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「希望なんか語らないよ」

d0109373_1214276.jpg今年2月の『ハムレット』が最後に観た蜷川作品になってしまいました。
初めて蜷川作品を体験したのは04年の『タイタス』初演。
当時の私にとっては与野本町は遠く、知人に強く薦められてようやく重い腰を挙げたのでした。
観劇した日は楽日2日前。上演中に購入したのに座席は運良く2列目の通路側。
終演後の駅への道で、真冬の風が頬に当たって初めて、頬が紅潮しているのに気付きました。
その前にジョナサン ケント氏演出の『ハムレット』を2回観ただけで、まだ観劇も3度目という頃でした。
血で血を洗う復讐劇という激しい内容であったこともあるのですが、舞台上の隅々にまで張りつめて迸り投げつけられる激情を、全身に浴びたようで、ただただ打ちのめされてしまったのでした。
そして、再演『タイタス』の千秋楽のあの大歓声。
あの日の感動は忘れられません。あの場にいられたことがまだ夢のようです。

「終電なんか」。どこかでそんな発言を聞きました。
終演時間を気遣った演出などしないと。
チケットを購入してから、上演時間を知って愕然としたことが何度もありました。
うっかりソワレなど購入してしまって、終演後には駅まで全力疾走。東京駅に着いて尚全力疾走。
『リア王』『真田風雲録』ではやむなく途中で席を立たなくてはなりませんでした。
くそぉーせめて開演時間早くしてよー明日の仕事は休めないんだよーと心の中で悪態をつきながら。
マチネでも、急用で電車に乗り遅れ与野本町の駅から劇場までの坂道を走ったこともありました。
開演時間に遅れると通路演出が終わるまで客席に入れないので、必死。なんとか間に合って席についてもしばらくは汗だくでお芝居に集中できない始末。
蜷川作品は観客にも、容赦ないのでした。

蜷川さんの葬儀にあたって、愛弟子ともいわれ「生んでくれた」と感謝する藤原さんですら「憎しみ」という言葉を使ったのを聞いて、その激烈な闘いが具象以前に存在したことを改めて知りました。
いったい、デビューを飾り、自分の出演していない舞台さえ必ず観劇し、師弟関係といわれる役者と演出家にどれだけの鬩ぎあいがあったのか。
命を賭して幕を開けていたような舞台を多少なりとも目撃してきたことは幸運でした。

なんの舞台後だったか、トレードマークの黒いシャツ姿で、颯爽とガレリアを歩いていく姿が思い出されます。
まだ興奮冷めやらぬ観客の間を縫って、一瞬見えたその横顔には、ほくそ笑んだような笑みが見えた気がしました。

通路の途中で芝居をしたり、舞台奥の扉を開けたり、二階席からアジビラよろしく世界各国の国旗をプリントした紙を撒いたり、舞台上で稽古風景を演じさせたり、ホワイエにまで役者さんたちが練り歩いたり、水や泥の上で芝居をさせ観客にもその飛沫を浴びせたり。
第四の壁どころか、共犯関係にされたよう。
民主党の街頭演説やヘリにかき消される三島の演説や救急車のサイレンを流して、古典の中にある普遍性を強調したお馴染みの演出は、劇場から発信される叫びや怒号が街を駆け抜け社会を震わせた時代を、失うまいと蘇らせようとしているようでした。
あの時代の、湿度を持った熱と暗い寂寥と冷徹な攻撃性を、若い世代に突き付けようと、檄を飛ばし挑発していた舞台ばかりでした。

そこに私は、ほんのひとしずくの、希望と名付けられるものを、観ていた気がしました。

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by august22moon | 2016-05-18 23:00 | 観劇 | Comments(0)

蜷川幸雄演出 『ジュリアス・シーザー』 wowow放映

d0109373_154484.png前回放映から早1年。ようやく全編見ました。

歴史の流れではなく、登場人物個々の苦悩や惑いや怒りを見せるお話し。
ブルータスに阿部寛さん、対照的に痩躯ではないけど、ギラギラしたキャシアスに鋼太郎さんと、個性に合ったキャスティング。
民衆を扇動する策士アントニーに藤原竜也さんで、芝居は同世代では抜きんでて巧いので演じられるのはこの方しかいないでしょう。演説場面はセリフに圧倒されず流石。
赤い月を背にオデッサの階段(的な)に立つ姿も絵になる。
しかし、覇権争いを勝ち抜く狡猾さが、この方の持つ特性によって、きれいに見えてしまった。最後にブルータスへの哀悼の意を表すのが純粋な本心なのだとすれば、効果的ですが。

民衆にも必然的にリーダー格の人物が出てくるもので、これを演じるたかお鷹さんが巧くて、こちらのほうが、公平性を装って民衆をなにげに誘導する狡猾な人物に見えてしまった。
オクタビアヌスはその後も想像させる血気を感じさせました。

ブルータスはキャシアスのみならずアントニーからも度々「高潔」と評されるほどの人物。
独裁を憂う正義漢で生真面目であったがゆえクーデターに同調するも、悩み揺れる。
阿部さんの芝居に突き刺さるものを見いだせたことがないのですが、脆さは活きていたという気がしました。
(横を向くとマイクにセリフが拾われず聴きとり難かった)
またそこがキャシアスを不安がらせ一枚岩でないのを示し、のちの大敗を招くので、この対照は鋼太郎さんの緩急自在な芝居とも好対照的で面白さがありました。
(まさかこの芝居で客弄りがあるとは)
最近は様々な役柄で露出が増えましたが、こうゆう芝居こそ鋼太郎さんの真骨頂。見ていて気持ちがいい。

