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『子規のココア・漱石のカステラ』 坪内稔典・著

ハードカバーでは正岡子規の柿好きから、柿が表紙なんですがNHKライブラリー版のあんぱんが美味しそうで。
子規の『仰臥漫録』にある食事記録の中に「あんぱん」があって著者も好きなのだとか。
表紙買いというか、実は電車の中で読む本が無くて買っちゃった。
交流のあった漱石と正岡子規のそれぞれの作品に出てくる季節の食べ物や花について紹介してあるんですが著者自身のエピソードが結構多い内容でした。

日生劇場へ行った折に、かの有名な木村家のあんぱんを買ったのですが・・・。味音痴な私にはスーパーで売ってるあんぱんとの違いがよく解らないという、バチアタリナ結果となってしまいました(恥)



表題は、子規の『仰臥漫録』の食事記録「牛乳七勺位ココア入り」から。ココアをよく飲んでたみたい。
子規が明治33年9月に長塚節へ送った礼状 「君がくれた栗だと思ふとうまいよ」。
ただそれだけの簡潔な文章に、病床にある子規が瘠せた指で栗を摘んで微笑む表情が浮かんできます。

翌34年11月ロンドン留学中の漱石に宛てた手紙の「・・・倫敦ノ焼栗ノ味ハドンナカ聞キタイ」 と、長閑な文章が微笑ましい。ただこの後 「再会スルコトハ出来ヌト思フ」 と続き 「僕ハ生キテイルノガ苦シイノダ」 と結ばれます。すでにカリエスが悪化した子規の縋るような文が哀しい。こんな手紙を遥か異国で受け取った漱石の心中やいかばかりか・・・。
 
さて、漱石のカステラのほうは、明治40年京都で東本願寺を訪れた際、子規派の俳人でもあった管長からカステラを手土産として貰ったはいいが「カステラヲ入レル所ナシ」と持て余し、そのまま東寺へ向かい「五重塔を春の温かき空に仰ぐ/ カステラを懐いて徘徊す」
と、なんとも漱石らしい。思い描くとクスッと笑えるエピソードからきています。

「菫ほどなちいさきひとに生まれたし」
漱石は花が好きだったんですね、『それから』 の鈴蘭、『夢十夜』 の白百合 など作品中にも花が出てきますが日記にも、庭の花々の開花だけでなく、チューリップが送られてきた、君子蘭を買った、アネモネを買ったと部屋に花の絶えることがなかったようす。
「瓶裏花なし。聊か寂寥」と日記の記述があるくらいです。
「四月十六日 柘榴 深紅の芽を吹く。山吹とこごめ桜を瓶に挿む」春らしい情景が浮かびます。
で、この日記には漱石らしい少々アイロニカルな記述もあり笑えます。
「矢張り妊娠なりといふ。無闇に子供が出来るものなり / 願わくは好い加減に出来ない方に致したきものなり」・・・・をいをい。
それでも、その数日前の日記には 「細君の顔少し美しく見ゆ」 とありますが。

Commented by dandandan1c at 2007-04-24 11:52
度々すいませんm(_ _)m
漱石って殆ど読んでいないんです。子供の頃に「坊ちゃん」を短編で「夢十夜」を読んだくらい。友人は昔漱石は新聞小説だったから電車で読むのにリズムがいいと話してました。
「菫ほど〜」の歌、先日黛まどかさんの日経の記事で知りまして、漱石ってそんな人だったんだ〜意外^^;謙虚で可愛い人だったんですね。いつか、どっぷり漱石読みたいなと思ってます。

別記事ですが私「カポーティ」見逃したんです。映画は如何でしたか?この機会に「冷血」読もうと思っていたのに、とほほ。
Commented by august22moon at 2007-04-25 03:07
「新聞小説だったから」という説。おもしろいですね!
『カポーティ』は、予備知識としてカポーティの人となりを知って挑めば彼の葛藤や逡巡が理解できたかもと残念です。ペリーを利用しようと考えたのもシンパシーも悔恨も彼の中では真実なのでしょう。かくも人間は複雑で、小説家たることは冷酷で「冷血」であると、観客に委ねる部分を含めて演じたホフマンは見事だったと思います。
デューイー捜査官役クリス・クーパーの鷹のような目つきも良かったです。
Commented by はみだっし子 at 2007-05-12 15:05 x
 本当に,つい最近,「クレビックは元気かい」というタイトルだけが急に甦り,さくらさんブログに出会いました。背景のきれいな桜色と,割と趣味の合う読書内容に惹かれて,ついつい読み耽ってしまいました。
 だいぶ,お若い方なのかとも思いましたが,「クレビック」とは...。
 この作品は,私のおぼろな記憶では,姉の購読誌であった中1コース掲載かなって思っていたのですが,実は,「5年の学習」だったとは...。 確かにうちも「科学」ではなく,「学習」でした。
 全く内容は覚えていないのですが,ちひろ風の挿し絵と横笛のようなものを吹いている少年が脳裏に...。でも,これももはや何かとゴッチャになった間違えた記憶なのかもしれません。
 もう1つ,子供のころ大好きだったのは,「ケンはへっちゃら」。なんと和田誠さんの作品なのですよ。びっくり!!ご存じでしたか。
 ついつい懐かしさのあまり書き込んでしまいました。
 とにかく,もやもやがスッキリして爽快な気分。ありがとうございました。
 また,寄らせてもらいますね。では。
Commented by august22moon at 2007-05-13 01:48
はじめまして。コメントありがとうございます。
わぁ~不思議な偶然ですね。私もなぜか突然「クレビック」のことを思い出したんですよ。なんだか凄く嬉しいです。 私も中学の図書室にあった本だったので小学生向けとは意外でした。
確かに主人公が吹いていたのは横笛(フルート)でした。はみだしっ子さん凄い記憶力! 
「ケンはへっちゃら」は知りませんでした。和田さん児童書も作られていたんですね。
私、すっごいオバサンなんです。今の自分が一番好きですし年齢を言うことは別に抵抗はないのですが、ブログという特性上、言わぬが花かなぁ?(笑)でも「クレビック」で大体見当が付きますね(笑)
若い娘ぶった言葉使いしちゃってお恥ずかしいです。
こんな私の気まぐれ日記ですがこれからも宜しくお願いします。
面白そうな本があったら教えてください。
by august22moon | 2007-04-23 23:58 | 読書 | Comments(4)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


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