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ケヴィン・マクドナルド監督作『運命を分けたザイル』wowow放映

d0109373_1275532.jpg英国アカデミー賞作品賞を獲得した03年のイギリス映画。
何気なく見始めて引き込まれた作品です。

85年にアンデス山脈のシウラ・グランデ峰西壁を下山中にひとりが滑落し生還した事故を、本人たちのインタビューと再現映像で構成しているのですが、この再現ドラマが実に見事でした。ロケ現場も含め、事実にかなり忠実ではないかと思われます。
アックスとアイゼンだけで垂直の氷壁を下る。
突然頭上から崩れ落ちてくる氷塊や雪庇。
天候は荒れ、気温は零下20度。
厳しい場所だからこそ挑戦し甲斐もあるので、無謀と言うこともできないでしょうが。
事故が起こる前の登りからもう既に緊張の連続。
製作者側が彼らの名誉と悲劇に真摯に向かい合って共に戦ったのが伝わりました。

再現映像に登場する、サイモンとジョー、そしてリチャードの三人を演じる俳優さんたちは顔立ちがまったく似ていないので、本人たちが映るたびに、想像の切り替えが必要なほど。
それほど、再現に留まらない迫力がありました。

事故に遭ったジョー・シモンズ氏とベースキャンプの留守番役に雇われたリチャード・ホーキング氏は、その瞳にまだ少年のあどけなさを残した穏やかな顔立ち。
ホーキング氏は世界中を旅して周り、危険な目にも何度も遭っていた人物には見えないほど。
「彼らのファーストネームしか知らなかった」と温かい笑顔で語るので、出会って日が浅くても信頼して留守を託したサイモンとジョーの気持ちも分かるようでした。

エンディングで、帰国後サイモン・イェーツ氏が、滑落し重症を負ったシモンズ氏とを繋いでいたロープをやむなく切った判断について、ずいぶんと責められたことが記されます。
作中のインタビューで、イエーツ氏が硬い表情のままだった理由は、そこにもあったわけです。
その瞬間、いかに他の方法がなかったか。
どれほど切らなければ自分も滑落してしまう切羽詰まった状況であったか。
最も重要な瞬間は、非常に説得力のある映像でした。
決断の後、まるで亡霊のように、ジョーが落ちたクレバスを迂回して進む姿には、辛さが伝わってきます。

シモンズ氏は、ベースキャンプに辿り着いた時に先ず、サイモンの名を呼んだんですね。
「ヘルプ」ではなく。
それは、一刻も早く、サイモンを自責の念から解放したかったからと感じました。
そして、駆け寄ったサイモンに第一声、判断は間違っていないと擁護したのには、見るものにとっては救いになりました。

本人たちが映っているのですから、結果は最初から分かっているのですが、それでもシモンズ氏の生還劇には、固唾をのんで見守ってしまいました。




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by august22moon | 2017-09-03 23:00 | 映画 | Comments(0)

ロン・ハワード監督作『EIGHT DAYS A WEEK』wowow放映

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快晴の青空の下でタラップに立つ4人の姿も、サブタイトルの「The touring years」に合っていますが、作品を見終わってみると、日本版ポスターの浅井慎平氏の写真のほうが相応しいと思えます。

多くは以前に見た映像でしたが、それでもこの鮮明さは無かったので、こんなにきれいな映像が見られる日が来たことに、ただただ驚きです。

未見の映像では、ジョンの「キリストよりポピュラー」発言の謝罪の動画。
観客席の人種差別に抗議した発言の動画。
これらは文字情報でしか知らなかったので。

今作はいかにビートルズが生まれ、いかに分裂していったかを探るのではなく、いったいあの熱狂はなんだったのかを探っていくものなので、彼らの亀裂の欠片も感じません。
アップルビル屋上のライブの後も、ジョンの「オーディションに受かったかな?」や、ポールの「ありがとう、モー(モーリーン・コックス)」は入っておらず、ただ楽しそうな笑顔が印象的なラストになっています。
私が初めてこの映像を見た時は、4人の表情は醒めてしまっているように見えた記憶があります。