松岡氏の意訳で、キャシアスの予言「どんなに時代が過ぎようと、我らの行なったこの崇高な場面は、まだ生まれていない国で、まだ知られざる言葉で、繰り返し演じられるであろう」に、「憂国の士」と加えたのはお馴染みの勇ましい脚色ですが、日本人には通じやすい。

物語の人物に血肉を与え時に生々しく造形するに長けている横田さんですから、このシーザーの肝心の王冠授与場面を出さず、のちの場面で観客に想像させ納得させる芝居は流石。
人間味と、最後までブルータスを悩ませた王の偉大さが見られ、舞台にその脅威の影を落とし続けました。
シーザーがアントニーに、キャシアスへの疑念を伝えるセリフは無声音。
劇場中に通る無声音はプロとして当たり前の技量なのでしょう。高橋洋さんにもイアーゴで演らせたし。
あの斬新なフォーティンブラスもこうだったらモヤモヤしなかった。

by august22moon | 2016-03-04 23:00 | 観劇 | Comments(0)

鵜山仁演出 『トロイラスとクレシダ』 NHKBSプレミアム放映

d0109373_9565893.jpg世田谷パブリックシアターと兵庫県立芸術文化センターが文学座と共同制作。

序詞役の小林勝也さんのトーンは全日程あんな感じだったのでしょうか?時空の位置関係が把握できなかったのを引きずってしばらく集中できず。
この作品は蜷川版で観ていますが、衣裳やセリフで時代を飛び越え、より普遍性が強調されました。
クレシダ役のソニンさんは声がしっかりしているんですね。
表情も豊かで古典劇の重厚さにも負けてないしコメディチックな間も上手くこなせて。
不可解な心変わりをお人形さんで造形した蜷川版と違い、生身の女性を存在させました。
(まあ、あの俳優さんが苦手なのでそう思っちゃうのかもしれません)
ギリシャ側に寝返った父の元へ送られるクレシダを案じたトロイラスが、ギリシャ人のように歌も踊りもできないと卑下しますが、当のギリシャ勢はクレシダを前にハカなんて踊ってみせる。
オリジナリティ溢れるアレンジは観客に笑いも提供して、小田島訳とは思えない軽妙洒脱。
このクレシダのギリシャ陣営到着では、蜷川版では敬意を表した歓待も、まるで辱めを受けるような場面とし、クレシダが生き残るための選択をせざるをえなかったのを明示させました。

最もましなダイオミティーズを前にそれでもまだ逡巡するようすを覗き見て裏切りに絶望するトロイラスを、滑稽に演じさせたのも、恋人の真情を推し量る度量のなさ若さを表していました。
ダイオミティーズもクレシダに完全に心奪われてるわけではなく、駆け引きをもって翻弄させるあたりが、常に斜に構えて戦況を見ていた人物らしく描かれていました。
悲運の恋人たちも長期戦争の渦に巻き込まれて散り、タイトルロールでありながら群像劇の一部であるわけですね。

ユリシーズを演じる今井さんの知将ぶりが光りました。
ギリシャの頭脳として、その隙のない立ち居振る舞いがスマート。
トロイラスがクレシダを見たがることすら想定内というところ。
アキリーズを目覚めさせるにパトロクロスぐらいは利用しそう。

カサンドラは狂人としては描かれず、預言者のそれもアポロンの呪いによって誰も信じなくなったがため、悲劇の預言者となっている神話どおりの演出で、ヘクターに必死に訴える姿が活きました。

今作でアキリーズを演じた横田さんは、英雄と呼ばれた戦士の不可解な変容を怪演。
アガメムノンへの失望もあるのでしょうが、このひとの戦争へのモチベーションはなんだったのか。国を背負ってはいなかったのか。愛妾を奪われ剣を置くはまだ分かるけど、そこに国家の大事はないから腰が重い。
殺人の快楽だけしかないような風貌になっています。
お得意の軽味で真意を隠し続けギャップを植え付け、遂にその残虐性を目覚めさせた時の狂気をより鮮烈にさせました。

戦記ものをやるには世田パブの石とスチールの内装はぴったりでしょうね。
衣裳を現代的にし生演奏を入れ客弄りがあったりと斬新な演出によって、老舗大劇団の底力がいかんなく発揮された舞台でした。

by august22moon | 2015-11-04 22:55 | 観劇 | Comments(0)

野田秀樹演出 『半神』 東京芸術劇場 NHKBSプレミアム放映

d0109373_1723720.jpg国際交流基金の共催で、東京芸術劇場と明洞芸術劇場で昨年上演されたオール韓国人キャスト版。
初演版を部分的には見たことがあったのですが、全編通じては初めて見ました。

字幕のセリフはほぼ同じようですが、野田作品特有の言葉遊びのニュアンスをハングル語でどう翻訳したのか。
「果て」と「はて?」とか「三次元と四次元の間には時間が~四次元と五次元の間には給食がある」とか。
シュラの苦悩を知った家庭教師の言葉をブラッドベリの『霧笛』で表した場面は、是非とも日本語で聞きたいところなんですが、家庭教師役の俳優さんが、言語が違うことが気にならない演技でした。
シュラ役の女優さんも魅力的で、マリアへの葛藤と家族との確執を見て、今更ながら気付きましたが、この設定は『イグアナの娘』に共通している部分もあるのですね。

