長塚圭史演出 『あかいくらやみ ~天狗党幻譚~』 wowow放映

5月の舞台がもう放映。
観に行かなかったから嬉しいですけど。早いですね。
原作は山田風太郎『魔群の通過』。この絶妙な原題を残さないのは勿体ない。
原作をベースに、長塚作品らしい摩訶不思議な時空間世界が入り乱れて展開する構成。

天狗党の乱については吉村昭氏の『天狗争乱』もありますが、天狗党の悲惨な末路を知っただけでいくら吉村ファン・幕末モノ好きといえども読むことができずにいましたし、山田風太郎作品もその昔『伊賀忍法帖』なんて読んじゃって、あまりの妖しさに以降読めませんで原作も未読です。

戦後を舞台にして、大金を横領し逃げ込んだ人里離れた温泉宿が迷路のようになって異空間の入り口になっているのは面白い導入。
そこのおかみが白石さんだなんて、それだけでもう異界の雰囲気充分。
幕末に迷い込んだ未来(昭和の戦後)の若者が実は敵対する残党の子孫。
これはちょっと賛否ありそうな。
‘鎮める’方向にしたかったんですね。霊を慰めたかったか。
TVの『世にも奇妙な~』なら許せたかもですが・・・。
しかし、無念の志士たちを蘇らせるというのはそれだけで十分劇的ですから、他はまぁいいかな。

迷い込んだのが恋人同士(?)だけでなく、取材に来た作家と助手のコンビもというのがまた巧い具合に複雑に絡み合って面白かったです。
巧い役者さんが揃ったので、時空が変っても混乱はしませんでした。
作家・葛河役の古舘寛治さんは、地元ではシュールなCMでお馴染みの方なんですが、最初のうちは独特の張りのある発声と貫録ある表情に、このひとはもしかして凄いんじゃないの?と思い続けて今回、舞台は初めて見ました。
なんでしょう、不思議な芝居をする方ですね。
『マイバックページ』等の映画ではそう感じなかったのですが、なんか外人さんみたい。海外経験の所以でしょうか。
役柄に浸からずに、掌に乗せてるみたい。軽妙というのではなく、軽々と飄々と演じてる感じがしました。
小栗さんはうろたえ驚愕する表情なんてよかったですね。
狂言回し的な役柄に実直に取り組んだ印象でした。
意外性のある表現も見たい気がしますが。この、硬質さがいいのかな。
横田さんは天狗党から実業家に転身した「天下の糸平」田中平八役。
実業家となった後半は特に明瞭な伝達力が相変わらず素晴らしい。
大物感を強調して少々大仰な台詞回しには、どんでん返しも整理させる力がありました。
・・・ステッキがちょっと短くないですか?

回転するステージとその周囲の通路が、重層する世界に合っていました。
床が動くことで場面転換されたり。
舞台上を手持ちで移動する襖だけで、「くらやみ」を強調させたり。
横浜への移動も襖を裏返して背景画とするだけ。
風神・雷神像のように、仁王立ちした緋色装束の天狗ふたりが立つだけでも充分効果的。
長塚作品は舞台美術のセンスがいいですね。

by august22moon | 2013-07-08 23:52 | 観劇 | Comments(0)

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