吉田大八監督作 『桐島、部活やめるってよ』 wowow放映などなど

d0109373_12264565.jpg原作は(小説すばる新人賞にしては珍しく)ベストセラーで、日本アカデミー賞作品賞受賞はまあ日テレ系だからでしょうが、報知映画賞で監督賞受賞など、かなり高評価な作品です。
『櫻の園』みたいなお話ですね。
クラスメイトが突然部活を辞めるって、学校生活に於いては大事件なのだという視点は面白かったです。
しかもチームにとって重要な位置にいた選手なら尚のこと。
ストーリーは、このたったひとりが生活を変えたことで起こる波紋の行方を追っているのですが、これがどうももうひとつドラマになりきっていない気がしました。
桐島と付き合ってるカノジョは聞いてないよ~と慌てるのはともかく、その桐島が部活を終えるまでバスケしながら待ってた3人も集う意味がなくなり、そのうちの一人に片思いして見下ろせる屋上で楽器練習してた女の子はそこに居る意味がなくなり、場所を替えると映画研究部の撮影の邪魔になり・・・。
生徒たちの言動は自然に活き活きと描かれていました。
神木くんは巧いですねぇ。

『櫻の園』がなぜあんなに残ったのか思うに、主要人物がそれぞれ秘め続ける心情が描かれていたんですね。観客が介在する部分があった。
今作は片思いも嫉妬も仲間意識も、みんな上辺だけな感じ。
現代を活写しているだけというなら、今のコはこんなものかもしれないし、これで充分でしょう。
だから観客はただ傍観者になるしかない。
ひとりの人間の存在の大きさを改めて知る、そこになにかもっと重力のある事象を落としていって欲しかったです。

それにしても、あれが?カースト?ヒエラルキー?
そうなのかな?私は内周と外周に見えました。


ピート・ヒューイット監督作 『ザ・バッド』 wowow放映

d0109373_13161466.jpg09年の作品。
クリストファー・ウォーケンのコメディです。
原題は『The Maiden Heist』なんですが、M・フリーマン出演で『RED』を完全に意識した邦題とポスター。
シニア世代の冒険譚ですが、泥棒経験なんて無く、美術館警備員として真面目にコツコツ働いて来たふたりが、元海軍兵のジョージを仲間に引き入れて、デンマークの美術館に移転されてしまう其々のお気に入りの作品を強奪しちゃうというお話。
ロジャー役C・ウォーケンのボケっぷりが傑作でした。
昔取った杵柄で張り切るジョージが、「ラジャー(了解)」と言う度に名前(ロジャー)を呼ばれたと勘違いして「なに?」。
作品が無くなったと気付かせないために贋作と入れ替えようと、絵画が趣味のチャーリー(M・フリーマン)は見事に複製を描き上げるのに、絵が描けないロジャーは酷い出来だったり。
ハラハラの連続の中に結構穴はあるんですが、名優のボケっぷりを楽しめる作品でした。
最後にマイアミの海岸に立つ奥さんの姿が偶然、お気に入りの絵の女性と同じポーズだったというのは、ちょっと素敵。

マーシャ・ゲイ・ハーデンが声質まで変えてヒステリックな奥さんを好演。
旦那さんは急いで出かけたいのに、しっかり香水付けてる(空間に噴いて身体をそこに近づける)とこなんて傑作。胸じゃなくってお腹から前へ進んでくんですもの。



テイト・テイラー監督作 『ヘルプ 心がつなぐストーリー』 wowow放映

d0109373_14123189.jpgジェシカ・チャステインじゃないみたい(笑)
ちょっとオツム弱いけど可愛くて、差別も偏見も皆無。人種差別が当然の時代と地域にあって唯一南部にも存在したアメリカの良心を演じています。
モンローみたいに。
呆れたり警戒しながらもご自慢のフライドチキンのレシピを教える時のミニーの嬉しそうな表情。
同じテーブルで美味しさに感心しながら食べる奥さま。
そのチキンの美味しさでメイドさんを雇ったと気付いていたのに黙っていた優しいご主人。
必要悪と見下した意味を込めて言われていた「ヘルプ」の、本当の意味を噛みしめる美しい場面でした。
ミニー役でアカデミー助演女優賞を獲得したオクタビア・スペンサーは、『風と共に去りぬ』のマミーを思い出させました。

トイレのエピソードが辛辣な差別の象徴的に出てきますが、誤解を恐れず言ってしまうと、他人に使用されるのに抵抗があるのはちょっと理解できるかも。それでクビにするのは論外ですが。
あと、復讐パイのエピソードで引っ張り過ぎ。

シシー・スペイセクが出るたびに、映画評論家の荻昌弘氏が高校生を違和感なく演じきったS・スペイセクが撮影当時既に26歳だったということが「それこそ恐怖。」とちょっと笑ったのが思い出されます。

映画
by august22moon | 2013-08-25 23:10 | 映画 | Comments(0)