原作は短編で、萩尾氏特有の凝縮されたセリフとコマ割りが短編であることも忘れるほど濃密なお話し。
これに野田氏特有の言葉遊びと、思想の深く壮大な広がりと転がり(笑)を加えて、シュラの苦悩を描いて見事な作品でした。
タイトルの『半神』を魂の意味とせずに、スフィンクスや聖ガブリエル等の神話の神たちを登場させて、結合双生児を神話世界の仲間とし、人間界から取り戻そうとするので、双子はまるで堕天使のよう。
役名も原作と変えてユージーをシュラ、ユーシーをマリアとしたのは絶妙。

でも最後、なぜユージーのあのセリフで終わってくれなかったかなぁ、
萩尾さんはそこに拘りはなかったのかしら。
神話を絡め、シュラの心をマリアの肉体に残すという分離を施されるので、原作のように最期まで無垢な笑顔を向けるマリアの哀れやシュラの驚愕は描かれない。
命を掛けて個人を獲得したシュラがマリアのふりをして生きながら、親族との集合写真に過去の自分の亡霊を見せる場面は少々コミカルでしたが、シュラの辛さと後ろめたさが突き付けられました。

あれほど望んだ孤独は、やはり「夜ふけになると鏡の前でそれをぶら下げてうっとりと眺める。まるで宝石みたいな」ものではなく、世界の螺旋の渦の中に永遠に回り続ける。 
このシュラは、雨の夜に孤独に涙することはなく、
夜毎、彼方まで続く二重らせんを見上げるのだろう。マリアから発せられる霧笛に耳を傾けながら。

by august22moon | 2015-08-06 21:15 | 観劇 | Comments(0)

劇団AUN第22回公演『黒鉄さんの方位磁石』 27日マチネ観劇

スムースに東口へ出られるかどうかが不安なのでありましたが、無事渋谷駅を脱出。
(まだなんか工事してる!?)
宮益坂にある純喫茶という趣きのお店でササッとランチして、劇場へ。
スマホの地図機能は大助かりですねぇ。迷わず行けました。
人通りも少なく落ち着いた雰囲気で、洗練されたビルの間の、一際アプローチの植え込みも美しいビルの地下にあるライブハウス「DDD AOYAMA CROSS THEATER」に到着。
こんなハコを選ばれるのは珍しいですね。
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d0109373_024516.jpg背後のビルから3-4歳の男の子がおかあさんに先だって飛び出して来るなり、「でんしゃのおとがするー。でんしゃのおとがするー」。
おかあさん「んー?」
わたしも、え?電車?聞こえないよ?
おかあさん「ああ、笛の音ね。駅で聞こえるもんね」
ええ?ホイッスルの音してました?
宅配便の方が引く台車の音しかしませんが・・・

機関士のお話しの舞台前の、ちょっと不思議な偶然。














さすが最近は映像での露出が増えただけあって、お花がいっぱい。
ドラマ「東京センチメンタル」のスタッフからも贈られていました。面白かったから連ドラになってもいいのに。

・・・鋼太郎さん「アンフェア」出るってよ。と桐島風に驚く。いつ撮ってるんでしょ
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d0109373_0412564.jpgいつも観客ぎっしりの印象ですが、今回の劇場は狭過ぎず、椅子も個別で座面がふんわりしたもの。座席間も比較的ゆったり。
席は前方でしたが段差があまりなくて、座ったり横たわった芝居をされると見え難く、さらに舞台下の床で芝居をされるとまったく見えないのが残念でした。
この舞台下に機関車の釜のセットを設えて、「投炭作業」の芝居をするのが構成としてとても面白かったのですが、作業まったく見えず。

前楽のマチネで、少々お声が辛くなってるかたもいましたが、特に若手の方々の成長が光った舞台でした。
2作続けての市村直孝氏の作品。
シェイクスピア劇を離れて和物を選ぶ意図は、座長の「市村文学」への傾倒ということでしょうか。
戦争と老いの問題は、日本人の機微や陰翳を描きやすく、また観客へ届き易い。
今までは鋼太郎さんが出て来ただけで舞台上の密度が一変し、さらに星さんや北島さんらベテランの巧さで堪能できましたが、若手や新人との差が気になっていました。
しかし前回の市村作品で感じた若手団員の成長が、今回さらに舞台に厚みと奥行きを齎たしました。
大鉈を振り回すような古典劇や史劇より、若手の持つ表現力やセリフ力が見えやすいのかしら。
今後、古典劇に戻った時がまた楽しみです。
特によかったのが長谷川祐之さん。
06年公演の『終わりよければ~』では芝居の線の細さが気になりましたが、多くの経験で芝居の筋肉を付けてこられたようです。
齊藤慎平さんは、鋼太郎さん演じる昭一の若き日を演じていましたが、仲間の中でも後ろのほうでいつも俯いてる内気で弱気な、長じては生き方に迷う男がブレずに演じられていました。
先に走りだした仲間へ「待てよー」がよかった。「待ってよー」みたいに聞こえましたが、そっちでもよかったですかね。
押し並べて些細なセリフがよかったです。

林蘭さんは、竹を割ったような性格ではと推察されるような、澄んだ声と淀みのない芝居が好きです。
仕事のできそうなキャリアウーマンの姿勢の良さが鮮やかでした。
決断も早い。怒鳴ってもトゲがない。次女は大変ねぇ。
ただの「みかん」じゃなくて、「ハウスみかん」と言うのはなぜでしょう?
バイトを抜けて来た三女がバッグから、多分バイト先のハンバーガー出してテーブルに並べてるのに、それについて触れるセリフなしっていうのが面白い。日常の生活感を描いていました。

