出会った本、映画の感想。日々のこと。

by august22

ウェス・アンダーソン監督作 『グランド・ブダペスト・ホテル』wowow放映

d0109373_23423697.jpg昨年6月公開作がもう放映、すでにDVDブルーレイ発売中とは。
『ムーンライズ・キングダム』で初めて知ったアンダーソンワールド。
ドールハウスみたいな砂糖菓子みたいな映像にばかり夢中になって、見終わった後になってはてストーリーに込められたものとは?シュテファン・ツヴァイクとは?となって、時代ごとにフォーマットが違うのも確認を忘れるほどです。
ホテル名にだけ残した東欧が舞台と思わせる設定。
優雅な時が流れる名門のホテルの外では、戦争によって時局が揺らいだ時代。
ウェス・アンダーソンは、ツヴァイクの作品と生涯にインスパイアされたとラストに記して、民族や反戦といった世界観を反映させたようです。

回想場面だけでなく、作家の墓に少女が訪れて、その著作がホテルのオーナーから聞いた思い出話という三重構造。
投獄、脱獄、逃走とテンポよいドタバタ喜劇になって、しかもそれを合成丸出しの映像で見せるので可笑しさ満点です。

グスタフが遺産相続の揉め事に巻き込まれるかと思いきや、しっかり自分から飛び込んでいて。しかもその絵画を売ってしまう気でいるし。
1.5%は謝礼としてあげると言われたゼロくんも、従順なだけじゃなく「1.5?せめて10%」としっかり者。
元々、マダムDからお供えのキャンドル代として預かったお金で、キャンドルで余ったお金で私へパンを買ってお釣りは返せなんていうひとでしたものね。
上客へのおもてなしと称していても好色なだけだし、だからゼロくんも警戒してアガサを「口説かないで」といちいち釘をさしてる。抜け目ない男なんですねグスタフ。




d0109373_2385351.jpgこの色調が圧巻。
ぴかぴか真っ赤なエレベーター内の壁に紫の制服。
そして4人の表情がそれぞれまったく違うのも面白い。
左右対称、額縁の中のような固定カメラの映像、カラフルな色合い。
表情も、微妙な機微など表現させず単純明快でサイレント映画のよう。














d0109373_215587.jpg物で溢れていてもひとつひとつ緻密に計算されて置かれているんでしょうね。
(エドワート・ノートンも楽しそうなのがいいです。繊細そうなんですもの)

















d0109373_1841731.jpg逃げ込んだ美術館の壁を埋め尽くした絵画の配置とか、後ろの本棚や机の上に隙間なく広げられた書類とか、計算づくなんでしょうね。
(ジェフ・ゴールドブラム、相変わらずいいお声)
















d0109373_2503550.jpgこの箱の崩れ方もそれぞれ全部計算されているんじゃないかと。

















d0109373_2114281.jpgシアーシャ・ローナンが可愛くて、『ラブリーボーン』の頃の透明感が失われてないんです。
看守も中身チェックを怠るほど可愛いデコレーションのお菓子が入った箱をいっぱい天秤棒に提げて横に担いで自転車でデコボコの石畳を配達っていう画を思いつくのも凄い。
アガサちゃん黙々とお仕事がんばってる感じがよく出てます。
でその場面では晩年のゼロが彼女を回想してるんですが、ちょうど右頬の痣が映ると、それについてはどうでもいいみたいなセリフが入るのが愛情を感じさせて微笑ましい。












小花柄のカーテンで仕切ったお部屋が可愛い。決して豊かではないけれど女の子らしさを忘れてないお部屋。
天井裏の部屋で、逢瀬を楽しんだ後は天窓から帰るゼロが屋根の上を左に消え、背景奥の遠くの屋根の上を左から右へ走って、お隣りの家の屋根から突き出た板に飛び乗って右へ消える画も楽しい。
ディズニーですわまるで。
d0109373_3148100.jpg





d0109373_2343057.jpgどこで結婚式を!?って一瞬笑えるのですが、絶景です。
展望テラスもチョコレート台からクリームがはみ出たウェディングケーキみたい。
アガサのウェディングドレスは質素ですが、実はベールはすごく長くて手前の通路にまで届いているんですね。
グスタフから贈られた陶器のペンダントのリボンもサムシングブルーになって。

立会人も身長順に立たせて構図もきっちり。












d0109373_14353815.jpg脱獄後、仲間の乗る車に便乗すればいいのに準備が悪いといつまでも文句いってるんですが、ようやく雪原の中の公衆電話から仲間のコンシェルジュに助けを頼む。
これが、レ・クレドール・インターナショナルのネットワークを利用しているよう。
其々のホテルを表すのに部屋のキーを映す。電話を告げられるコンシェルジュは、テニス中に心臓発作起こしたお客さんに人工呼吸と心マしてるとこだったり、お誕生会(テーブルセッテイングも細かい!パステル調がきれい!)で歌の指揮してたり、厨房でスープの味見してたり。で、電話を受けるために「代われ」。ロビーボーイは続きを引き受ける・・・という同じ展開を繰り返すのも面白い。
このネットワークの先に修道士が含まれているのが意味深です。

『ムーンライズ~』でも愛犬が殺され、今作も愛猫を殺す場面と、昨今は動物虐待に当たらぬよう神経質なほど気を配る作品が多い中、特に必然とも思われぬ殺戮を挿入するのは珍しいですね。
甘い背景とは裏腹に残虐な殺人も描写されてビターではありますが。

廃れゆく名門ホテル、時代とともに消えゆく人々・・・結末のほろ苦さを打ち消すように、エンドクレジットのバックには軽快なロシア民族音楽が流れるんですが、バラライカのイラストが描かれて、最後のほうになるとコサックダンスするアニメが出て来て一旦引っ込んでまた出てきたりとその踊りが可愛いすぎて、結局は楽し可笑しで終わるという・・・。
人は強いのね。


映画
by august22moon | 2015-03-21 22:38 | 映画 | Comments(0)