一気に世界中を熱狂させた4人は、当初はさすがに戸惑いながらも、大観衆に応えている姿は愛らしくもあります。
中には歌を聞いて口づさむファンもいたでしょうが、映像ではいつも絶叫し続け歌など聞いていない女の子たちばかりを映します。
せっかくのライブなのにステージを見ずに叫んで泣いているコまでいるのは、不思議な光景です。
なにが彼女たちをそうさせるのか。
しかし、よくよく見ると、スタジアム中央に設えられたステージ周辺がやけにシンプル。
当時はスタジアムライブ用のPA設備などなかったわけです。
後に大型スピーカーも用意されたそうですが・・・たいして聴こえてなかったわけですね。
イヤモニも無く、メンバー自身にも聴こえていなかったので、共演バンドに、自分たちの演奏はどうだったか尋ねていたというのは初めて知ったので驚きでした。
当時の技術では仕方なかったとはいえ、技術が追い付かないことを決行してしまうスタッフ側の度胸もすごいものですね。
B・エプスタイン、恐るべし。


リチャード・レスター監督作 『ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』

d0109373_23351963.jpgで、『A Hard Day’s Night』です。
ほんとは『HELP』のほうが見たかったんですけど。
広川太一郎さんがジョンの吹き替えをしていて、例によってアドリブ満載で、ジョンはそんなにめちゃくちゃに喋らんぞーと楽しいのです。

これは、まあ、アイドル映画なんで、ストーリーがあるようでない。
脈絡なく唐突に歌いだして見ていて恥ずかしくなっちゃうよくある作品です。
今作も以前見たことがあるのですが、もちろん画質はもっと粗くて。こちらもこんなに鮮明に見られることに驚くばかりでございました。

冒頭、ジョージが思いっきりコケるとこ。で、それにリンゴが巻き込まれるとこ。
ポールがソツなく芝居できちゃうとこ。
なんかが印象に残っていました。

リンゴが一番、雰囲気を持っていて、侘しく河原を歩く姿には、その後の活躍も納得です。



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by august22moon | 2017-07-27 23:00 | 映画 | Comments(0)

ジョエル・エドガートン監督作 『ザ・ギフト』wowow放映

d0109373_20215465.jpgこれは秀作。
あらすじを読む限りはありふれたストーカースリラーですが、少しづつ違いが出てきて、先の読めない展開に進んでいき、結末の意外性も唸らせるものがありました。

なんといっても、ゴードン役エドガートンが巧い。
サイモンには怪しい男に見せて不安をかきたて、妻のロビンには「いいひと」に見せる。
受け手側の解釈によって印象が変わる、微妙な人格を見事に表現していました。

観客にも、子供の頃から変わらぬ内向的な人物と思わせて惑わせておいて。全て、計算づく。
エレベーターまで追ってきたサイモンに、閉まりかけだドアの間から冷笑するゴードンの表情に戦慄。

徐々に夫サイモンの実態が見えてくるのは、ストーカーよりも恐怖。
この暴き加減も巧い伏線になっていました。
お品なかったもの、サイモン。

最後の「ギフト」が明かされると、改めてサイモンの目がはっきり見えるアップになるので、赤ちゃんの瞳の色はどうなんだー青なのか茶色なのかーと画面に引き込まれちゃう次第。
疑惑の後味も含めたいへん面白かったです。
これこそ、「イヤミス」。


それにしても。壁一面窓の家って、陽光たっぷり入って庭木も見えて開放的ですけれど、プライバシー丸見えなうえに、居留守使えなくて困りものですね。




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by august22moon | 2017-06-21 23:00 | 映画 | Comments(0)

黒沢清監督作 『岸辺の旅』 wowow放映

d0109373_1947131.jpg 日本版ポスターはなんだか河瀬直美監督作のよう。














海外版のほうが黒沢清作品っぽいと思いました。
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『首長竜~』もホラー作品に変貌させた監督ですから、部屋の仄暗さからもうそこはかとなくホラー感。背後の空間が怖いー
子供やお坊さんが優介の異質なものを感じ取って見つめる場面。島影が消滅して一夜にして廃屋に戻った家。星谷が消滅する際に流れてくる靄などは、いかにも黒沢監督らしい怪しげな描写。

カンヌで「ある視点」部門監督賞を受賞した作品ですから期待していましたが・・・
先ず気になったのが、BGM。
酔った島影を優介が背負っている場面だったか、シンフォニーが流れる。
優介がぼんやりと月を眺めている場面には似つかわしかったのですが。
妻・瑞希が打ち明け話をする時は、長閑な山田洋次作品のような曲。
場面とちぐはぐな気がしました。

