2017年 05月 31日 ( 1 )

黒沢清監督作 『岸辺の旅』 wowow放映

d0109373_1947131.jpg 日本版ポスターはなんだか河瀬直美監督作のよう。














海外版のほうが黒沢清作品っぽいと思いました。
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『首長竜~』もホラー作品に変貌させた監督ですから、部屋の仄暗さからもうそこはかとなくホラー感。背後の空間が怖いー
子供やお坊さんが優介の異質なものを感じ取って見つめる場面。島影が消滅して一夜にして廃屋に戻った家。星谷が消滅する際に流れてくる靄などは、いかにも黒沢監督らしい怪しげな描写。

カンヌで「ある視点」部門監督賞を受賞した作品ですから期待していましたが・・・
先ず気になったのが、BGM。
酔った島影を優介が背負っている場面だったか、シンフォニーが流れる。
優介がぼんやりと月を眺めている場面には似つかわしかったのですが。
妻・瑞希が打ち明け話をする時は、長閑な山田洋次作品のような曲。
場面とちぐはぐな気がしました。

会いに行かなければという優介のよく分からない使命感で、亡くなってからの3年間に出会った人たちを訪ねる旅に、瑞希もついて行くんですが。
死んだことに納得せず彷徨っている魂を慰めるためなのか。なぜ行かなくてはならないのか。
優介という男をどう捉えたらいいのかモヤモヤ。
もう少し生気の無い雰囲気があればスッキリしたのかなぁ
訪ねて行く先の人たちは、奇妙なほど優介を歓待する。何がそんなに愛され惹かれたのか、里山では私塾まで開いて村中のひとがいそいそと集まって来る。
死者というより天使なのか?
同類の死者たちが歓迎するのはともかく。村人も中華料理店の夫婦も生者。妻のほうに亡くなった妹への悔恨が在るんですが、でもそれは誰にでもあることじゃないですか。
ピアノ絡みということで、妻も亡くなった少女の霊を鎮めることができたりするんで、妻としては夫の成し遂げたいことが理解できてくるってとこなのかな
会いに行ったのに、この夫婦に対して優介は店の手伝いをするだけで何もしていない。
何しに行ったんだろ

優介を巡る非現実と、深津さん演じる妻の生々しさがアンバランスに見えました。
これが、男女間の「深くて長い川」ってもんなんでしょうか

生きているひととまったく同じに接することができる夫が目の前にいたら、なぜ自殺したのか納得いかない妻としては、このまま元の生活が取り戻せるのではと期待するのは当然。
浮気相手のところへ行き、(死んでいようが)自分のところへ戻って来たことを言ってやりたい心情も分かる。
彼女にとってはもう、なぜ死んだのかよりも重要。
この妻の情念を、深津絵里さんはさすがの巧さで演じています。
亡父相手に話す時は、当時に戻ったようにちょっと幼くした喋り方も巧い。

星谷家では、生気のない薫のほうが彷徨える死者なのかと思いましたわ。
奥貫薫さんは好きな女優さんで。
きっと瑞希と同じ葛藤に苦しんでいたと思わせる表情がとても印象的でした。

私ったら、アップになるまで蒼井優さんだと気付かなかったんですのよ。
髪型のせいかなぁ。


ふと、だいぶ前にTVのスペシャルドラマで『降霊』を見たことを思いだしました。
前半はホラー描写満載なんですが、後半のサスペンス劇がたいへん面白かったんです。
夫が、妻の嘘を終わらせるために尋ねてみせる。何持ってる?
そして部屋の隅に移動する夫。隣の部屋で蹲る風吹ジュンさんの様子を見に行く刑事とくさなぎさん。カメラは誰もいない部屋を映し続ける。
で、くさなぎさんがあの慈しみ深い声で言うんです。
オンナノコノモノデスネ
誰もいない部屋にその声だけが聞こえる。
つまりこの声は、判決であり宣告であるわけですね。
ホラーな描写を凌駕して、そこが一番ゾッとさせましたっけ。

今作では、蒼井優さん演じる女が、浮気相手の妻である瑞希に平然と自分も結婚していて妊娠したので退職することを告げる場面が、一番ゾッとしました。




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by august22moon | 2017-05-31 23:00 | 映画 | Comments(0)


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