桜色の雑記帳

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平山秀幸監督作『信さん 炭鉱町のセレナーデ』日本映画ch.放映

d0109373_176012.jpg'10年公開作品。
池松くんの貴重な18-19歳頃の作品なので見ました。先週だったかしら?
15歳くらいからを演じているのですが、今より少し声が高くて可愛いですこと。

作品は九州オールロケで昭和30年後半の時代が見事に活写されていました。
巧い役者さんも揃って、子供時代の「信さん(信一)」を演じた小林廉くんも少しおとなになりかけた表情があってとてもよかったし、大人になっての石田卓也さんもとてもよかった。
ボタ山から石炭クズを拾ってきておこづかい作って妹や子分に買い物させたりしてるのに、お金の出どころ疑われて親に殴られたり、教師からも無用な疑いを掛けられたりする。(ちょっとここ、何を盗んだと言い合ってるのか聞こえなかった)
それでまた父親に殴られたり母親にも棒で叩かれて、それでも涙を隠してる子なんですね。
ガキ大将だけど、悪い子ではない。
その子の炭鉱町での苦労が描かれ、東京から引っ越して来た少年がその子を慕うようになり・・・というお話し。
残念なことに、全てが既視感のある設定なんです。
既に大作で描かれている設定と重なる点では残念。

で、信一が子供心に慕う、転校生・守の母親・美智代役の女優さんが、相変わらず何役演じても同じ表情なので作品の魅力が半減なのです。
確かに炭鉱町で育った子が衝撃を受ける都会の女性という絵には相応しいのでしょうが。
生活に追われる信一が長じても妹の学費捻出の為に恋愛どころではないし、20歳も年上の女性で、ふたりの関係が慕い合うだけで終わるというのは、いい設定。
しかし、初めて出会ってこの少年の傷をいち早く察知してそっと後ろから抱き締めて、初めての優しさに信一が号泣するまでが、早い。
もう少し交流があってからじゃないのかしら。ってかここもこの女優さんの表情と動作の硬さで、唐突感があるのですよ。
信一が黙って店先に置いていった干し柿を「信さんがくれたんだから大事に食べなきゃ」なんて悠長に喜んでるけど、それ駄菓子屋のおばちゃんちから盗ってきちゃったのだかんね!

おとなになった信一を、男性として意識しているのか息子のように見ているのかも判然としない。
信一から告げられて初めて知った、みたいなふたりの温度差が分からない。読み取れない。
事故で信一はあっけなく亡くなってしまうんですが、「信さん」みたいに苦労ばかりで散っていった若者が多かったのでしょうね。
遺体に縋って泣く妹が美智代に、触らないでと拒絶する場面と、葬儀で母親が黙って隣りに座るよう席を空ける、あたりは高いドラマ性を感じました。
こうゆうところ大竹しのぶさんは絶品なので、椅子の座面をぽんと叩く仕草が素晴らしい。

朝鮮人ということで度々いじめられている、李英男(イ・ヨンナム)君のエピソードが印象的でした。
守がなぜ殴り返さないんだと怒るんですが、黙ってる。
ヨンナムくんの家は鉱員住宅地の外れにあって、ついて行くとちょうど父親が鶏小屋から鶏持って出て来たところ。
その鶏をさばいて(サムゲタンみたいなタッコムタンみたいな)料理を振舞ってくれる。
外では他の鶏の声も聞こえる。守はヨンナムに「あれが、これ?これが、あれ?」とたじろいでいるんですが、ヨンナム君「いいから食え」。この一言に異国で生きるこの子の隠された強さが垣間見えました。

父親(岸部一徳)は、日本人に手を出したらここに住めなくなるからと言い聞かせているのだと教えます。
この父親はストの最中も仕事を続けるんですが、守の父親には一礼して通過したりするんですね。
闘争の混乱を、まずヤクザにかき分けさせてから警官が通路をつくり、そこをストに参加しない鉱員たちが駆け抜けて行くなど、当時の炭鉱の描き方は秀逸だったんではないでしょうか。

ヨンナム役の肥田大輝くんがまた寂しげな顔立ちの子で、いい味だしてます。
守がひとくち食べて「美味い!」と驚いたのに、思わずくっと笑うとこなんて巧かった。
成長してからは柄本時生さんが演じていて、これがまた巧い。
相変わらず虐められるままでいるのを守は怒るんですが、「おやじとの約束だから」。4月には東京に引っ越すから「それまでの我慢や。」と。
じゃあ最後にやりかえしてやれと言っても暖簾に腕押しで、守としてはふがいないまま。
ところが、別れの日に駅に来ないので守が探しに行って駆けつけると果たしてヨンナム君、なんと4人のイジメっこをボコボコにのしちゃった後。
唖然とする守に、颯爽と「よお」なんて笑ってる。実は強かったんだー
平然と電車に乗り込んで、守に送った最後の笑顔がまたよかった。
計りしれない苦労と涙を奥底にしまって、すでに年齢以上におとなであったのが感じられました。

肝心の「信さん」の話に物足りなさが残りましたが、wikiによると「厚生労働省社会保障審議会が推薦する児童福祉文化財の1つに選ばれている」となっています。
それを目指したわけではないでしょうが、こうゆう仕上がりでよい作品もあるのかな。


映画
by august22moon | 2015-11-03 23:03 | 映画 | Comments(0)

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