鋼太郎さん演じる老いた昭一は、既に痴呆症となっている設定。
冒頭から、子供時代や機関車の火夫時代が甦って夢と現の区別がつかなくなる混乱。
正気を取り戻した時の絶望感が、相変わらずの安定した巧さで舞台を引っ張りました。
「忘れちゃいけないことなのに、なぜ忘れたのかな」の嗚咽は、見る者それぞれの琴線に触れ、涙を誘いました。

涙の中にも笑いの要素も散りばめていて、
「高木ブー、今日もひとことも喋らなかったぞ」・・・これ、若いひとは分かんないでしょうね。
外国人の機関士の名前がトーマスとか。
缶焚きの訓練の過酷な日々を、投炭作業して走って下宿へ帰って朝になると慌てて起きておにぎり掴んで飛び出し走って釜の前へと、舞台上を走りまわるのを3回繰り返させ場内の笑いを誘い、長谷川志さん遂に(というか計算のように)コケて場内爆笑。

家族だけでなく、見守る人々が当然のように周辺にいた前作の時代と違って、自分たちの生活を脅かされ始めた娘たちの葛藤や、徘徊する老人に手を焼く鉄道職員との絡みで、現代の高齢者問題を表しています。
鉄道職員は運転士時代に人身事故に遭っていて、「線路に人は入らない前提になっているので罪も償えない」と苦しんでいる。
街中へ迷い出れば好奇の目があるという場面も、戦後の混沌の町を行き交う人々が衣裳を現代のそれに変えて、侮蔑の視線に変えるという演出は巧かったですが、巧すぎる故に寒気もしました。
実体験として、私の母方の祖父が徘徊することがあったためでもあるのでしょう。

脚本家の倉本聰氏も自身の経験から、親の老いについての問題を作品中に度々取り上げられています。
作家が芯となるテーマを持つのは特色となります。
しかし、同じ役者さんが演じられ、しかも年に1回しか公演のない劇団が、2度同じ問題を取り上げたのはどうしてなんでしょう。

実のところ、最後にあのようなセリフであのような演出で終わるというのは少々苦手です。
73年生まれでは決してお若くはないけれど、一種の若さをそこにのみ感じました。
でも鋼太郎さんに突き付けられて、果たして自分には答えられる言葉はあるのかぼんやりと考えながら、駅前の黒ずんだ歩道の若い人混みに押されよろけつつ歩くのでありました。

17時少し前に終演。カテコは2回で客電。
せっかくお友達に再会できるチャンスだったのに、先約のために移動。
曇りだったのに湿度が上がるわなんか集会やってて通れないわ、もー汗だくよぉもー

by august22moon | 2015-06-29 00:04 | 観劇 | Comments(0)

さい芸 『ハムレット』 5日マチネ観劇

久し振りのさい芸です。
当日は雪の予報で警戒して早目に向かいました。横浜辺りから降雪で、乗り換えの赤羽駅から与野本町に付くまでにも雪が降っていました。
埼京線も遅延なく進んで、駅舎を出た時には雨に変っていました。
d0109373_13451344.jpg舗道の灯りにシェイクスピア名言。
これ点灯してないと読み難いですね。

















d0109373_1347323.jpg学校花壇に立てられたさい芸所縁の役者さんたちの手形。
横田さんの手形も初めて拝見。
手を当ててみたかったけど、通行人がありましたゆえ断念。残念。
















『ハムレット』、しかも河合翻訳版は、03年6月の世田パブ以来。
ホレイシオとは約12年ぶりの再会。
横田さんや鋼太郎さんという役者さんに出会った、思い出の作品です。
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この12年を思わず振り返ってしまいます。

ガレリアでは「蜷川演出による7つのハムレット」写真展。
開演前に舞台上の長屋セットを写メ撮っているかたがいて呆れていたのですが、かくゆう自分もこのガレリアの写真展が撮影禁止だったのを知らず写真撮ってしまいました。すみません。
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舞台上には大きな垂れ幕に日本語と英語で、このセットはハムレット日本初演当時の家屋であること、ここで「最後の稽古を始めます」の前置き。
稽古を始めますは蜷川氏お馴染みの手法。伸びしろを残しているということでしょうか。

セットは日本ですが、衣裳は日本的なものは無くて、一見そぐわないのですが、ライティングやスモークで劇中はほぼシルエット状態。
劇中劇を雛飾りにしたり(三人官女が強烈です)、役者のセリフも歌舞伎調。
全編に渡って音楽も効果音も和楽器と、海外公演を意識した演出です。
セリフは、諳んじられるほど個人的には好みの河合版なのがとにかく良かったです。

佇まいだけで王と王妃を表現できる平さんと鳳さんが圧巻。
麻美れいさんもでしたが、声を張らないのに劇場中を満たすような鳳蘭さんの発声にうっとり。
特に、ハムレットのトを消した「ハムレッ」の声が抜群に魅力的。さすが。
カテコではさぞ優雅なんでしょうと期待したら、長身男性が満島ひかりさんが出るなりスタオベされ、まったく見えず。
平さんは良くも悪くも王様芝居で、その存在感でクローディアスを演じています。
実弟暗殺を匂わす芝居に激昂して席を立ち、大広間大混乱の場面はスローモーションで演じられました。
しかし、下手で王を観察しているホレイシオを見ていたら、あっという間に王も王妃も舞台上に居ませんでした。席立ってから出て行くの早っ。

