2008年 07月 29日
トルストイ民話集 『洗礼の子』(表題・イワンのばか)岩波文庫
鋼太郎さんが 『sisters』 のパンフで
「精神的にものすごく怖かった」
「光景が目に浮かぶようで、いちいち怖かった。」と
紹介していた短編『洗礼(なづけ)の子』を先ず読みました。
青山真治さんの『ホテル・クロニクル』を読んでいたんですが、エッセイなのか小説なのか、観念的な描写が多くてなんだか疲れちゃって進まなかったので飛びついてしまいました。
貧しい百姓家に男の子が生まれたが、貧しさゆえに洗礼(なづけ)親になってくれる人がいなくて困った父親は隣村まで頼みに行こうと出かける。ひとりの旅人と出会い、子供の洗礼父を引き受けてもらう。
旅人は、商人の娘に洗礼母を頼めば引き受けてくれるだろうと予言すると果たして金持ちの商人は快く引き受けてくれる。
どうもこの旅人は常人ではなさそうに予感させます。
賢い子に育った少年は自分の洗礼親に復活祭のお祝いがしたいと、洗礼父探しの旅に出る。道中出会った旅人に「私がおまえの洗礼父だ」と名乗られる。
洗礼父は明日自分の家へ来るように道を教える。
それから少年が出会った出来事で、‘悪’に対する宗教的・道徳的な‘教え’を与えるんですが、
それが確かに「いちいち怖い」(笑)
前付には、マタイ伝「・・・悪に抗することなかれ・・・」
ロマ書の一節「復讐はわれにあり、われそれを報いん」。
少年が最初に出会う、その後の教訓を暗示する「熊」のエピソードは
本当に残虐な光景がはっきり浮かび、ちょっと怖い。
駅の陸橋から写メを撮っていた女性がいたので、ふと見ると落日後のピンクの空と薄紫色の富士山が美しかったので、私も。
雲が觔斗雲みたい。