2012年 09月 29日
『日本幻想文学集成『夏目漱石 琴のそら音』 富士川義之・編 国書刊行会
94年刊行のシリーズで、他には川端康成もあって『白い満月』なんて面白そうでした。
全33巻なのかな?その中の夏目漱石の怪奇譚や幻想的な趣きの作品10篇をまとめた短編集。
表題の、友人から聞いた摩訶不思議な話を切っ掛けに日常に潜む非日常に怯える『琴のそら音』。
黒澤明が映画『夢』に引用した「こんな夢を見た。」の書き出しで有名な『夢十夜』。
不条理劇のような辻褄の合わない展開も‘夢’だからなんでしょうけれど、なんだかもやもやした結末の作品もありました。
1900年(明治33年)ロンドン留学中に訪れた『倫敦塔』。
漱石のロンドン滞在の心境を反映した観察眼に、独特のユーモアを垣間見せる紀行文『カーライル博物館』。
入院中に隣室から聞こえて来る奇妙な音。この音の正体が判明し、様々な人生と生死が交錯する病院という場所の重苦しさを表した『変な音』。
この直接的でシンプルなタイトルに惹かれて読んでみたんです。
さすが漱石で、最後は無常感ある展開だったんですが、ユーモアとオプティミスティックな漱石らしさ漂う作品でした。
作中再入院しているということは、明治43年のあの「修善寺の大患」前後のことなんでしょうか。
やっぱり漱石は面白いですねぇ。
合い間合い間に読んでいこうと思います。