この舞台は蜷川氏が「最後のハムレット」の気概で取り組まれ、やりたいこと全てを盛り込んだ舞台なのが明瞭です。
舞台奥の扉は開きませんでしたが。
「蜷川ハムレット」として、フォーティンブラスにも新しい味付けがされていました。
次世代の象徴として演出してきたこの役を、より厭戦的ハト派の青年としていました。
呟き声も聞きとり難いけど、面白い試み。
ポローニアスもかなりコミカルで軽妙。たかお鷹さん真骨頂。

横田さんはケント版と同じホレイシオ。同じ翻訳のためセリフもほぼ同じですが、後半の「負けるんじゃないですか?この試合」はよかったです。
負けるつもりでしょうと。
支えようと手を伸ばしても伸ばしても、すり抜けて行く盟友への深い愛情が感じられました。
12年前、ここでこんなに揺さぶられたかなと思うほど。記憶に残る声でした。

満島慎之介さんは、後半の直情的な部分がとても似合ってみえました。
舞台映えするし、もっと見てみたい。
満島ひかりさんは好きな女優さんです。TV『それでも、生きていく』『Woman』は素晴らしかったし。
CMでドレス姿を見て思わず、ああーお化粧してきれいな服着られてよかったねーなんて思ってしまったほどです。
映画でも美しさとパワフルさは画面を支える力があります。
しかし今舞台、まず気になったのがセリフの抑揚。
蜷川氏は古典劇の演出で一語一語の抑揚まで指導しているのをドキュメンタリーで見たのですが、このオフィーリアにそれは無用としたのか。
固いままのほうが、お人形さんのような深窓の令嬢らしくてよいと思われたのか。
ドラマ・映画のままの調子なので、古典劇では棒読みに近く聞こえてしまいました。
私の座席位置が上手だったため、レアティーズとの場面でオフィーリアは後ろ向き。
この背中に表情が感じられない。
お顔が見えてても受けの芝居や間に表情が乏しい。
号泣する泣き声はよかったですが。
美しい歌声も一部分だけ一瞬J-POPのように聴こえてしまいました。
でもその輝く美しさ愛らしさは溜息ものだからいいですけど・・・。
若い頃、デパートのパウダールームで雑誌モデルさんと遭遇して、同じ鏡に映りたくないーと委縮するほど美しかったのですが、そんな感じ。

藤原さんのハムレットは初めて見ましたが、似合ってますね。
お友達が、遥か遠くに立っていると表現したとおり。
独り闘って、何人も近づけない。心を開いているようで奥底は見せない。
藤原竜也という役者本来の魅力が一番活かせる役なのでしょう。
とにかく、やはり巧い。
立ち姿も動きも美しいのですが、重厚な台詞劇に負けていない。
ただ言葉を発するのではなく、背景と深度がありました。
同世代では他の追随を許さないといっても過言ではないでしょう。
人気なのも頷けます。

d0109373_15492462.jpgカテコは2回で客電点灯。
終演は17時25分頃かな?
帰りに、点灯しているハムレットのセリフを発見しましたが、劇場帰りの大勢の通行人で止まって撮ることができず、こんなピンボケ。
冷たい雨は降り続いていましたが、埼京線も無事に平常運行。

帰りは新幹線にしようと発券カウンターの列に並びはしたのですが、やはり鈍行で帰ろうと、列を離れました。
ちょうど男性がガイドポールのテープを外して、お連れの女性を招き入れようとされていたところ。
荷物が多いので躊躇されている女性の前を、すみません私のためにではないのにとお侘びしつつ通らせていただき、男性の爆笑をかうという・・・。
オバサンったら、やあねぇ

ビール飲んでひれかつ弁当食べて、満腹で帰宅。
地元は雨も上がっていて雲間に月。

進学塾の前の信号のない横断歩道で、誘導灯を持った先生が学生たちの横断を促しているところ。
お喋りに花が咲きなかなか渡ろうとしない学生たちより先に渡るという・・・。
オバサンったら、つくづくやあねぇ

by august22moon | 2015-02-07 21:38 | 観劇 | Comments(0)

蜷川幸雄演出 『太陽2068』 wowow放映

今週は仕事もプライベートも調子よく進みまして。
そんな週は速く過ぎるように感じるものですね。
でもショックなこともありまして。来月地元に万作師が来てくださるという夢のような情報を見逃していたのです。広報をちゃんとチェックしてないからーもー
万作師が地方のホールにまで来てくださるなんて滅多にないですものね。
まあ、日程的に無理でしたが・・・ああ、ショック


d0109373_23453693.jpgこうゆう舞台を見て、蒸し暑い真夏の街に出ると、また違う余韻が味わえたのでしょうね。

二層構造の世界を表すのに、もう少し意外性ある舞台美術を期待してしまいました。
でも、ジプシー・キングスの『ホテル・カリフォルニア』カバー曲というのが絶妙の選曲で、これだけでオールOKという感じです。
暗示的ですし。
疾走感ある若いふたりを走りまわらせて、後方扉を開けてその向こうの駐車場まで翔け抜ける演出も印象的でした。
それは蜷川さんお得意のラストですが、清々しい走りのおかげで、またかという感じはしませんでした。
閉塞感からの脱却を決意したとはいえ、苦難が予想される旅立ち。
振り向いて挑発的な笑みを残すのも観客に刺さっていいと思いました。
カメラワークもよかった。
ご覧になった方の感想で、『夏鑑~』と同じラストにして勘三郎丈へのオマージュか、と書かれたのも読みましたが、いろいろな感慨を生むラストではありました。

