出会った本、映画の感想。日々のこと。

by august22

C・イーストウッド監督作 『チェンジリング』

d0109373_464213.jpg【ストーリー】
1928年。ロサンゼルスの郊外で息子・ウォルターと幸せな毎日を送る、シングル・マザーのクリスティン。だがある日突然、家で留守番をしていたウォルターが失踪。誘拐か家出か分からないまま、5ヶ月後、息子が発見されたとの報せが届く。だが彼女の前に現れたのは、最愛の息子ではなく、見知らぬ少年だった。















この映画を観た日本人なら誰もが拉致被害者のご家族を連想するでしょう。
その涙を知っている私たちには、怒りと絶望で胸が締め付けられるような映画です。
あの日、もし仕事帰りに上司に呼び止められなかったら。もしバスに乗れていたら。もし欠勤者がいなかったら。もし電話に出なかったら・・・。
運命を呪ってしまいます。
それ以上に呪いたいのは当時の横暴で腐敗しきったL・A・P・D。
所轄も、行方不明から24時間経過しないと捜査しないって・・・怒りを通り越して呆れてしまいます。
学校の担任や歯科医から別人であると証言を得ると、クリスティンと共に否彼女以上に喜んでしまいます。
担任の女教師が毅然とした態度で、私の名前は?と尋ねたり、自分の席は1年位では忘れないわよねと試します。違う席に座ろうとするのを「空いている席に座れと言ったんじゃないのよ」と別人であることを証明してくれた場面は、胸のすくような気がしました。
この子には可哀そうだけど、嘘をつくのがいけないのよと言い聞かせながら。
そして。どうか生きていますように。帰ってきますようにと祈りながら見てしまいます。

A・ジョリーは、常に身体を固くして立ち、目深にかぶったクローシュ越しに見せる固い表情も、必死で己を支えているように見えます。
裁判所で、処刑所で、じっと警部や犯人を見つめた姿は、子供を返せと全身で叫んでいるようです。
息子はどこかで待っていると希望を失わないのを、それまでクリスティンを守り支えてくれた長老派協会牧師・グスタヴが「それは我々が行くところかもしれない」と新しい人生を生きることを勧めます。
本当にそう言ったのだとしたら、教会の人間であるとはいえ残念な言葉でした。

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5年後、被害者の一人で遺体が発見されていない子供の一人が突然保護されます。
犯人が家まで追ってくるのではないかという恐怖から戻れなかった。
やがて報道を知っても、警察に駆け込まなかったから被害者が出たと責任を感じ、出てこられなったと打ち明けます。これが一層「希望」を捨てずにいようと誓いを新たにさせます。
これは映画独自の解釈のようですが、諦めること無く戦い続けたコリンズ夫人への賛歌と受け取れます。

それでもクリスティンにも穏やかな日常が少しづつ戻ってきて、仕事仲間たちとアカデミー賞の話題で笑いあうエピソードがあります。
もし「或る夜の出来事」がオスカーを取ったら明日食事にと上司が寄せる思いに応え、ひとりで授賞式をラジオで聴くクリスティン。
受賞を期待して、ライバルノミニーの「クレオパトラ」に「過大評価よ」と言うのはちょっと笑えました。

画面はグレイッシュブルーで陰影が強く、独特の色彩美を創り上げています。

by august22moon | 2009-03-07 01:55 | 映画 | Comments(4)
Commented by はみだしっ子 at 2009-03-07 10:24 x
凄くおもしろそうですね。絶対みたいなぁ。こういうタイプの映画大好きなんですよ。それにしても,いつもながら簡にして要,素晴らしいコメントでつい精読してしまいました。読み惚れる(..*)ぽッ...みたいな。
Commented by august22moon at 2009-03-07 22:36
はみだしっ子さん、ありがとうございます。お恥ずかしい。

この映画は、連想される事件のことがあって特に胸に迫るものがありました。冷静に見ることは私には難しかったですが、サスペンスとして無暗に煽ったり劇的に作らず淡々と展開するのは反って惹きつけると思います。
Commented by k-mia-f at 2009-03-09 20:49
こんばんは^^ 

嘘吐き少年の2度目の”親子の対面”シーン、がわざとらしく感じました。
最後のセリフもちょっと気になっているし。
早く事件にケリをつけたい警察の偽装では?・・・なんて疑いすぎでしょうか?あの後少年は家に帰るのではなく、養護施設に向かったとか。

それまでの嘘吐き少年の態度から、この少年にもよほどの理由があると思っていたのです(例えば、路上生活からの脱出とか)。
子供が悪戯でできるようなことでない、大人が考えたことであってほしいというう私の願望でしょうか?
実際はどうだったんでしょう?
調べてみたい気もするけど、怖い気もします。

”7㎝の差”の医学的根拠っとやらにブチ切れそうになりました。
Commented by august22moon at 2009-03-10 02:02
miaさん、こんばんは。ありがとうございます。

なるほどー。確かに義母はぎこちない感じでしたものね。
少年の言葉も確かに、違和感がありましたね。
折り合いの悪い義母から離れたくてという情報も疑いたくなります。

あの「医学的」っていうのは、ほんと呆れちゃいますね。
こうして冤罪も作られていくんだなと暗澹たる思いになりました。

事実だし、イーストウッド演出は巧いしで
冷静に観られなくなっちゃう映画ですね。

私は「送り込んだんじゃない。送り届けたんだ」に、キレました。