出会った本、映画の感想。日々のこと。

by august22

スコット・クーパー監督作 『ブラック・スキャンダル』

d0109373_20391356.jpgジョニー・デップ主演作をスクリーンで見るのは久し振り。
『チャーリー・モルデカイ』はTV放映で見始めましたが、どうにも品の無い表現がイヤんなっちゃって、途中で脱落。ポール・ベタニーのコメディ演技は傑作だったんですけどね。














ストーリーとは関係ないんですが、コノリーの最初の家のキッチンが黄色だらけ!
壁はマスタードイエローとベージュのチェック。ボウル、ケトル、お鍋などのキッチン用品がみんな黄色!
バルジャーの実家も映画を見ている時は、壁はベージュに見えたのですが、スチールで見ると黄色っぽい。ボウルはオレンジだけど。テーブルクロスは黄色い花柄。なんでかなー

朝帰りの兄が眠いのにママにカードゲームの続き迫られて付き合ってる背後で弟ビリー、朝食のスクランブルエッグ作るの図。カタカタとフライパンの音が聞こえるのがとてもいい。
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ただただ冷徹で残酷無比な、FBIによる10大最重要指名手配犯の男。時代は違うけれど、若き日のヴィトー・コルレオーネほどに美学もない。
風貌を似せてあるようですが、FBI捜査官コノリー宅のディナーの席で見せる、冷たい瞳がゾッとさせます。
常に忠誠を疑い、裏切り者は片っ端から粛清する。
いつどこが彼の逆鱗に触れるか判らない緊張感で、周囲は腫れ物に触るような状況になっちゃうわけじゃないですか。どんどん孤独になってゆく男がなにを支えに生きがいにしていたんだろう。
あなたのおかげでイタリアンマフィアが一掃され街が平穏になりましたありがとうとハグする地元のおばあちゃんか?
大豪邸で富と権力を誇示するという場面もない。常に緊張と怒りの中にいる。
彼にはイタリアンマフィアのように、ファミリーという意識がなかったのかとも思いましたが、マイケル・コルレオーネの時代ともなると兄も殺し、長年の盟友ヘイゲンすら疑い始めましたから、同じなんですかね。

冷血ギャングを演じたJ・デップの演技が称賛されているようですが、報道で本人を知っているアメリカ人だからこそ、いかに名演であるか判るのかもしれません。
でもこれくらいはお手の物じゃないですかね。
母親を亡くして茫然と母のベッドに座っている表情、こんなにも家の中が静かになると母の存在感を新たにするところ、息子を突然奪われた怒りなどは突きささるものはありました。
抑えた悲哀の表現が、別格に巧い。

ジェームズ・バルジャーの弟、ウィリアム(ビリー)・バルジャーをB・カンバーバッチが演じているんですが、直前に『ホームズ』の予告が流れたせいで、議員らしい姿勢と地元市民への作り笑顔、大家族と過ごす和やかなクリスマスも、いかにもという巧さが際立って見えちゃいました。お見事でした。
思えばこの弟のほうが、ドラマチックな半生。詳しくは描かれていませんが、兄が闇社会の支配者であるのを、どう対処して来たのか。関係ないと一蹴はしていたけれど、当選だって兄の影響力皆無と言いきれないだろうし。
このあたりの複雑さは、寂しげな横顔に巧く現れていました。
なんか、演技が誰かに似ている気がしたんですけど、思い出せない。

ジョエル・エドガートンが、嵌り役。
不安に苛まれながらも闊歩してゆく、その表裏が見えて、こうゆう役お似合い。
バルジャーがモリスにレシピの件で忠誠心を試すディナーの場面では、同席を拒んだ妻のことをいつ突っ込まれるか落ち着かない様子から始まる。この仕草が巧い。
切れ者らしい検事を丸めこもうとご機嫌取りする時や、情報屋に過ぎない幼い頃からの絆があると上司に抵抗する時の、必死に隠す不安の表情が巧いったら。

ラストには、実際のニュース映像や本人たちの写真が流されます。
それぞれの刑期も出てくるんですが、バルジャー終身刑2回プラス5年っていうのが、いかにもアメリカ。
最後、バルジャーが長い逃亡の果てに逮捕される場面が出ますが、エレベーターの扉が開いてフロアを警戒しているのであろう、あの立ち位置。
その緊張感が凄い。


映画
by august22moon | 2016-02-19 23:00 | 映画 | Comments(0)