会いに行かなければという優介のよく分からない使命感で、亡くなってからの3年間に出会った人たちを訪ねる旅に、瑞希もついて行くんですが。
死んだことに納得せず彷徨っている魂を慰めるためなのか。なぜ行かなくてはならないのか。
優介という男をどう捉えたらいいのかモヤモヤ。
もう少し生気の無い雰囲気があればスッキリしたのかなぁ
訪ねて行く先の人たちは、奇妙なほど優介を歓待する。何がそんなに愛され惹かれたのか、里山では私塾まで開いて村中のひとがいそいそと集まって来る。
死者というより天使なのか?
同類の死者たちが歓迎するのはともかく。村人も中華料理店の夫婦も生者。妻のほうに亡くなった妹への悔恨が在るんですが、でもそれは誰にでもあることじゃないですか。
ピアノ絡みということで、妻も亡くなった少女の霊を鎮めることができたりするんで、妻としては夫の成し遂げたいことが理解できてくるってとこなのかな
会いに行ったのに、この夫婦に対して優介は店の手伝いをするだけで何もしていない。
何しに行ったんだろ

優介を巡る非現実と、深津さん演じる妻の生々しさがアンバランスに見えました。
これが、男女間の「深くて長い川」ってもんなんでしょうか

生きているひととまったく同じに接することができる夫が目の前にいたら、なぜ自殺したのか納得いかない妻としては、このまま元の生活が取り戻せるのではと期待するのは当然。
浮気相手のところへ行き、(死んでいようが)自分のところへ戻って来たことを言ってやりたい心情も分かる。
彼女にとってはもう、なぜ死んだのかよりも重要。
この妻の情念を、深津絵里さんはさすがの巧さで演じています。
亡父相手に話す時は、当時に戻ったようにちょっと幼くした喋り方も巧い。

星谷家では、生気のない薫のほうが彷徨える死者なのかと思いましたわ。
奥貫薫さんは好きな女優さんで。
きっと瑞希と同じ葛藤に苦しんでいたと思わせる表情がとても印象的でした。

私ったら、アップになるまで蒼井優さんだと気付かなかったんですのよ。
髪型のせいかなぁ。


ふと、だいぶ前にTVのスペシャルドラマで『降霊』を見たことを思いだしました。
前半はホラー描写満載なんですが、後半のサスペンス劇がたいへん面白かったんです。
夫が、妻の嘘を終わらせるために尋ねてみせる。何持ってる?
そして部屋の隅に移動する夫。隣の部屋で蹲る風吹ジュンさんの様子を見に行く刑事とくさなぎさん。カメラは誰もいない部屋を映し続ける。
で、くさなぎさんがあの慈しみ深い声で言うんです。
オンナノコノモノデスネ
誰もいない部屋にその声だけが聞こえる。
つまりこの声は、判決であり宣告であるわけですね。
ホラーな描写を凌駕して、そこが一番ゾッとさせましたっけ。

今作では、蒼井優さん演じる女が、浮気相手の妻である瑞希に平然と自分も結婚していて妊娠したので退職することを告げる場面が、一番ゾッとしました。




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by august22moon | 2017-05-31 23:00 | 映画 | Comments(0)

ジョン・ウェルズ監督作 『二ツ星の料理人』

d0109373_22322763.jpgエキサイティングな厨房の外のことはさらりと描いて、スマートな仕上がり。

B・クーパー演じるアダムは、その傲慢さからパリでの仕事を追われているようなんですが、そこで何があったのかは登場人物の口から語られるだけで、しかも彼らの知る部分だけなので、劇中エレーヌが視聴者(観客)代表のように「パリでいったい何があったの?」と尋ねても、抽象的な反省の弁だけ。
恋人だったアンヌマリーや友人トニーとの関係も、会話から想像するしかない。
でも、パリで成功したシェフが、牡蠣の殻向きをしているというだけである程度の想像はできるし。
彼らの父親のことも説明が極力少ないのですが、トニーが満席になった店内で満足気に「父さん」と虚空に独り言つだけで、それは充分な気もしました。
荒れまくるアダムを人前では黙って決して諫めないし、アダムとの距離を一定に保とうとしているトニーという人物の描き方は絶妙。
ダニエル・ブリュームとてもよかった。

見るたびお顔の違うシエナ・ミラーも、調理中の視線の動かし方がリアル。
B・クーパーのアダムにしてもあんなシェフ居そう。料理家は芸術家だから、外見はスマートでも裏では厳しいでしょうね。
劇中の設定では、まだチームとして成り立つ過程のもどかしさがあったわけですが。
あんな大声で怒鳴りまくったら絶対フロアに聞こえてるって!

