2014年 02月 05日
アン・リー監督作 『ライフ・オブ・パイ』 wowow放映
動物モノが苦手なうえに、海上遭難についてはヨットレース中の事故で漂流され多くの仲間を失って生還された方の記録を読んだ衝撃が蘇りそうで、公開当時も結局見ませんでした。
さまざまな祈りに関心を持ち、神の存在を追い求めた青年が、極限状態の中で神に語りかけ神を見つめた物語ですね。
極限状態を克明に描いて過酷さを突き付けるのではなく、幻想的な場面が多く描かれていたんですね。
荒々しく命を弄ぶだけではなく穏やかに包み込むような優しい海。
幻想的ないきものたちの生態。
宝石のように煌めく星空と鏡のようにそれを映す海面。
不思議な島との遭遇というファンタジーも盛り込まれます。
これは当然、船会社の事故調査員には信じて貰えないんですが、ここまで見る側を魅了しておいて、これが全て青年の幻覚だったのか事実なのかという疑問を残すのが、特異なところ。
インタビュアーにも、どちらを信じる?と問いかけています。
長い漂流の中では過労による幻聴や幻覚があるもの。
先に挙げた遭難記録で、多人数の声が聴こえる幻聴があったという経験談もありました。
その漂流は20数日間。これは227日という信じられないほど長期間。
生存すら奇跡なのに、バナナが詰められた袋に乗ってオランウータンが浮かんでいた等、調査員には経験上も事実としてありえない場面もあるので、幻覚の類だろうと言われてしまうんですね。
仕方なく全て人間に置き換えて話すのですが、あまりにスラスラ話すので、ようやく、それが事実だったのかと気付くわけです。
青年がこの体験で得たものと失ったものがなんであるかが重要で、事実映像を出さないのが反ってこの体験の過酷さを表します。
遂に辿り着いた陸に上がるのに、「水深60センチになっても船から手が離せなかった」という言葉は、なによりもこの体験の過酷さを表していました。
トラを手懐けることはできてもペットのように慣れ合うまでにはさせなかったところは、メルヘンにならず良かったと思いました。
遠くをゆく貨物船にはやっぱり見えないんですねぇ
信号弾って。