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by august22

B・クラグマン L・スターンサール監督作 『ザ・ワーズ 盗まれた人生』wowow放映

d0109373_09050.jpg12年公開作。
ブラッドリー・クーパーとしては『ハングオーバーⅡ』の後。
監督の2人が脚本も書いていて、B・クーパーは制作総指揮も勤めた作品。

3つの物語が語られる構成がたいへん面白かったです。
人気作家ハモンド(デニス・クエイド)が新作朗読会(こうゆうの海外ではポピュラーなんですね)で朗読する。
その物語の主人公ローリー(B・クーパー)は作家志望の男で夢と現実の狭間で苦しんでいる。
そんな男が偶然手にした原稿が素晴らしい作品。
生活のため、夢の実現のため、自作として発表してしまう。
そこへこの作品の真の作者である老人(ジェレミー・アイアンズ)が現れて絶体絶命・・・になるわけです。
この老人が語る小説のモデルとなる若き日の男(ベン・バーンズ)の物語、と三層構造。

老人役ジェレミー・アイアンズがやっぱり巧いんですよね。
(私、『戦慄の絆』あたりまで苦手だったんですが)
ホテルの入り口で待ち伏せていたり、後を付けて行ったりの姿に、脅すつもりも告発するつもりもないこの老人の姿勢が読み取れる佇まいです。
そこが他の盗作をテーマとした作品とは異なるところです。
口封じしちゃうか!?と過りましたが、ローリーそんな悪辣な男でもなくて。
妻にもすぐ打ち明けるんですが、この時のB・クーパーの泣き顔がよかったです。
情けなさと後悔が入り混じって。追い詰められた挙句の過ちだから。
ローリーとしては謝罪して和解金を提案するしかない。
でもその老人は拒否するんですね。
ひとの人生を盗んだのだから、その痛みも背負え
これは重い言葉です。
もう覚悟しろってことですね。

老人の過去がまた切なくて、幼子を亡くしたことが切っ掛けで妻ともうまく行かなくなる。
というより、妻が一方的にショックから立ち直れなくて実家帰っちゃうんですよね。
夫だって辛いのに。
その絶望を言葉にして書き上げた作品なのに、妻に真っ先に読んでもらおうと持って行ったのに。
そんな大事なもの電車に置き忘れるかな、ふつー
で、再会した時には幸せそうに新しい家庭持っていて・・・
温室で植物の手入れしてる背中にも、そんな物悲しさが滲んでみえました。

老人に初めて出会う公園のベンチでも、訪ねて行った温室の場面でも、ローリーは老人を前に立ち竦むのではなく、向かい合って逃げていないんですね。
それは老人の作品に心から心酔し、この苦悩する若者が自分の分身のように見えたからではないのかと。
老人はいろんなものを失ってきた。
今となって、失ったもののひとつが戻ってきたとしても、なにもかも、もう遅かったのかもしれない。

B・クーパーの苦悩するようすは惹きつけられました。描写も丁寧だったし。
過ちなのは充分承知で、現状を打破するのにこれは仕方ないなぁと同情してしまう男、でした。
ベンチでひとり愕然とする姿にも伝わるものがありました。
やり過ぎ感がないところがいいですね。隙間があって。

で、実はこの物語を書きあげた作家ハモンドに、ファンだとゆう女が近づいてくるのですが。
その彼女が真実の匂いを嗅ぎ取ってる風なので、もしかして老人の孫?とかね。
この作品は過去の贖罪なのではないかと。
またまた、おともだちのfgさんが仰っていた「神の視点論」なのではないかと。

惜しむらくは肝心のデニス・クエイドに奥深さも背負っているものも感じられず、
ラストにローリーが妻ドラに謝罪する場面で終わる、せっかくの余韻が活かし切れず残念でした。


映画
by august22moon | 2014-04-08 00:04 | 映画 | Comments(0)