常に準備は必要なのだって善い教訓。

バタフライエフェクトってことになるんでしょうか。差異というのではないけれど。
逆にそれが溢れる思念を込めたものではなく何気ない言動であった場合はと考えます。
生命体のように生き続けて人から人へ連鎖していくことを考えると社会で生活することに恐怖すら感じます。
清張の『絢爛たる流離』は、同じひとつのダイヤに取り憑かれた者たちの人生が悪い方に転んでゆくという悪夢を描いていました。
誰かの心を動かしたものが善い影響として生きて流離してゆくお話しというのも・・・在ってもいいのかも。

by august22moon | 2012-05-11 21:58 | 読書 | Comments(0)