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by august22

蜷川幸雄演出 『ジュリアス・シーザー』 wowow放映

d0109373_154484.png前回放映から早1年。ようやく全編見ました。

歴史の流れではなく、登場人物個々の苦悩や惑いや怒りを見せるお話し。
ブルータスに阿部寛さん、対照的に痩躯ではないけど、ギラギラしたキャシアスに鋼太郎さんと、個性に合ったキャスティング。
民衆を扇動する策士アントニーに藤原竜也さんで、芝居は同世代では抜きんでて巧いので演じられるのはこの方しかいないでしょう。演説場面はセリフに圧倒されず流石。
赤い月を背にオデッサの階段(的な)に立つ姿も絵になる。
しかし、覇権争いを勝ち抜く狡猾さが、この方の持つ特性によって、きれいに見えてしまった。最後にブルータスへの哀悼の意を表すのが純粋な本心なのだとすれば、効果的ですが。

民衆にも必然的にリーダー格の人物が出てくるもので、これを演じるたかお鷹さんが巧くて、こちらのほうが、公平性を装って民衆をなにげに誘導する狡猾な人物に見えてしまった。
オクタビアヌスはその後も想像させる血気を感じさせました。

ブルータスはキャシアスのみならずアントニーからも度々「高潔」と評されるほどの人物。
独裁を憂う正義漢で生真面目であったがゆえクーデターに同調するも、悩み揺れる。
阿部さんの芝居に突き刺さるものを見いだせたことがないのですが、脆さは活きていたという気がしました。
(横を向くとマイクにセリフが拾われず聴きとり難かった)
またそこがキャシアスを不安がらせ一枚岩でないのを示し、のちの大敗を招くので、この対照は鋼太郎さんの緩急自在な芝居とも好対照的で面白さがありました。
(まさかこの芝居で客弄りがあるとは)
最近は様々な役柄で露出が増えましたが、こうゆう芝居こそ鋼太郎さんの真骨頂。見ていて気持ちがいい。

松岡氏の意訳で、キャシアスの予言「どんなに時代が過ぎようと、我らの行なったこの崇高な場面は、まだ生まれていない国で、まだ知られざる言葉で、繰り返し演じられるであろう」に、「憂国の士」と加えたのはお馴染みの勇ましい脚色ですが、日本人には通じやすい。

物語の人物に血肉を与え時に生々しく造形するに長けている横田さんですから、このシーザーの肝心の王冠授与場面を出さず、のちの場面で観客に想像させ納得させる芝居は流石。
人間味と、最後までブルータスを悩ませた王の偉大さが見られ、舞台にその脅威の影を落とし続けました。
シーザーがアントニーに、キャシアスへの疑念を伝えるセリフは無声音。
劇場中に通る無声音はプロとして当たり前の技量なのでしょう。高橋洋さんにもイアーゴで演らせたし。
あの斬新なフォーティンブラスもこうだったらモヤモヤしなかった。

by august22moon | 2016-03-04 23:00 | 観劇 | Comments(0)