出会った本、映画の感想。日々のこと。

by august22

宮崎駿監督作 『風立ちぬ』

d0109373_113636.jpgたいへんな混雑になるだろうと、公開初日を避けてレイトショーで見ました。
それでも結構お客さんが入っていました。皆さん考えることは同じなんですね。

溜息の出るような素晴らしい画で、堪能しました。
きちんと体重移動する肉体、走る列車の窓から見下ろした線路脇の人々、空を切る飛行機、走り去る風景、陽炎に揺れる列車、その奥のピントが霞んだ景色、光る夏の雲、業火からもうもうと上がる黒煙、黒雲が夕陽のように光った次の瞬間雲を割って炎上しながら落下する飛行機、ばらばらに空中分解する両翼・・・
アングルも素晴らしい。
大地震の直後の静寂を引き裂く赤ちゃんの泣き声、余震前の不気味な怪音、人の声で吹き替えた飛行機のエンジン音など、音までも印象に残るものでした。
細かいことを言えば、本庄の登場場面でタバコを吸う時の顔と、二郎と過ごした最後の日の奈穂子の指が少々雑に見えました。
別格の高水準を誇るジブリ作品なのにと、気になってしまいました。

主人公二郎役を俳優でも声優でもない庵野監督にしたのは、『トトロ』で糸井重里氏を起用したような効果になっていました。
巧くはないけれど冒頓な感じが好青年役に合ってました。
ストーリー順にアテレコしていったのかな?最初のうちは一本調子だったのが、感情も巧く乗せられるようになって、違和感がなくなっていきました。
夢の中で「あれがきみのゼロかね」と問うカプローニに答えて言った「一機も帰ってきませんでした」は痛切。
最後の一言から二郎の心情全てを推察させたんですね。
美しい飛行機を創りたい一心だったのに、時代がそれを許さなかった悲哀を二郎自身に描かず、終始無垢な表情ばかり。二郎にとっての現実は奈穂子との残り少ない時間だけのよう。
矛盾だと葛藤し苦しんでいるのは同僚の本庄だけ。
「どこと戦争するのかな」なんて言いだすし。
飛行機設計に集中し、その向こうにあるものに極力視線を向けないようにしている。
道端に立つ子らに、「ひもじいかい?」と‘シベリア’パンを差し出すも受け取ってもらえなかったのを本庄に呆れられ、もはや食べることもできない。この愚直さたるや・・・。
警鐘的。

西島秀俊さんは、声だけ聞くと結構クールな印象が前面に出るんですね。
カプローニの吹き替えの萬斎氏の声質と独自のセリフ回しが老練な俳優さん並みに赴きがあって、こちらも役柄によく合っていました。
階(きざはし)の上のお人は超越的存在がお似合い。
二郎の夢の中に登場する伝説的人物を借りて宮崎監督のメッセージを伝えているわけですね。これがことごとく大らかで含蓄のある言葉ばかり。

「風は吹いているかね」
「創造的人生の持ち時間は10年だ」
「きみは生きねば」

脳裏に焼き付くような言葉でした。
名前を呼ばず「日本の少年!」と呼ぶのもいい。
またこの夢の場面が出てくるタイミングが素晴らしい。 
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予告編で『ガッチャマン』。
ケンは「悪党ども」なんて言うキャラじゃないのになぁ・・・。
言うならジョーでしょ。
あのドロンジョ様みたいなのが、まさかベルクカッツェではありますまいな。


映画
by august22moon | 2013-07-22 23:59 | 映画 | Comments(0)