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エコー劇場 AUN 『 リチャード三世 』千秋楽観劇

エコー劇場 AUN 『 リチャード三世 』千秋楽観劇_d0109373_1165250.jpg階段柵に飾られたゼラニウムの花びらが階段に散って素敵でした。
キャパ130は満席。

ロビーの贈花の中に小栗くんからラベンダー色の薔薇が。








シェイクスピア作品の中で『リチャード三世』は『マクベス』とともに好きなセリフ好きな場面の多い作品です。
初演を観ていないので今回の再演はとても楽しみでした。
感想はひと言で言うと、本当に良かった。
休憩なしでボズワースの戦いまで一気に魅せました。
実は、『夏の夜~』の劇中劇や『冬物語』の熊の着ぐるみのような‘遊び’というのか、くだけた演出が苦手でした。それも含めてAUNなんですけどちょっと笑えないんです。
でも今回はそうゆうぶっ飛んだ演出をせず、アドリブに似せた応酬程度に抑えているのが良かったです。
まず、グロスターが亡き夫の棺の前で泣き崩れるアンに、なんと香典袋を差し出すので客席爆笑。
(アンも和装の喪服。お祈りは僧侶の格好で読経。床は和紙製の紅白市松模様。赤い壁。背面の壁に大きな白薔薇)
グロスターが殺し屋に言うセリフ、「よく気がついた」をまるで子どもに対するように言ったり。
殺し屋役の高橋さんが、鋼太郎さんにナイフで頭を叩かれて芝居抜きで痛がるのはアドリブに見せた演出のようですが、「今、持ち替えた・・・」とワザと金具部分で叩いたでしょ?と苦笑したり、次なる殺しを依頼する際(原作ではティレルとの会話)パスタを頬張りながら答えるので鋼太郎さんが、何言ってんのかわかんないよ!とツッコむところなど笑えました。
また、密談後のグロスターとバッキンガムが椅子を片付けるのを「私が(持っていきます)」「いや私が」。グロスター鋼太郎さんが「次はやるね。」と譲ると、バッキンガム中井出さん「今日が最後です」。これがセリフではないような喋り方なのでなおさら可笑しかったです。

客演の高橋務さんの暗殺者が凄く良かった。
ヨーク家側の白い衣装に彼だけが返り血を表す黒いシミで汚れている。
好みの殺し屋ですわ    コソコソ|_- ))))
無表情で飄々とけろりと仕事をする。
まるで岡田以蔵。いや以蔵のほうがぎらぎらしているか。

この暗殺者はじめ全員の武器が剣ではなく金属バットなので、斬りあうのではなく殴りあい。
金属音のSEもあって残虐さが強調され、戦争に正義も聖戦もないのだということが暗示されるようです。
また衣装も革ジャンやジャケットで、中にはジェイソンを思い出させるホッケーマスクを装着している者もいて、より残忍な暴力性が感じられました。

ヘイスティングス卿役谷田歩さんは、ますます華のある役者さんぶり。
脇に回ってもその‘華’で目を惹きます。素敵♪

鋼太郎さんのグロスター(リチャード)は文句なく面白い。
冒頭の有名すぎるセリフ「われらが不満の冬もようやく去り・・・」から「馬を!代わりに王国をくれてやるぞ」まで惹きつけて離さず魅力的。
蜷川演出で市村正親さん主演の「リチャード三世」再演を観たのですが、まったく別の魅力がありました。
アンを口説く場面や、諸侯へ追従を言いつつ策略を巡らす策士ぶりなどの闇を抱えた権力者の威圧感は鋼太郎さんならでは。
『終わりよければ~』でも使われていた紗幕を使った演出がありました。
リチャードが悪夢を見る場面で亡霊たちがこの幕の奥から「絶望して・・・」のセリフを言い、それぞれが「リチャード」と呼び続けるのが幻想的で恐怖を煽りました。
ラスト。殺されて横たわるリチャードに、背面のおおきな薔薇から血が滴り落ちて白い衣装を染める演出も良かった。

日本的演出で宴の場面には膳が使われました。お酌をする侍女は巫女姿。
バッキンガム中井出さんがリチャードの心変わりに激高するところで振り上げたお膳に乗っていた杯が客席まで飛ぶハプニングも。
鋼太郎さん、長椅子に座っての芝居の最中に泣きマネをしつつ床におちていたヘアピン(抵抗するアン坂田周子さんの髪から落ちた)を摘み上げポケットに入れる冷静?さにちょっと笑えました。
カテコでは鋼太郎さんが次回公演『マクベス』のお知らせ。
どなたがマクベスを演じるんだろう。

セット・演出と洗練されて見応えのある舞台でした。

終演は16時20分。外はようやく涼しい風。
そして渋谷へ。

by august22moon | 2008-05-28 03:05 | 観劇 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


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