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若松孝二監督作 『千年の愉楽』

若松孝二監督作 『千年の愉楽』 _d0109373_1254164.jpg【あらすじ】
年老いたオリュウノオバ(寺島しのぶ)の脳裏に、この紀州の路地で生まれ、女たちに愉楽を与え、散っていった男たちの思い出が駆け巡る。自らの美ぼうをのろうように生きた中本半蔵(高良健吾)、生きることを強く望んだ田口三好(高岡蒼佑)、北の地でもがいた中本達男(染谷翔太)。彼らの誕生から死までを、助産師をしていたオリュウノオバは見つめ続けていたのだった。


先行上映会で見て来ました。
会場は、若松監督が過去3回も舞台挨拶をされたサールナートホール。
HPによると、監督は12年5月の『海燕ホテル・ブルー』初日公開と『11.25~』の先行上映での舞台挨拶の後、「次は『千年の愉楽』で頼むな」と仰っていたそうです。

原作の文章にはかなり手こずって、でもそれがまた怪しき異空間を感じさせたのですが、この映画では異形のものとか異様さ際立つエピソードを選ばなかったので、カラリと乾いて硬質。より現実的。
オリュウノオバと礼如の家は、路地の家々の瓦屋根やそのむこうの静かな入り江が見降ろせて、なんと眺めのいい家。
オリュウノオバが石段を駆ける下駄の音、瓦屋根を打つ雨音が心地いい。
欲を言えば、時代感にもう少し繊細であって欲しかったです。

役柄としては年齢的にも高岡さんが半蔵かなと思ったんですが、20歳前後の無邪気さ純粋さを表す声も仕草も、もっと生きてる証が欲しいと叫ぶのも、宿業を背負った儚さの表現も、安定感を感じました。
見えなくなりつつある目で、海を見つめる表情は特にその哀しげな目が活きた表情でした。
最期の安らかな顔もよかった。けど、桜の木じゃあないのね。自殺ではない疑惑を残しているようです。

捉まえきれない小鳥を象徴とした半蔵。裏切っては悔んでを繰り返し、若さと美貌を持て余す若者という役柄を、今の高良くんなら立っているだけで観客側に感じさせることができるのかも。
時分の花、ということでしょうね。

オリュウノオバを演じた寺島しのぶさんは原作の巫女さんみたいな印象ではなく、もっと生身の人間。
揺れ惑いながらも若者たちを見守る姉的な存在という点では、これ以上ない適役。
時折、古き良き時代の女優さんの演技とでもいうものを感じさせます。それこそ、血、なのか。
原作では具体的イメージの沸き難かった「礼如さん」も、佐野史郎さんが演じると、静かに構えて頼もしい男ですが、正道を外れた僧侶の、闇も感じました。

ポスター題字は『海燕ホテル・ブルー』の映画化のご縁なのか船戸与一氏。


昼(会員のみ)と夜、それぞれの上演前に、三好役・高岡蒼佑さんのプレトークがありました。
私が行ったのは夜の部。
司会の方が、「今回は高岡さんのご厚意で静止画ならば撮影OKとなりました。フェイスブックやブログに掲載して結構ですので、宣伝してくださいね」。
皆さん一斉にケータイやカメラを取りだす。私も。
高岡さんが登場して暫くは、シャッター音やフラッシュが凄かったです。
ピカッ かしゃっ ぴろりろ~ ピカッ ぐゎしゃっ カシャ ぴろりろり~ん ピカッ・・・

(お話しは順不同。記憶違いや思い出したことは訂正・追記します)
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「本日は寒い中を、お越しくださってありがとうございます」と挨拶されると、寒い?とリアクションしたお客さんが目に入ったようで、「え?寒く、ないですか?」。
で、場内一気に和やかなムード。
いや、風はそれほどありませんでしたが、きんと冷え込んでました。寒かったです。