作者が若く、唐でも寺山でもないので、貧困の陰鬱さや泥臭さが薄くて、安心(笑)
キュリオの村はまるで『どん底』のようですが、あの汚泥と腐臭にまみれたような救いのない沈鬱さはありません。
そこは、全てを持っているのに絶望と紙一重の種族と違い、「24時間生きられる」種族ゆえでしょうか。
六平さんや大石継太さんの手堅い芝居で、行き詰まりの絶望感や切なさが表されました。

諸悪の根源的役どころの横田さん演じる克哉については背景がほとんど語られず、事件の経緯も不明瞭のまま。
にもかかわらず、無謀で邪悪な男の本性がしっかり表現されていて、いつしか事の顛末も納得。
いまわの際まで救い難いったら。
さすがの創造力です。

by august22moon | 2014-10-26 23:19 | 観劇 | Comments(0)

三浦大輔演出 『母に欲す』 wowow放映

13日月曜日は仕事でした。
夕方に一部在来線が運転を見合わせるとのことで、仕事が早仕舞いとなりました。
課長が見回りに来て、逆に早仕舞いのプレッシャーがかかって、ドタバタ帰り支度。

d0109373_0423411.jpgPARCO PRODUSEのステージ。
演出家、主演メンバーと気心も知れてる仲での安定した演出を感じました。
構成を分けてその都度家族の状況が変わっているのが面白かったです。

自堕落な生活を送っている兄は、母の危篤の連絡にもすぐに電話に出ず、時間のかかる夜行バスで実家に帰り葬儀にも間に合わない。
だらしない風貌で現れて、弟には責められるわけですが、この場面の池松壮亮くんが巧くて。
辛い展開を想像させましたが、
父親が葬儀から2ヶ月しか経っていないのに再婚するつもりの女性を同居させてからは、急にコメディー色が強くなりました。
兄は曖昧な態度なので、拒否する態度をしっかりとってくれと弟に言われる。
頭が上がらない兄は言われるまま従う。
ウチのお味噌汁は赤だしだって言ってとクギを指してからの夕飯の食卓の場面が可笑しかったです。
怪しい女性なのにずいぶんと控えめで兄弟に気を遣っているので、キツイ物言いが実は言い難い。
気弱な言い方の兄に向ける視線とか、悪いと思いながらなので逆に強い口調になってしまうところなんて、池松クン巧いですこと。
並んで食卓に向っているので、見えない位置の観客もいたでしょうに。勿体ない。

人気作家さんですが、こうゆう場面があると、映像のほうが・・・と思ってしまいます。
今回こうして舞台中継というかたちで残りますが、繊細な表情は観客に届き易いし。
3人同時に別の部屋で語らせるのは映像的でありながら舞台の面白さですが。

峯田和伸さんって初めて拝見したのですが、ぼんやりした気の抜けた表情が役柄に合っていました。
抜け出すことが出来ず、方法も見出せず、沈んだままの男のやるせなさが巧く表現されていました。
父親が職場の部下と言い争っているのを2階の部屋から駆け付けて、部下と父親を引き離す場面。
池松くんは先に駆けつけて父を引き離すのですが、遅れて駆けつけソファを飛び越えて部下を抑えようとするけど一瞬早く逃げられて床に不時着。
どこまでもダメねぇ・・・というところが巧く表されていました。

タイトルにしてもポスターデザインにしても、衝撃的内容を連想させますが、内容は普遍的なものでした。
本当の親孝行とはなんだったのか。
母は幸せな半生だったのか。
いつでも話せるいつでも出来ると思いながら避けて来てしまいその機会を失った後悔。
突然入りこんで来た女にしても母性を取り戻したかった。自分の子でなくてもいい誰かの子供でいいから母になりたかった。
若い作家が今現在の惑いといつか訪れる不安に、正面から向き合った作品でした。

by august22moon | 2014-10-13 21:56 | 観劇 | Comments(0)

劇団AUN第21回公演 『有馬の家のじごろう』 22日観劇

池袋シアターグリーン。
シェイクスピア作品でもギリシャ悲劇でもない、明治と昭和を舞台とした作品の上演。
しかも演出も座長ではないという貴重な公演です。
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舞台となるのが鹿児島の山間部。西南の役の前年。
語り部となるのは今(太平洋戦争当時)は酒造会社となった有馬家の新三郎。
「ご一新後」の当時には仕出し屋だった有馬亭の日々を祖父から聞いた話として伝える構造。

家のことに心を砕く長男、喧嘩ばかりで生きることに不器用な次男、天真爛漫な三男坊と有馬亭三兄弟のキャラクターがとてもよかったです。三人の役者さんも適役。
次男役の谷田歩さんが非常に印象的で素晴らしい芝居でした。
日本人離れした風貌でシェイクスピア劇には相応しく華があっても、どこか柔軟性や奥深さを感じられませんでしたが、今回は素晴らしかった。
山合いの村の男には見えない風貌とのギャップが反ってこの次男の悲劇には効果的でした。
真っ先に出奔するかのようにみえた次男が、西南戦争に志願した長男と三男の分ばかりか幼馴染みの藤太の家のぶんまで背負い、過酷な畑仕事を黙々とこなす。
野良仕事帰りの度に、どんどん疲弊してゆく変化の演出もよかった。
そんな日々の甲斐もなく老いてボケ始めた父に忘れられて、耐えるしかない切なさが見事でした。
敗戦で引き上げてくる兵たちの列に兄弟を探す必死の表情。
自分を責めて悔いる姿には胸を突かれました。
ですから、父親がようやく次男の名前を呼んだ時に観客は、伸次よかったねぇ報われたねぇとなっちゃうわけです。

