リチャード・リンクレイター監督作『6才のボクが、大人になるまで』

d0109373_11215130.jpgようやく地元で公開されたのですが2週間もしないうちに上映終了。
『デビルズ・ノット』『三ツ星フードトラック~』のように見逃したらたいへんと慌てて見て来ました。

12年間、少年の夏休みを利用して断続的に撮影されたそうですが、よくぞ完成させたと感心はするのですが。できなくはないよねと冷静に見ちゃうのは、日本には『北の国から』という81年から02年まで制作されたドラマがあって、小学生から大人になるまでの純くんや蛍ちゃんの成長を見守って来た経験があるからかしら。
あれは数年のインターバルがあっての撮影でしたけれど。
途中で出演者が出演不可能になることもなく、無事に撮り終えるのはハリウッドではかなり大変なことでしょうね。
様々な(7年契約など)困難を乗り越えて出演し続けたであろう、イーサン・ホークとパトリシア・アークエットはとにかく拍手ものです。
ひととして、イーサン・ホーク見直しましたわ。
最後に18歳になったメイソン君を演じたエラー君がイーサンそっくりに見えたのは(髪型や鬚の具合もあるかもしれませんが)ちょっとびっくり。
イーサンはいい感じに年相応の皺も出てきてますが、P・アークエットが老けて中年太りになっていくのがこのための役作りみたいに言った評論家がいたけど、そうかしら。自然なのじゃないかなぁ

いつのことなのかキャプションも入れないので、あらメイソン君大きくなってる!声変りしてる!と驚きながら見させて、メイソン君の「少年時代」を振り返っているようです。
その時代が分かるように、ゲーム機やPCの発達、流行りの映画、SNSなどが話題に挙げられて辛うじて、これ何年頃のことだなと分かるようにしてあるのが面白かったです。
ハリー・ポッターの新作買いに扮装して書店に並んだり、『スターウォーズ』シリーズのこと、オバマ氏の大統領選のこと、Facebookのこと、レディーガガのこと・・・。
クリスマスの場面はなぜ作らなかったのでしょう。
外国人にとっては一大イベントであるから、その時々の思い出のクリスマスがあったというのも映画に起伏を生むと思うのですが。

最初の離婚はまあよくあることと納得しても、大学教授ともあろう男がアル中だわ暴力振るうわ、三度目の相手も屈折し過ぎている。勉強して大学講師になるほど努力はしているものの、ずいぶんと男運のない母親ですこと。
そんな環境でもメイソン君、友達やガールフレンドには恵まれていて、最初の引っ越しでは自転車で追いかけて別れを惜しんでくれる友達がいて。
植え込み越しにちょこっと手を振っているのがすぐ見えなくなる場面はよかったです。
理由もなく絡んでくるイヤなヤツもいるけど、そんなこと気にならなくなるほどに必ずいい友達が近づいてくる。
再婚相手の子供たちともすぐ仲良くなれる。
祖母や伯父や先生など、周囲の大人たちも子供たちをちゃんと見つめている。
母親は身勝手だけど、それだけでも充分いい少年時代が過ごせたといえるんじゃないでしょうか。

2週間に1度しか会えない父親も、キャンプや野球観戦など男の子が必要とすることは精一杯やってくれる。
毎日会えないからこそ父親として努力していたんでしょうけど。
いいひとじゃないの、なんで離婚しちゃったかなぁと思えるほど。

暴力振るう義父なんて子供には充分すぎるドラマですが(子供にグラス投げつけるなんてサイテーだわ、あんにゃろめー)、映画としてはたいしたドラマ部分もなく進んでいきまして。
12年なんて瞬く間に過ぎて行く。
「電気がないと暮らせませんよー」と田舎暮らしを嫌ってた小学生が、気が付いたら離島でお医者さんになったり上司の奥さんとの恋に悩むオトナになっているんですから。
「人生はもっと長いと思っていた。あと私に残っているのはお葬式だけだわ」なんて母親は言うけれど。
子供が巣立つまでなんてきっとどの母親も必死に生活していくら時間があっても足りなくてあっという間なんでしょうね。

イーサン演じる父親がダラダラと恋愛論を述べるのをもう聞いてるだけではなくなって成長した息子が「で?要点は?」と尋ねると「要点なんてないよ。勢い(winging it)で喋ってるだけ」と返す会話と、大学で知り合った女の子が最後に言った「瞬間はいつもそばに」あって積み重なって消え去ることはないというのが、監督の届けたかったものの全てということでしょう。

メイソン少年の人生は始まったばかり。ほんとうの波風に揉まれるのはこれから。
主婦から教師になったり配管工からレストランの店長になったりした人たちを見て来た。
人生の岐路がまだ見えぬ遥か先にあることはきっと気付いてるんでしょうね。


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by august22moon | 2015-04-10 00:35 | 映画 | Comments(0)

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