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松本清張 『別冊 黒い画集』 文藝春秋社

事故 新装版 (文春文庫 ま 1-109 別冊黒い画集 1)

文藝春秋刊・清張全集7巻で読みました。
収録の『ミステリーの系譜』は、昭和十三年に起きた大量殺人事件‘津山三十人殺し’の「闇に駆ける猟銃」を始め、「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」と猟奇的殺人事件の真相・背景を分析した作品。「闇に~」は、村の因習のみならず、犯人・都井の子供の頃の生活環境・学校の成績までも取り上げて分析しています。
不思議だったのは、密集した村落ではなくとも、猟銃の銃声が他の家に聞こえなかったという事実。家々は離れて建っているうえ、木々に覆われていたため隣家が気づかなかったばかりか、銃声が聞こえた村民の耳にも、竹棒で戸を叩いているようにしか聞こえなかったらしい。

さらに不思議なのは、同じ部屋で寝ていた家人すら気づくことなく、熟睡のまま被害に遭っている事。清張氏も繰り返し言っていますが「熟睡とは恐ろしいもの」。

他の二編も残酷な事件ですが、淡々と緻密に分析され、当時の農村の貧しさや警察のぞんざいな捜査。検事同士の確執の恐ろしさ、冤罪の恐怖など興味深く読みました。

『黒い画集』の中の短編小説『熱い空気』は、まさに「家政婦は見た」。
しかしこの家政婦さんは陰湿。傍観者では終わらない。
高慢な奥さんや可愛げの無い子どもに、この一見幸せそうな家庭を崩壊させてやろうと画策する。巧く子どもを操って騒動を起こしたが、本人も予想だにしなかった意外な展開になり一家の崩壊は目に見えてくる。
勝手に店屋物などとって密かに一家を哄笑しているところへ・・・。
最後の意外な展開は面白い!

ちょっと、『潜在光景』を思い出しました。
この子どもはまったく違うのですが、やはり Les Enfants Terribles。

by august22moon | 2008-04-09 19:05 | 読書 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22
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