鋼太郎さんの巧さは言わずもがなで。
豪快でどこか飄々と生きている男を硬軟自在に演じました。
登場からして鋼太郎さんらしい。最後まで舞台上は登場の名残が舞い踊っていました。
長男との別れの杯をかわす場面も、「もうちょっと。もうちょっと入れて」とアドリブ。
長男役の長谷川さん笑っちゃってました。
この一族、酒造りも営んでいるとはいえお酒ばっかり飲んでいるんですが、徳利には酒代わりの水が入っているので、あちこちで溢す。三男はお酒弱いのに無理に飲んで口から出す。わざとじゃないかというほど杯に注ぎ過ぎて溢す(これは主に鋼太郎さん)。五合徳利を倒してジャバジャバこぼれて客席「あ~あ」(これも鋼太郎さん)。
で、誰かがどこかでいつも床拭いてるというのも妙にリアルで可笑しかったです。

ご一新後の動静の見えない不安に駆られる姿は、藤村の『夜明け前』に描かれた山間の宿場の戸惑いを思い起こさせました。
老いていく姿もまた悲哀の中に滑稽さを残し、残酷に傾斜するのを留めているのが涙を誘いました。
客席のあちこちでハナを啜る音しちゃってましたもの。
帰郷した藤太との再会の場面も秀逸でした。
無事を喜んで肩を掴みそこに異状を知り、ゆっくりマントを脱がせ、腕の無い軍服の袖を掴んで振って愕然とする場面の芝居は凄いの一言です。

今回は出番が少なく残念だった林蘭さんですが、ラストのセリフはやはり素晴らしかったです。
その真っ直ぐな淀みなく生命力に溢れた声は、新三郎を支える言霊となる強さがありました。

予備知識なく観劇しましたが、
終戦記念日を知らない若者が増えるなど昨今問われている戦争への無関心さに対し、喚起する作品を選択したのは意義のあることだと感じました。

まどろっこしくも詩的な修飾語も、王位継承問題も、国盗り合戦も、恋のさや当ても無い。
つい近年の市井の人々が、激動の時代の中、いかに戦い、いかに失い、いかに地を這うように生きたかを、しなやかに細やかに届けられて、改めてAUNという劇団の力量を見せつけられました。



開演は6分ほどの遅れ。
これはまあ演劇としては珍しくもないことなんですが、上演時間3時間越えと知って最終の新幹線には完全に間に合わないとちょっと愕然、だったのです。
23時10分発の臨時快速列車というのがあるのですがこれが当日の18時30分時点で空席なし。
それ以降に発車の下りは最寄駅より数駅手前が終点。もしそれに乗れたら車で終着駅まで自宅から1時間の道程を迎えに来てもらうことになりました。
翌日用事があるので野宿は避けたいので。
結局当日はカテコ2回で22時13分頃終演。池袋駅まで走ってホーム到着が22分。19分発が遅れて入線。
着時間表示によると完全に新幹線の発車時刻22時47分に東京駅着。ところがなんと実際に東京駅に到着したのが22時45分。走ったら間に合うかも?ととりあえずダッシュ。
しかし問題は切符を持ってないこと。券売機で買っていたら間に合わない。
ダメならすぐに東海道線のホームへ走って52分発に乗ろうと、改札にいる駅員さんへ「三島行きの切符は車内で買えますかー」と突進(笑)
仮発行証みたいな紙片に押印して通してくださったんです。助かったー。
エスカレーターの下では別の駅員さんが「ホームこちらでーす」。発車のベルが鳴る中をエスカレーターを(多分そうは見えなかったでしょうが)駆け上がり、ベルが鳴り止んだ瞬間、飛び乗ったのでありました。
直ぐに乗務員室へ移動し最寄駅までの代金を支払い領収書を発行して頂き、乗れたーと歓喜のメール。
上演を重ねると自然に短縮されるとはいえ、まさか間に合うとは。
舞台とは無関係。メモ代わりのお話しですが、
素晴らしい舞台を見せて下さったうえに最終にも間に合わせてくれたような気になるAUNさんに感謝したくなっちゃったのでありました。

by august22moon | 2014-08-24 19:15 | 観劇 | Comments(0)

新国立劇場 『アルトナの幽閉者』 5日マチネ観劇

d0109373_1112329.jpg久し振りの観劇で、新国立も本当に久し振りです。

新宿駅乗り換え闘争(笑)に負けそうになりましたが、なんとか到着いたしました。



















朝から雨でしたが、劇場は駅と直結だしと折りたたみ傘を仕舞ってしまったのですが、入り口までの通路に屋根が無かったのを忘れてました。
屋根はあれどもその下は池って・・・国立ぅ(怒)
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初サルトルです。
サルトルが、フランスのアルジェリアに於ける残虐行為批判を、ドイツ・アルトナ地区に住む一家を舞台に、その家族間の軋轢に置き換え戯曲に表現した59年の作品。
実存主義も解ったような解らないようなのまま挑みました。
長男フランツが13年間自室に引き籠ったままのなですが、芝居が進むと一家自体「幽閉者たち」であることが分かります。
フランツは、反ナチ派でありながら中尉として従軍することでドイツ帝国の崩壊に加担する道を選びながらも、繊細さゆえに祖国と時代の波から逃れられなかったようでもありました。
戦時下に於ける捕虜(パルチザン)拷問という犯罪に苦しんでいるわけですが、ただひたすら敗戦国ドイツの没落を未来に向けて紡ぎ続け、自らの罪を正当化しようとしている。
フランツは造船業で財をなした父の擁護の下にあり、尚更に自身の無力感に苛まれる。
しかし、本当に現代ドイツの復興に気付いていないのかは判然とさせず、
フランツはただ狂気に逃げ、罰せられる時を待っているようでもあります。
しかも、父親と共に。
部屋を出ないという行為がアルジェリアからの仏軍帰還兵の沈黙を表しているのか。
しかし部屋の中でのフランツは言葉で溢れています。
この洪水のようにあふれ出る暗喩と直喩と擬人話法の言葉は、時に狂人の妄想のようでもあり、千の言葉を尽くしても補えない情動によるようにも感じました。

