桜色の雑記帳

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是枝裕和監督作 『そして父になる』

d0109373_1461617.jpg (勘違い部分がありましたので改正削除しちゃいました)

福山人気かかなりの入りでした。

是枝作品を映画館で見るのは初めて。
一躍有名になった『誰も知らない』で、子供に台本を渡さず口伝で台詞や動きを教えた演出方法が注目されましたが、この作品でもそれは実践されていることが話題になっていました。
訓練され大人顔負けの演技をする子役がいかに観客を冷めさせるかを熟知しているんですね。
気付いているのかいないのか判然とさせない子供たちの表情は、答えのない問題である今作のテーマには相応しい演出方法でした。

無駄な説明場面を持たないことで、見る側がより作品内に入っていけました。
転校問題とか、斎木夫婦は慶多くんや琉晴くんにどう説明したのかとか、出てこないんです。
ただひたすら、良多の葛藤を追っている。
山積する問題をどうしていくのか、見る側に想像させるのもまた巧い創りになっているなと思いました。

二組の夫婦それぞれの、この問題に対する考え方の相違は、どれも頷けるものでした。
第一声「やっぱり。そうゆうことか」と苛立ち、家に帰って「あんな病院で産むからだ」と妻を責める。
血の繋がっていない子と知ってからの、ふと子供を見る冷淡な目つき。
上司に提案された「ふたりとも育てる」という案を持ち出すんですが、いっそそのほうが楽になると考えるもの仕方のないこと。
良多の父親の「これから年を重ねて益々おまえに似なくなってくるんだぞ」も、
妻・みどりの母親の「産みの親より育ての親」もどちらも尤だと響いてしまうのも当然。
犯人の看護師から送られた慰謝料を返しに行くと、嘗て悩みの種で事件の原因となった再婚相手の息子が母親を守ろうと割って出てくるのも、過ごした時間の大切さを目の当たりにさせ、そうゆう家庭もあるのだろうという表情で立ち去らせるのも巧い演出と思いました。
仕事も順調なエリートである良多の揺れ動くさまは呆れながらも納得がいくものでした。
ただ、途中で兄と父親のお見舞いに行くんですが、母親が寿司なんてとってもてなす気遣いぶりや兄が敬語を崩さないことで、どうも実の母ではないようだと気付かせます。
後に琉晴くんが黙って斎木家に戻ってしまった時に、自分も実の母に会いたくて家出したことがあると打ち明けています。
解決したわけではなく、受け入れるしかなかった歳月を過ごして来ていたんですね。


相手の斎木家は、決して裕福ではないけれど愛情たっぷりに大らかに子供を育てているし、自営業なので父親の雄大は子供と過ごす時間も良多に比べたら圧倒的に多い。
しかし良多ならずとも呆れるのが、二言目には慰謝料だ経費だとお金のことを持ち出す卑しさと無神経さ。
こうゆうひとも居るのかもしれないですけどね。
それでも、子供が野々宮家に泊まりに行く車を見送る寂しそうな表情や、二家族で記念写真を撮るのに「笑おうね」と言い添えるところにこの男なりの悲しさと惑いが表れて、胸を突かれました。
リリーさん巧すぎ。

6歳の子に真相も言えないまま子供を交換するんですが、
やんちゃで明るい琉晴くんが、なんとか馴染んだと思った矢先に、流れ星に「パパとママに会えますように」と祈ったと言い、すぐ「ごめんなさい」と顔を覆ったところで、ああこの子はやっぱり気付いているんだと感じさせる展開は見事に涙を誘います。

特別出演で井浦新さんが、良多の転勤先に勤務する昆虫学者として登場。
(窓の外の景色ががらっと変ったことで転勤を受け入れたのを表すのも巧い)
人口の森に自然と同様に昆虫が生息する期間が15年と教え、その長さに驚く良多に、「長いですか?」とそっと微笑むのが印象的。
6年という歳月を背負った良多に、それぞれの時間の在り方を考えさせます。
木立の中をふんわり漂うように一歩一歩優しく歩く井浦さんが流石の印象を残します。

簡単にはわり切れない複雑な心の問題を、決して安直な結末に仕上げていませんでした。
理不尽な事件によって運命を狂わされた二家族。
この問題は一生彼らに付きまとうのだと、悲劇の余韻を残されてしまいました。

映画
by august22moon | 2013-10-07 21:48 | 映画 | Comments(0)

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