あの喧噪も無かったかのように新品同然に磨き上げられた厨房の美しいこと。
この清掃がまたいかに重労働であるかがきちんと描かれていました。
無論、それほど清潔な場所にするのは当然なんですけど。
いや~タイヘン。毎日大掃除なんだわ。

アダムの借金返済を迫ってたびたび訪れる怪しげな人物たちに遂には暴力振るわれちゃうんですが、それまでは裏口に現れるだけで店内にまでは侵入しないという、やたら紳士的なのが妙っちゃ妙。
過去の過ちから逃れきれないという足枷は、新しい店の成功を邪魔することにもならず。
問題はアダム自身にあるわけですから、そこ必要だったかなぁ

孤高のシェフがチームワークに目覚めて無事目標達成というハッピーエンディング。
エンディングの皆でまかないを楽しんでいる場面でも、アダムの笑顔を正面からではなく、斜め後ろから僅かに捉えるというのも、登場人物の背景を詳細に見せずに展開する今作らしい。

ミシュランスタッフって、ほんとにあの通りなのかしら。
今度こそ噂どおりなのがキターーって店中が一気に緊迫するところは面白かったです。
それがまた勘違いだったというのもね、ありそう。

スカウトされたデヴィッドが恋人にミシュランで星を獲得することの凄さを「一ツ星はいわばルーク。二ツ星は・・・アレック・ギネス。三ツ星はヨーダ」と説明すると、「ダースベイダーかもよ」とまぜっかえす彼女。
無理やり転がり込んで来たアダムをジェダイに例えないところが傑作。

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by august22moon | 2017-05-30 23:00 | 映画 | Comments(0)

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督作 『メッセージ』

d0109373_20215831.jpg『ブレードランナー』最新作も控えて、ここ数年注目監督の作品を初体験です。
アカデミー賞作品賞・監督賞にノミネートされただけあって、心に染み入る「メッセージ」を持った作品でした。

地球外生命体の乗りものの形状が話題ですが、どんなにフォルムが変わっても、やはりどうしてもあのモノリスは連想させてしまいます。宙に浮いてると尚更に。

ストーリーを文字に起こすと、ありがちな宇宙人との遭遇譚なんですが、煽ることもせず静々と進んでいくし、また主演のエイミー・アダムスの丁寧な演技が、現実味を増幅させました。

最初のうちは、エイミー・アダムス演じるルイーズは、過去の思い出に囚われているのかと思っていました。
過去の悲劇が、彼女の翳りとなっているのだと。
でもそのフラッシュバックが未来の姿だったとは、驚きというより絶望的。
そんな結末なら教えてくれなくてもいいのに。
乙姫さまがなぜ玉手箱を贈ったのかと同じくらい疑問。

異星人たちの語る「3000年後」に何が起こるのか。
3000年も先のことをなぜ知らせに来たのか。
いや待て、それは、地球時間なの?
まるで神の時計じゃないの

なぜルイーズに未来を見せたのか
他の11ヶ所には同じフラッシュバックが起こったひとがいたのかな
ルイーズだけが選ばれたのか

彼女が翻訳し理解し自覚した「武器」は「言葉」。
その言葉で、国も動かせた。

行く先に、栄光も幸福も絶望も、どこにあるのか分かってしまっている。
でも、未来が分かっていれば、その一瞬を大切に生きられる。
「ノンゼロサムゲーム」
選択し、未来に身を委ねた、エイミー・アダムスの表情が素晴らしかった。

静かな語り口で、さまざまに考えさせてくれる。
いい時間でした。



映画
by august22moon | 2017-05-27 23:00 | 映画 | Comments(0)

ポール・キング監督作 『パディントン』wowow放映

d0109373_0403937.jpgだいぶ前に放映されていましたが、吹替版で見ました。
ベン・ウィショーの声で全編みたかったのですが、思いのほかボイスキャストの松坂桃李さんの決して可愛らしい高めの声ではないところを、ウイスパー気味に話すのがとてもよかったです。
可愛いくまさんだけれど、野生は失っていないクマであるところが表れているようでした。