妹のレニは、弟にその時が来るのを知りながら世話することで自らの城を築いて守ろうとし続ける。
弟ヴェルナーは一族の長である父を畏怖しているように見えて、最後まさに一族の正当な後継者となり、不敵な笑みで遺品となる指輪を嵌めるという結構な曲者。
元・女優という妻のヨハンナは、ヴェルナーによって「救われた」という過去を持っています。
フランツが勲章をつけた写真を見て「12の功績、12の失敗」と言うところからユダヤ系なのかと推察しましたが、アフタートークで演じる美波さんがそこを指摘していました。
しかし、ヴェルナーがこのヨハンナに惹かれているのは単に美しいだけとは思われず、兄に嫉妬しながらもその嫉妬が尚更に妻への執着になるというのも、なにか利用価値があるとしか考えていないように見えました。

主演の岡本さんは膨大なセリフのある役柄に、カテコではさぞ抜け殻のようになるかと思いきや、案外ケロリと清々しい表情でした。
アフタートークで演出家から自分の感情を乗せ過ぎないよう指示があったとありましたが、それ故でしょうか。
憑依的に隙間なく演じることを避けたことで、問題提起と推測の余地も生まれました。
錯乱はしていても分裂しているわけではないから。
これも比喩のうちなんでしょうが、蟹のたとえというのはサルトル自身の体験らしいですが、無脊椎ということも意味があるのかな?三島が恐怖したように。

レニを演じた吉本さんはあれが地声?
意識的なら、4人の声の違いが明確で面白い効果になっていました。


実は、アフタートークがあることを知らずにこの日を取りました。
岡本さん、美波さん、演出の上村氏、芸術監督の宮田氏の4人のお話しはたいへん興味深かったです。
前述のユダヤ人ではないかという解釈、なぜ夫から離れようとしないのかも含め、美波さんの役への掘り下げ方の深さなど感心させられました。
「サルトルのセリフが言えるだけで嬉しい」とオファーを受けたそうです。
フランスの血がそう思わせるだけではないでしょう。

演出家の上村氏は34歳という若手。
専攻とは違うフランス演劇やドイツ演劇も学んでいたとか。
ゼミの先生からサルトルを薦められたそうですが、岡本さんも10代の頃読んでいたそうです。
驚く皆に向けて、「10代の頃ってニーチェとか読みたくなる時期じゃないですか」・・・ですって(笑)
理解できたとは思わないがという注釈つきで。そうゆうのなんか解りますね。
「サルトルが観ていても恥ずかしくないように」という姿勢で。
父と子の物語であるところには、「横田くんの財閥の御曹司である友人が、最後に父親と対話ができたのは羨ましいと話していた」そうで、最後はそれぞれの魂も救われるんですね。
岡本さん、「羨ましい」と言うところ「うらまやしい」と言い間違え、言い直そうとしても出て来ず(笑)
ひとを羨んだことなんてないのかも・・・なんて(笑)
また、「自分は演出家に身を委ねるタイプなので、まずお会いして話をしたいと」お願いしたそうです。

今回は新訳で企画されたので、稽古中のディスカッションは盛んに行われたそう。
過日のトーク企画でもお話しされている、岩切氏の「翻訳は、ひとが着るとその繊維の空洞の中に熱や風が通るカシミヤのように」。
サルトルの戯曲はト書きが小まめに入っているが囚われ過ぎないように。
劇中出てくる鏡だけは原作に指定がなく、オリジナルな発想。
セットはシンプルなほうですが、背後の湾曲した壁は「金かけ過ぎって言われた」そうで、「アールを付けるのは難しい作業」なのだそうです。

上村さんの語り口がたいへん面白く、口跡明瞭。もっとお話しが聞いてみたくなりました。
客席からの質問は、前述のキャスティングの理由。これはすんなり決まったとか。
上演回数の少ないサルトル作品であることを前置きされた方には、日生劇場ですねと、補足やお答えが立て板に水。
既刊戯曲本の翻訳についての意見も求められるという質問にも、苦笑交じりながら淀みないお答えぶりが好感、でした。

戦争責任という主題はいつの時代に上演されても、近似性や普遍性が問えるというのも悲しいことです。
しかし、これがナチの断罪ともなると語り尽くされたテーマです。
サルトルが込めたアルジェリア戦争問題となると尚更に遠いのですが、
今もなおフランスに深い傷跡を残す負の歴史は、日本もまた抱えているという点に於いて意義はある体験でした。
上村氏が今作を取り上げた一因として、死に対する視線があることをお話しされてましたが、父と子の問題として、共に断罪されるのもまた救済であるとした覚悟は、長く響いて心に残りました。


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翌朝は晴れて、久し振りに真っ白な富士山が見られました。
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あ、鳥
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雪が深そうですね。

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by august22moon | 2014-03-06 22:14 | 観劇 | Comments(0)


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