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by august22

フランソワ・オゾン監督作 『危険なプロット』 wowow放映

d0109373_16591739.jpg12年公開作品。原題は『Dans la maison(英語版はIn the house)』
脚本もオゾン監督。
オゾン作品は『スイミングプール』も半分くらししか見てなくて、監督作ほぼ初めて。
何気なく見初めて惹き込まれました。ストーリーを書くと平凡な印象になってしまいますが、俳優さんの魅力と監督のメッセージ性高いセリフと展開でたいへん面白かったです。

様々な背景を持つ生徒たちの平等化を目的として、フランスでは珍しく制服を導入した高校。
この制服は貧困も人種も隠すようでいて、「まるで羊の群れだ」と主人公の教師ジェルマンが言うように、個人を消してしまう。
クロードも一見すると普通の男の子に見えるけれど、終盤にようやく出てくる父親は足が悪く車椅子生活。母も出て行き、ひとりで介護しながら通学している苦学生。
クラスメートのラファの家庭に近づいて、母親に魅了されるのですが、この家庭がなんとも穏やか。
父親も明るく大らか。父子ともバスケ好きでNBAの中継見て盛り上がって、相手チームに退場者が出ると立ちあがって審判にお辞儀したりと楽しい。

作文の課題にも数行しか書けない生徒たちの中で、ジェルマンはようやく手ごたえのある生徒に出会う。
友人ラファの普通のサラリーマン家庭を「中産階級」その妻に「中産階級の女の香りがする」と表現する洞察力と描写力に、その文才を伸ばそうと書き方を個人的に教え始めたのに、いつしかお話しの展開自体にのめり込んでしまう。
「à suivre(つづく)」なんて書くのも巧妙だけど、そう読み手を意識されると続きが気になる。
様々な映画や小説の手法を例に挙げての添削指導は教師として的確で、自己形成小説(ビルドゥングスロマン)まで教える。
生活苦で学校を辞めようかとまで考えている生徒を、救おうとしているかのよう。
父親のように。
テキストとなる小説も薦めるんですが、先生「ボヴァリー夫人」はどうなんでしょ(笑)
学校名ギュスターヴ・フローベール・リセのシャレなのでしょうけど。
ついには続けさせるために教師として不正も冒してしまう。
彼もまた、平凡だけれど幸福の縮図のような家庭に憧憬があったかのよう。
その様子が、ジェルマンを演じるファブリス・ルキーニの惚けた味のあるでも抑制の効いた演技で救われています。
物語に入り込み過ぎた表現として、ラファの家の中にジェルマンも登場しちゃう。
ウッディ・アレンのように。
出て行こうとする妻を止めようと掴みかかって、妻が反撃に叩いた分厚い本がセリーヌの「夜の果てへの旅」とは、なんとまあ・・・。

なんといっても、クロードを演じるエルンスト・ウンハウアーくんが美しい危険な雰囲気を持っていて、そのシニックな含み笑いがまさに危険な展開を予想させるのです。
彼は撮影当時既に20代だったそうで、実年齢では表現できない大人びた危うさが巧く表されました。
先生の指導は真面目に聞くんだけど、あまりに危険な展開になり始めて注意すると「先生がそう書けって」と返す。
そこに従順さと読み手が夢中になっていること逆手にとっての強かさが混在していて惑わせる。
悪魔的魅力で平和な家庭を壊し続けるのかと思いきや、そこまで歪んでいるわけでなく。
平凡だけど和やかな家庭への憧憬があったのだと。
どうも指導に沿ったドラマを創作した部分もあるようで、虚実が曖昧になってくるところが絶妙でした。

ラスト、職も妻も失って失意のどん底のジェルマンと、以前の孤独な16歳に戻ったクロードが、公園のベンチで向いのアパルトマンの窓から見える、それぞれ悲喜交々な生活を眺めています。
父と息子のように。
このマルチディスプレイのように並んだアパルトマンの窓の景色は、なにかの映画でも見たような・・・・。
ヒッチコックかしらん(裏窓ではなく)

そして、「先生と僕の新しいページが始まる。・・・à suivre」で、fin。
続きが読みたい(笑)


映画
by august22moon | 2015-02-10 00:39 | 映画 | Comments(0)