出会った本、映画の感想。日々のこと。

by august22

ピーター・チェルソム監督作 『しあわせはどこにある』 wowow放映

d0109373_12443312.jpgテーマとしては食指の動くものではないのですが、『宇宙人ポール』で脚本家独特の役を俯瞰視しているようなやりすぎない演技が好ましい印象だったサイモン・ペグが主演なので見てみました。
『ミッションインポッシブル』は見てないんですねー。予告編しか。
調べていたら『フォースの覚醒』で廃品買い取り商人の役だったんですね。あのヴォルデモートみたいな?わかりませんよぉ

原作はフランスの精神科医の著作ですが、経験譚なのかな?
上司に、中国へでも旅行しようかと相談していると、絶妙のタイミングでドラの音が響き渡る。ゴォォォォン
ええ?と音のする方を見やると、職員がスチールのお盆を落とした音だったという場面は大笑い。
ガランガランガラン

他作品の演技や同じ共演者などを引きずることは作品の魅力を半減させる愚だと思って、意識してないつもりなんですが、ロザムンド・パイク演じる恋人クララの、快活で誰にでも愛される人柄や母親のように気が効きすぎる世話好きぶりに、裏があるような気がしてしまいましてね。満面の笑みにどこか病的な陰があるようで。せめて髪型とメイク変えればねぇ
『ゴーンガール』の印象が強いというよりもなんか、このひとあんまり変わらないような・・・

で、このヘクター氏が、精神科医として忠実に悩めるひとたちばかりに向き合いすぎてしまうのか、需要と供給のバランスか、しあわせとはなにかってリサーチする旅に出ようと決心するわけです。恋人からも距離を置いてみようと。
患者に向き合っているときは心を開けそうな医師なんですが、白衣を脱いだら途端にどこか抜けてる。
これは恋人がいろいろ世話してあげなきゃと心配するであろう頼りなさ。
後に著名な脳科学者が幼稚なと驚くほど。
無邪気な子供みたいに天然な素が出ちゃう。このギャップが可笑しい。

イギリスから、遠く異文化世界を選ぶんですね。中国、チベット、友人のいるアフリカ、そして元カノのいるアメリカ。
とまどいながらも送りだすクララ、「もっとソックス持っていけば?」
「そんなにソックスばかり持っていっても・・・」
クララが開けた引き出しにはもう2-3枚しかソックス残ってないのよ~
で、彼女からのサプライズプレゼントで、トラベラーズノートが荷物に忍ばせてある。ヘクターは喜ぶんですが、1ページ目にメッセージと共に自分の写真なんて貼るのをパイクがやると恐いよぉ(笑)
このノートに旅のテーマである「幸せ」についてリサーチして、心に残る言葉や学んだことを書いたり、風景を描いたりする。いいなぁ、写真ばかりじゃなくノートにスケッチまで記すって。
後にちらっと映るんですが、彼、就寝時にブリーズライトみたいな鼻腔拡張テープが必需品のようで、使用済みのテープもホテルの名前なのか何か書きこんで、ノートに貼ってあるのが可笑しい。

彼が出会った人たちの「幸福論」の言葉自体はチベット僧侶の格言以外、個人的に響くものは無いんですが、イラストがとても魅力があってよかったです。そこに実写重ねたり動かしたり。
(しかしカノジョの写真が貼ってあるノートに浮気の証拠ともなるようなイラスト描くってどうゆう神経?)
この絵は監督のかなぁ、サイモン・ペグも描けそうだけど。

座席が重複発行されるミスによって、図らずもビジネスクラスに移動となってごきげんのヘクター氏。
はしゃいでわちゃわちゃしてるもんだから、ウエルカムシャパンのグラスを床に落としちゃう。「割れない材質ですからご安心を」と客室乗務員に言われるや、お皿はどうだと試してみてガッシャーン。子供かっ。
空港出て地図広げているところに隣席だった社長さんが声かけて、だら~っと伸ばした地図が脚に絡みそうになって通りかかったカートに躓く。バゲージラッピングに自分まで巻いちゃう。ミスタービーンかっ。
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ノートに描き込む都度ペンを探して、隣り合わせた社長からは「必ず返せ。このペンはおまえの車1台分だ」と言われたりするんですが、こんな他人にはめんどくさいとこが後に命を救うことにもなる伏線となってるのも面白かったです。ネーム入りでよかったね。

チベットでは、寺院を訪ねて「幸せとは?」なんてインタビューするも「月曜は定休日」と素気無く扉を閉められちゃうんですが、老師に温かく迎え入れてもらう。
ポタラ宮のような奥地で、達観した老師の含蓄ある言葉に、そこにあるそこだけの「しあわせ」を知る。
経済発展著しくもいまだ貧富の差があるのを痛感した中国から、迫害を受けているチベットへ行くというのが面白い。中国では公開されないかもですね。
チベットの場面はとても良かったです。
パラボラを立てるのを手伝う夕暮れ時のシルエットも美しい。
質素だけれど心の豊かさがあることを知るのですが、ここが結構近代的。
若い僧侶がスクーターですい~っと走り抜けて行ったり
「え!skypeできるのー!?」
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在る時、老師が呼ぶので外へでると、風が吹いてタルチョがはためいている。
タルチョの下で僧たちは歓声を挙げて飛びまわっている。
老師曰く「これがすべてだ」
この時の抜けるような青空と五色のタルチョがとても美しくとらえられていました。
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この老師に中国からの迫害についても尋ねますが
「不幸を避けることが幸福ではない」
ひとは誰もしあわせになる権利があるんですねと言えば
「もっと上だ」
「しあわせになる義務がある」と。
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政情不安定なアフリカでは、厳しい医療環境を体験して、精神科医はここではなんの役にも立たないと痛感するんですが、病気の子供に向かっておどけてみせて笑顔を引き出すことができる。
ロス行きの機内では「お客様の中でお医者さまはいらっしゃいますか?」となり、重篤な容態を押して親族に会いに行く女性に出会う。痛みの負担を和らげるために高度を下げさせ、横になりやすいようにファーストクラスに移させる。
そして最期の時が近付く覚悟と哀しさを語る女性に寄り添い、心の負担も軽くしてあげる。
空港に到着し、女性の無事を知らせる機長のアナウンスに、乗客一同から拍手が起こる。
ファーストクラスにまで届くその拍手に合わせて、女性に向けて小さく拍手してみせるヘクター先生。
この拍手する場面が特に良かった。
女性は感謝を込めて「話しを聞くことは愛情を示すこと」だと、笑顔で救急車に運ばれていった。
「しあわせとは天職に就くこと」。アフリカの診療所で働く友人の言葉が甦るわけですね。

ラストは予想通りなのですが、ノートのイラストとチベットと機内の場面はとても心に残りました。
若い頃のアンソニー・ホプキンスに似てる?と思いましたが違いますかね。



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by august22moon | 2016-04-28 23:00 | 映画 | Comments(0)