瀬々敬久監督作 『64 ロクヨン 後編』

d0109373_15593419.jpg観客の期待するものがなんであれ、原作を越えた作品を創ろうとしたがるのは仕方のないことだとは思うんです。これはこれでアリだと迎えられる場合もあるし。
当初はラストが違うという情報だったので、確かに原作のラストは隠蔽の告発を含めた事件解決に向けて動き出したところで終わっているので、描く余地がありますしね。
しかし監督がインタビューで、「映画は主人公や登場人物の行動を追って見せるものだから、最後も主人公自らも行動させたかった」と発言しているのを読んで、ちょっと厭な予感はしたんですよね。

見てびっくり。ラストどころじゃないじゃん!まさかここまで勝手な行動をさせるとは。
あれでは逸脱行為。広報官が容疑者を誘き出し、直接対決って・・・ハリーキャラハンじゃないんだから。
これでは単に俳優の見せ場を作るためだけの変更に過ぎない。

唯一信頼している松岡が、犯人を昭和64年へ引きずり戻って宣言してるのに、なぜ待てない?
結果的に二渡に恩を売る結果になるのは三上には不本意のはず。報復人事も誤解ってことにするの?
・・・もう、「そんなことをしたらメチャクチャになります」、だわ。
秋川を河原まで追って来させたのも同様。
後編での秋川の見せ場は、記者会見場で彼なりのやり方で三上ら広報室に協力しようとするところなんですが、それだけじゃ勿体ないと思ったか。
幸田はショッピングセンターのトイレで電話してませんでした?なぜ車内じゃないことにしたの?

日吉が泣きながら部屋から出てきた時。母親に謝るだけで、前編の「きみのせいじゃない」のその先の、彼を14年の重荷から解放させた言葉が無い。
日吉にかける数々の言葉は、三上が日吉の向こう側に娘を見ていた言葉だったのに。
記者会見で二課長が捜査本部から情報を小出しにしか提供されず何十回も往復させられる場面は短縮すべきと思っていたのでそこはよかったんですが、何十回往復してるのか示してないので、美雲の心配も倒れて救急車と騒ぐのも大袈裟に見えてしまいませんかね。
いかにも頼りない感じは、流石に柄本さん巧いから面白かったですけど。
目崎に初めて会った時の松岡の表情もそう。ハンカチバサッはまあいいけど
捜査車両の追跡もなんだか短い気がしちゃった。凄い緊迫感出せる、それこそ映画的な息詰まる場面なのに。

殺された娘と同じ年の目崎の次女の誘拐を企ててもやり切れなかったという場面を作って、雨宮の葛藤を見せているところはいいと思いました。
復讐の一念で生きてきたとはいえ、実行は容易なことではなかったろうし。
そこで、幸田が動いたことや、誘拐しないで脅迫することにした理由が成立しました。
しかし、その後の次女の一連の行動は余計。

緒形直人さんは温和な役柄が多いところ、珍しい役柄で堪能しました。
思わず近道に入ってしまった後とか、メモを読んで被害者から真犯人へと豹変する表情は素晴らしい。
なぜあんなことが出来たのか自分でも判らない。犯行場面では追い詰められた男の異様さが見事。
渡辺真起子さん演じる目崎の妻の、警察への警戒感を感じる目つきが、通報の遅れた理由を表して巧い。身代金誘拐も妻の発案かもなんて背景も浮かびました。
外車ディーラー時代の裕福な暮らしぶりを横顔に残しているのもこの一家に深みが出ました。

綾野剛演じる諏訪が三上からの電話を受けて、移動します待ってくださいとさり気なく会見場を歩きだし、まだ廊下に出ないうちに急にダッシュして「どうぞ」と応えるのには、焦りや憤りが出ていました。
抑えた芝居を要求される地味な役どころでも光るのは、さすが。

永瀬さんは、侘しさと奥底に一念を燃やし続ける男の役ですが、その疲弊した表情は見事でした。「あなたは大丈夫ですか?」も、美那子に微かにする会釈もよかった。
でも、あのスタイリッシュさは滲みでちゃうもんですねぇ。居住まいもちょっとした動作も洗練されてる。

まるで火葬のようなどんど焼きの場面は、雨宮ひとりのほうがいいのに。
誰も彼を救うことなど出来ないんだから。
そうすればそれこそ「慟哭」なのに。
無念、無情、寂寥。そうゆうものだけで満たされた人間ドラマを見せてもいいと思うんです。生きるとは時にそうゆうものだから。
重厚感と緊迫感あるドラマなのに、ちょっと惜しいな、という印象でした。


土日はかなり混んでいたそうなので平日にしたのにチケットカウンターが長蛇の列でびっくり。
今作もかなりお客さんが入って(端っこの席しか空いてなかった・涙)いたのですが、図鑑行列もあったようです。



映画
by august22moon | 2016-06-14 23:00 | 映画 | Comments(0)


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