役作りの為にストレッチや食事制限で身体を絞ったそうです。
ダイエット?
「まあ・・・平たく言えば」とニコニコ。
映画の頃ほど頬はこけていませんが、それでも司会者の女性よりお顔が小さい(笑)

「映画は大きく(大柄に)見えるので。それに高良くんが・・・こーんな細いので」と、左手で棒のようなと仕草したので司会者が、そんなに細くはと笑うと、「いや、ほんと、細いんで」。
確かに着物1枚の時に横向くと細いというよりも、薄い(笑)

ロケは12日間ほどだったそうです。
監督は撮影が速くて、「じゃあ次(の場面)も撮っちゃおうか、とか」。
演じる側としては「いつでも準備が出来ていないといけないので。そこは、大丈夫です、と」。
ちょっと含みのある言い方でにやり。大変ではあったのが伝わって会場に笑いが広がります。

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「世の中が騒がしかった頃のひと月ほど前にオファーを頂きました。」
と、聞こえたんですが。前ではなく後と答えてる記事がありました。聞き間違いですね。
(お騒がせしたなどと言わないところは立派だと思うよ、おばさんは。)
セリフの勉強中はお風呂に入っていても「(いい感じに)響くので、つい大きな声で」練習しちゃうそうです。
舞台は1ヶ月前から稽古して本番は3週間位、一日2回公演の日もある。ドラマは3ヶ月間。役が抜けるのに時間がかかってしまうことがある。映画の撮影期間の長さが比較的切り替えやすいそうです。

ロケ先で美味しいものは食べられましたか?
行かなかったそうで、「食事制限していたのでサラダ食べてました」
「監督は高良くんと牡蠣をバクバク食べたそうです」。
バクバク?「ええ、バクバク」。
「高良くんには、皆には内緒にしとけと言って」。
え?じゃなんで知ってるの?と会場中の頭に?が浮かぶその刹那。
「監督自身がすぐ喋っちゃって(笑)」。

撮影の合間はなにを?
「高良くんはipod聴いてたり、佐野さんはカメラ(ここで会場に笑いが起こりました)・・・僕は走ったり、ストレッチしたりしてました。」
なぜか司会者さん、ヨガもいいですよ。
「ああ・・・ヨガは・・・いいらしいですね。特に女性には。」・・・としか言いようがありませんよねぇ

ある時、司会者さんの言葉が聞きとれなくて、「・・・なんですか?」と身体を傾けて小声で尋ねたのを、お客さんが可愛いと言ったのが聞こえて、一瞬照れ笑い。

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趣味のお話し。
「円空仏に興味があって」、彫っている時の想いを想像するそうです。
彫り跡を残した素朴な一刀彫りに、なにか感じ入るものがあったんですね。
会場であるサールナートホールは映画館も在る、寺院の多目的施設なので、お話しし易かったのかもしれません。

司会者さん、静岡は初めてかという質問をするつもりだったのだと思うんですが、静岡は・・・と振ると。
「お茶、ですよね」と笑って。
その後、会場中びっくりのお話し。
なんとご親族が伊豆にお住まいで、お正月に「伊豆シャボテン公園」へ遊びに行ったそうです。
一同、ええ~!!
会場の反応に照れたように「なんとなく」行ったと。「動物を見たり・・・」とニコニコ

「静岡県って長いじゃないですか。だから、早く静岡に着け~って(笑)」。
これには会場中納得の声。
県外の方によく言われます。確かに、長い上に新幹線の駅が多いから余計感じるんですよね。
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最後にメッセージを。
「若松監督の最後の映画になってしまいました。
自分たちは3月9日まで宣伝に突っ走るつもりです。
(皆さんは)宣伝しなくてもいいので(場内笑)、この映画を楽しんでください。」
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質問事項は予め解っていたでしょうし、昼間もやってますが、
どの質問にも穏やかなトーンで淀みなく丁寧で誠実な受け答えでした。
退場して、上手暗幕前でもう一度深々とお辞儀。


映画
by august22moon | 2013-02-17 20:09 | 映画 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22
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