桜色の雑記帳

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アントン・コービン監督作 『ディーン、君がいた瞬間(とき)』

d0109373_1933152.jpgジェームス・ディーンを演じるってモンローと同じように難しいでしょうね。
目元はジェームス・フランコのほうが似ていますが、髪型、姿勢、多分独特の口調も、観客がジミーを思い出し易いように緻密に創り上げていたんじゃないでしょうか。
『デビルズ・ノット』のクリス役だったと知って、ビックリ。10代後半くらいに見えました。
今作の為に体重を11キロ増やしたとかで(どんだけスリムだったのかと)、ちょっとディカプリオに似て見えました。
プールサイドのバーに座る、引きの画から見せたのが功を奏しているのでは。遠目にはまったく違和感なくて、すんなり入っていけました。

かの時代らしく喫煙シーンが多いんですが、タバコ吸ったのに主流煙を吹かさないことが多かったような。
ま、そのほうが直ぐセリフ言えてスマートではありますね。







d0109373_19332346.pngあまりにも有名なこのショットを撮ったカメラマン・デニス・ストックとの交流を描くというだけで、興味をそそられました。
昔、小森和子氏が連載を持つなど常連批評家だったこともありディーン特集が多かった雑誌「ロードショー」で知った写真。
どうして雨の日のこの場所を選んだのだろうかと。

撮影に待ち合わせたタイムズスクエアで、生憎の雨の中をとりあえず撮ろうと歩き出した一枚。
道路を小走りに渡る後ろ姿が完全にディーンでした。先だって歩くストックが邪魔に見えて、早く見せてと思ってしまいました。
それまではディーンが気乗りしないせいで、マグナム・フォトの編集主幹ジョン・モリス(ジョエル・エドガートン)から被写体の魂が写っていないとボツにされている。
この時のディーンの雰囲気に、ストックが『エデンの東』で受けた以上の、ただならぬものを感じ取るんですね。
タバコを取り出すところなどはジミーには若干のポーズがあったのかもしれませんが。
何気ないしぐさにも、スターの素養が備わっていたのでしょう。
淀川長治氏言うところの「詩情」でしょうか。

いつも目元にくまができていて、いつも疲弊していて愛想もない。名声を求めているようで、警戒心が強い。
期待したような被写体であったかストックが迷い始めると、ディーンのほうから誘ってくる。
それは彼らそれぞれのタイミングの問題もあったんですけど。なんだかストックを試しているように見えてしまう。

役柄のイメージで、苦悩する若者の象徴のように見られていますが、実際の彼のなんと繊細であったことか。
純粋な芝居への情熱と、新鮮さと成熟さを併せ持つ実力が認められたと同時に始まるショービジネス。そのギャップ。
映画会社のお偉いさんに、おべっかのひとつも言えない。媚を売ることなど論外で、駄作だと批判してしまう遠慮のなさ。
もう無垢でいられない辛さ。

演じるデイン・デハーンの特徴でもありますが、その瞳は寂しさやシャイというより怒りや苛立ちが表れていました。
J・ディーンよりも鋭い目を持つ青年を起用したのは、危うい若さを強調したかったということか。

夢が叶ったのに、思いは故郷へ原点へと向かっていたとは。
アクターズスタジオを再訪する場面がありますが、夢を追って学んでいたころのほうがまだ心が安らいでいたのかもしれない。
「決意した瞬間 神の意志も動き出す」
ゲーテの格言を引用して指導する教室で、昔を思い出したとちょっと寂しく微笑む。

『人が真剣に取り組もうとはっきり決めた瞬間、神の意志も動き出す』
『わが身に生じるとは夢にも思わなかったような、あらゆる予期せぬ事件、出会い、物質的援助が訪れる』

「LIFE」に掲載された写真を眺める従弟の少年。そこに自分の知らない‘ジミー’が居たのかもしれない。
夕陽の中を飛ぶ機内で、子供に話しかける母親の声に、詩人ライリーの郷愁を謳った詩を思い出す。
その顔は、その先に迫る生(LIFE)の終焉を予感しているかのような表情。
走り去って散ってしまった若き魂を悼む、残された者たちの空虚感が伝わるラストでした。



映画
by august22moon | 2016-02-27 23:00 | 映画 | Comments(0)

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