山下敦弘監督作 『マイ・バック・ページ』 wowow放映

d0109373_16284252.jpg【あらすじ】
1969年。理想に燃えながら新聞社で週刊誌記者として働く沢田雅巳(妻夫木聡)は、激動する“今”と葛藤しながら、日々活動家たちを追いかけていた。それから2年、取材を続ける沢田は、先輩記者・中平武弘(古舘寛治)とともに梅山(松山ケンイチ)と名乗る男からの接触を受ける。「銃を奪取し武器を揃えて、われわれは4月に行動を起こす」沢田は、その男に疑念を抱きながらも、不思議な親近感を覚え、魅かれていく。やがて、「駐屯地で自衛官殺害」のニュースが沢田のもとに届いた・・・。











公開時には地元で短期間上映だったため見逃してしまい、前回放映も見逃してラストシーンとその直後の『W座からの招待状』しか見られず、ようやく全編見ました。

『W座からの招待状』ではラストの涙の場面を取り上げた小山薫堂氏が、原作者の川本三郎氏と親しかった安西水丸さんに川本さんは涙脆いひとだったのか尋ねると、水丸さんは間髪いれずどころか被せ気味に、すぐ泣いてましたね泣いてばかりいましたと、いつもの笑顔で答えていたのが印象的でした。
そうか。優しいひとなんだ。

映画は、原作で川本氏が語らなかった部分を多く創造されて、70年という激動の時代を描いていました。
ザラついた映像ばかりでなく、登場するひとびとの顔立ちまであの時代そのものの画になっているのは、面白かったです。
脇を固める古館寛治氏、中村育二氏などさすがの巧さでした。
(この古館氏は最近、地元のCMにもユニークな役で出演されて印象的だったんです。クローディアス役とかね・笑)
京大全共闘議長の滝田も、山内圭哉さんの威圧感ある不可思議な佇まいはまさにはまり役。
タバコふかしながらアームチェアーに深く腰掛け、背後に部下従えてる逆光の図。なんてお似合いな(笑)

東大全共闘議長の山本をモデルとした唐谷を演じた長塚圭史さんの適役ぶりには驚きました。
長塚氏の持っている異質感は、この時代に生きた人物の持つ寂寥感や喧騒の影が残されているものだったんだと気付きました。

松山ケンイチさんは、もうなにを演じても好きなんですが。
この詐欺師的なズルさを、彼独自の無垢な部分が滲み出た憎めない無邪気さのように演じて、つい惑わされてしまいそうな人物として、原作からは読み取れなかった(言及されていない)部分を創り上げていました。
なんと、自衛隊員殺害も実行犯ではなく後輩にやらせていたとするとは、驚きの展開でした。
それでも、梅山(片桐)という人物を想像した時、さもありなんと思わせました。
取材料しっかり請求するわ、食事はごちそうになるわ、逃走資金を無心するわ・・・。
別の記者に金の無心をしたのに無理やりカンパされたとケロリと嘯くに至っては、沢田ならずとも唖然で二の句が継げませんよぉ

主演の妻夫木さんは、ラストの涙が止められない表情はとてもよかったです。
人目を忍ぶつもりで訪れた店が偶然、潜入取材で知り合った男の店で、記者としての己を省みらざるをえない事態になったというのも、無理やり作った照れ笑いで顔をあげた瞬間に切れる編集もよかった。
しかし、あれだけ時代を活写した作品の中にあるとつくづく、彼の顔立ちは、
ありあまる幸福の時代に生まれた顔なんだなぁと思いました。


映画
Commented at 2012-10-27 20:16
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by august22moon at 2012-10-27 22:19
鍵コメさま、どうもありがとうございました。

改めましてそちらさまでも御礼させていただきました。
by august22moon | 2012-10-27 18:46 | 映画 | Comments(2)

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