「お願いお願いお願い」なんてね。特に。

シェイクスピア劇では古典劇特有の重厚なセリフにも負けることない芯のある芝居をされて。
狂気の犯罪者役でのシャープな演技から、コメディーでは共演者のアドリブにも役柄揺らぐことなく受けて立って。
多彩なかたですね


サリー・ホーキンスはいつもああゆう風貌でやっちゃうんですねぇ
もう少しおおらかなマダムっぽさがあってもいいと思ったんですが。

お部屋それぞれカラフルで楽しい。キッチンはイエローだわやっぱり
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映画
by august22moon | 2017-04-27 23:00 | 映画 | Comments(0)

モルテン・ティルドゥム監督作 『パッセンジャー』

d0109373_0552491.jpg見ようと予定していた映画が、映画館へ着いたら上映時間が変っていて、仕方なく隣町の別の映画館へ移動して、ちょうどいい時間にやっていたのでこちらを見ることにしちゃったのでした。
ジェニファー・ローレンスですしね。予告編も迫力映像が面白そうでした。

しかし、これは、一種のラブストーリーですね。設定が宇宙空間というだけで。
無人島と違って生活に困ることはないようで。移民地へ着くまでの120年間人工冬眠で移動する設定ですが、移動の間どれくらい起きて生活することになっているのか、個室もあるし、娯楽は充実しているし、水や食糧の心配もないもよう。
別々の部屋に分かれているのでしょうが、5000人居る雰囲気はありませんで。
面白いのは、乗客がランク分けされていること。部屋の大きさから食べられる食事の内容まで制限がかかっている。いわばロウワーデッキの乗客ジムは味気ない固形食だしカプチーノも飲めない。

正直なところ、やれやれな終わり方。
それでもクリス・プラットがなかなか良くてですねぇそれだけがこの作品の収穫でしょうか。
『マネーボール』のハッテバーグ選手役で見せたのと同じ、不安や怯えの表情がとても印象的。
体格を活かした役が多いようですが、この表情をもっと活かしたほうがいいのでは。
もちろん、宇宙船が故障してのふたりの大奮闘は見応えがありました。
オーロラがプールで泳いでいる最中に、重力装置が故障した時は、この大量の水は無重力でどうなるんだーわーやっぱりこうなっちゃうのかーとびっくりな映像でした。

孤独に勝てずに睡眠装置を壊して、オーロラ嬢をお供にしようと目覚めさせてしまい、一気に生活にも潤いが出て、宇宙船生活をエンジョイなんですが、起こしてしまうことはつまりは彼女の人生を狂わせてしてしまうことなわけですから、楽しみながらもふと罪の意識に苛まれる表情は響くものがありました。
ちょっとシャイなとこがあるようで、プールで泳ぐ彼女にちょっと恥らんで手を振るとこなんてカワユスです。
事実を知ったオーロラさん、ジムの寝込みを襲って殴る(いいパンチ入りました)蹴る(・・・蹴りも入りました!)。ついには‘バールのようなもの’を振り上げるのですが、ジェニファー・ローレンスならそれくらい爆発しそうです。
ジム君、罪の意識から無抵抗。

ジムがイチジクの木を植えておいたのをオーロラは微笑むんですが、それってどうなんでしょ。
ふたりきりなんだと突き付けるようで、ちょっと、ぞっ。
最後は、人工冬眠装置を修理できそうなクルーを起こすこともせず、ふたりきりで生きる決意をしたようで、美しい宇宙空間の景色をうっとり眺めるんですが、この先50~60年?ふたりっきりなんですよ?逃げ場も無く。話し相手は肝心なとこで余計なこと喋っちゃうアンドロイドのブレア首相だけですよ?暗澹。

ラストの120年後の場面では、たとえばジムの手造りの指輪をした老いさらばえた指が目覚めて動くとか、子供が生まれていてポッドに入っていて命を継承する、なんて結末でもよかったかなと、思いました。




映画
by august22moon | 2017-03-26 23:00 | 映画 | Comments(0)

デミアン・チャゼル監督作 『ラ・ラ・ランド』

d0109373_22452796.jpg音が・・・
でけい
映画館の音響の具合なのか、GAGAのロゴ映像の音からもう爆音で。
本編の音楽だけでなく、クラクションやオーブンのアラームまで爆音で、おばさん、びっくり

