ジャン=ジャック・アノー監督作 『セブン・イヤーズ・イン・チベット』

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97年の公開当時にも見たんですが、『セブンイヤーズインチベット』を久し振りに見ました。
ハインリッヒ・ハラー役のブラッド・ピットは当時、頬にかかる金髪と、甘く遠くを見る瞳が超のつくほど人気。
第二次大戦中に脱獄しインドからチベットへ逃れたハラーが、少年ダライ・ラマ14世と過ごし、その間中国のチベット侵攻にまで遭遇した自伝の映画化に、人気スターを配するのってどうなんだろうと疑問に思いながら見たのでした。
少年時代のダライ・ラマを演じるジャムヤン・ジャムツォ・ワンジュク君が、もう素晴らしくて。
好奇心旺盛で少年らしい純粋さと品格と聡明さを併せ持った、その瞳の美しいこと。
俳優さんではないようで、そこがまたよかった。
ハラーと初めて出会った時、玉座からハラーの金髪をくしゃくしゃと触って嬉しそうに「黄色い髪だ、黄色い髪。腕や足も同じ?」と無邪気に尋ねる。
「映画館を作りたい」とこの深山幽谷の地のあってもっと世界を知りたいと考えていて、火炎瓶って?切り裂きジャックは誰?とたたみかける天真爛漫さ。
ハラーが「この曲はドビュッシーの『月の光』ですね」と言うや「この曲についてもっとなにか知ってる?」と、新しい知識を得ることが嬉しくて楽しくてしかたがないというように、目をきらきらさせる。
侵攻した中国軍が、何日もかけて歓迎の意を込めて作られた鮮やかな砂絵の曼荼羅を蹴散らしまさに踏みにじった非礼にも、表情を崩さず、下座に座ろうとしない相手に「わたしが降りよう」と玉座から降り、気負う事もせず怯えもせず毅然とそして平静に自国について語る揺るぎない凛とした姿勢。
あの深く力強い希望と慈しみ溢れる声と大らかで親しみやすさを湛えた笑顔を持った猊下の少年時代は、きっとこうだったに違いないという気持ちになってしまうのです。
ポタラ宮の屋上から望遠鏡を覗きこんで町を見渡しながら、静かに経を唱え祈る姿は、その後の苦悩を思うと沈痛な場面です。
登山家ハラーの波乱の半生というよりも、ダライ・ラマ14世の少年時代を描いた作品。
もっと描いて欲しいと思わざるを得ない映画なのでした。

ヨーヨー・マ演奏によるJ・ウィリアムスの曲も、美しく、美しく。
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映画
by august22moon | 2012-12-26 23:15 | 映画 | Comments(0)