2013年 07月 18日
魯迅著 『故郷』『藤野先生』 集英社刊
(ああ、私が中国文学を読む日が来るなんて・笑)
他に、『阿Q正伝』や『狂人日記』も収録されているだけでなく、老舎や巴金の長編も収録されている菊版の上製本なので、寝る前に寝床で読むにはちょっと重い。
「市民公開講座」で中国文学の講義を聴いたのが切っ掛けですが、中学の教科書に載っていた『故郷』から、懐かしく読みました。
読みながら、ともだちが主人公の印象がとてもいいと言っていたのも思い出しました。
私のほうはといえば、
「・・・まるで飛ぶように馳け出して行ったが、あの纏足の足でよくまああんなに早く歩けたものだね」
という一説が気になって、それどころではなかったのでした。
先生がこの‘纏足’という風習を説明した時のクラスの反応は、今でいうところの‘引いて’しまった状態。
おかげでそんな部分ばかりが印象に残ってしまったのでした。
いま読み返すと、20余年ぶりの帰省で変わってしまったのは故郷ではなく自分であることを痛感しながらも、その残酷な時の流れを静かに受け止めている主人公「迅ちゃん」の心境は、読む者全てに共感を与えると感じ入ったのでした。
『藤野先生』は、日本で作品集を出版するにあたり、魯迅がどの作品を収録しても構わないが『藤野先生』だけは収録を望んだという思い入れのある作品。
日本留学時代の恩師との思い出を書いた短編です。
帰国を期に交流を絶った恩師への感謝と惜別の念が込められています。
折に触れて思い出すのに手紙の一通も出さなかったことは、『故郷』で主人公が受けたような、時が失わせるものを拒んだように映ったのでした。