公開から少し日が経ったのでもう落ち着いているだろうと思っておりましたら、まだまだ結構な人気で、かなり盛況でした。
ハレの舞台ですっきりしない事態になってしまったのが不運でしたが、評判どおり楽しい作品でした。
帰り道で、スカートひらひらさせて歩いちゃいそうでしたわ
どれも印象的で所謂キャッチーな音楽なので、ストーリーの単純さも気にならなくなります。
夢を追う若者が、挫折や別れを体験して最終的にはそれぞれの道を諦めずに進んでいたわけですが、そうゆう夢物語で終わってもいいかなと思わせておいての結末の描き方は、演じる俳優さんたちの力量をきっちり見せて、単なる楽しいダンス映画に終わらせずによかった。
エマ・ストーンも圧倒的な旬の輝きがあるけれど、ライアン・ゴズリング演じるセブの切なさが印象に残りました。
誰へと悟られぬような「wellcome to Seb's」。
彼女だけに向けた出会いの日の曲。泣けますねぇ
スターになったというのは分かっているわけだし、結婚したことだって知るだろうから、それでも待っていたのかなと思わせる切なさが見えました。
それに、セブのカウントに被せるようにエンディングというのも、追わないし振り向かないふたりの隠した涙を想像させました。

なんだかやたらとプリウスが目立ってて、それもちょっとジョークに使われたりして面白い。
カフェのレジでバイトしてルームシェアもしている若い女性がなんでプリウス乗れるのかって疑問もありますけどね。
ロスではお手頃価格なのかしら

名作ミュージカルへオマージュを捧げたカットが多いそうで、ミュージカルに疎い私でも、「あ、これは」と気付く場面がいくつもありました。
おかげでさすがにきっちり絵が決まる。
でも、それを差し引いても、ビビッドでパワフルでビター&スイートな秀作でした。




映画
by august22moon | 2017-03-19 23:00 | 映画 | Comments(0)

ロバート・ゼメキス監督作 『マリアンヌ』

d0109373_20141852.jpg初日の『LA・LA・LAND』が賑やかなことになっていたので、もうだいぶ落ち着いているであろう今作をようやく見ました。
新しい上司が無類の映画好きで、2週間も前に見ていて、焦っていたのです。
仕事帰りにちょうどいい上映時間の作品もなく、あっても仕事でバテて気力がなかったり。
久し振りのせいか、発券機でお金の投入口探してモタモタしちゃった

マリオン・コティヤールファンというその上司によれば、「泣ける」との話でありましたが・・・

オザケン氏が20年ぶりに歌番組に出演しハルキ・ムラカミ氏の新刊が出た夜に見に行ってきました。
R・ゼメキス作品をスクリーンで見るのは『フライト』以来。
マリオン・コティヤールのクラシカルな美しさが充分活かされたストーリーでした。
最近のフランス女優にはない整った美貌ですからね。
ブラッド・ピットのほうもクラシックな美貌を必要とされる役柄ですが、沈着冷静な表情や洗練された仕草などでそれを現してはいました。
顔立ちがねぇ そうではないから、こちらの想像力も必要とします。

パーティーの途中に起こる空襲の映像が印象的でした。
突然夜空一面に広がるサーチライトや対空砲火の光りは、ゾッとさせました。
迫って来る墜落機よりも。

疑惑が持ち上がってから、観客も夫・マックス同様に、マリアンヌの一挙手一投足に表情に注目するわけですが、M・コティヤールがあの大きな瞳で華やかな表情で演じた表情は、ラストに向けて惹きつけて離さない力がありました。
いつ気が付いたのか、スパイだけに隠すことも巧みなわけで、いろいろと推察してしまいました。

鏡に映る姿やカーテンを開けて無防備になる姿が、常に緊張状態を強いられる“哀しきスパイ”を表されていますが、ちょっと多用しすぎな感がありました。

逃走用の飛行機の、一向に掛からないエンジン音だけが聞こえる車内。
生と死を分けるその音だけしかマリアンヌの耳には入らなかったということなんでしょうね。
そこは緊張感と切なさがありました。

パーティーシーンでも流れた『シングシングシング』がエンドロールでも流れるんですが、手拍子しそうになっちゃった。最近、何度目かの再放映を見たばかりだったので。
スイングする者とスイングしない者だ、なんちて

成長した娘アナの写真が映りますが、『トゥモローランド』のアテナ役のコに見えた1枚がありましたけど・・・違うかな




映画
by august22moon | 2017-02-25 23:00 | 映画 | Comments(0)