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吉田恵輔監督作 『ヒメアノ~ル』

d0109373_21173387.jpgさすがにJ系さん主演とあって、場内盛況。

アイドルスマイルを振りまくタイプの方ではないので、クセのある役でも頑張ってる感じがない。
それは何度か出演した大河ドラマでも感じたことですが。
この方もう37歳なんですね。びっくり。小柄なこともあるし動きの軽快さ俊敏さはやはりダンスの賜物なんでしょうか。20代設定も違和感がない。
舞台でも評価されているだけあって表現力は確かで、シリアルキラーの異様さは隙なく表せていたんじゃないでしょうか。
犯行を直接的に見せず想像させるのもひとつの演出手法ではありますが、容赦ない暴力と異常性を直接見せて生易しい映像にさせなかったのは見事。

演出構成がユニークで、前半は「森田君」を絡めるだけで、「岡田君」の冴えないけれど平凡で平和な日常が映されて、だいぶ経って岡田とユカに、遂に「シリアルキラー森田」が忍び寄って来たという場面で初めて、テーマ曲とタイトル、キャストが表示される。クールですねぇ
それまで、岡田君を演じる濱田岳さんと安藤さんを演じるムロツヨシさんの軽妙なやりとりに笑わせて、そこから遂に一変するというのがゾクゾクさせました。
とにかく前半のふたりが可笑しくて可笑しくて。
いかにも怪しい安藤さんのユカへの不自然極まりない無理やりな誘いに、岡田君が横を向いて「だめ、だめ」と口だけ動かすとか。
ユカが実は岡田君が好きだと打ち明けた時に、「俺と同じ名前!?」とか。
自販機の陰に立っている安藤さんの斜めな態勢とか。
その安藤さんがショックで奇声を発するのに驚くユカを宥めようにも安藤さん叫び続けるんで「安藤さんウルサイ」とか。
もうね、この岡田君がシリアルキラーと対決してユカを守れるのかしらと心配になります。

ちょっと分からなかったのが、岡田君はなぜカフェで平然と森田に声を掛けられたのか。
ユカのストーカーらしい男が偶然同級生だったからといって、何年も会ってなかったのに突然声を掛けるのは躊躇われるという事だけでしたよね?
あれほど森田に対して後ろめたい事件があったのを、あの時は忘れていたの?
忘れられるかなぁ?一生着いて回る負い目でしょう?
岡田の性格上も、もう忘れているだろうと過信するほど無神経ではないと思うんですけど。

ラストは原作とは変えたそうですが、このラストのなんと痛切なことか。
岡田のことをまったく憶えていないと言った森田の車内での急変で記憶が甦った、岡田の回想。
出会いの時の初々しい会話。
日盛りの庭を望む部屋でのTVゲーム。
「おかーさーん 麦茶持って来てー」は、あの時の言葉なんだ

イジメという名で悪ふざけのように誤魔化される暴力の罪深さを、強烈に示した点では秀作だと感じました。

それにしてもニッポンのおまわりさん、手緩いなぁ



映画
by august22moon | 2016-07-24 23:00 | 映画 | Comments(0)

ダン・トラクテンバーグ監督作『10クローバーフィールドレーン』

d0109373_21285460.jpgJJ・エイブラムス制作ですが、この監督は長編映画初監督作なんですね。
ミステリタッチのSFって、風呂敷広げることに執心しすぎて結末が萎んだりすることがありますが、結末もなかなか良かったんではないでしょうか。
宇宙人襲来という昨今流行りのテーマに、監禁のサスペンスが盛り込まれて、その男(ジョン・グッドマン)の正体が徐々に判明していく過程が面白かった。
第一、あのシュエルターが自分の為とはいえ快適に出来ているので、そこで怪しさが軽減されちゃう。
出たいと訴えるミッシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)をなぜ阻むのか、いいひとと見せかけてやはり怪しいんじゃないかとちょこちょこ惑わせるのがね、演じるJ・グッドマンの巧みさもあって緊迫感がありました。
ジュークボックス前のあのダンスがね、また油断させるわぁ

酒瓶1本でUFOを破壊しちゃうってのも、ウイルス感染させる以上に乱暴ではありますが、まあいいか

主演のウィンステッドって、『ダイハード・ラストデイ』の時とは別人のように魅力的。
大きな眼は危機感や恐怖が効果的。
避難ではなく、さらに闘いに挑む決意の表情も力強かった。

バトンルージュって地名はなんだか、忘れた頃に出てくる気が・・・




映画
by august22moon | 2016-07-22 23:00 | 映画 | Comments(0)

大森立嗣監督作 『セトウツミ』

d0109373_16554542.jpg県内では静岡市清水区にあるMOVIX清水でしか上映していないので出掛けてきました。
通りかかったことはあるのですが、映画館の入っている「エスパルスドリームプラザ」に入るのは初めてでした。ドリーやあんぱんまん目的であろう親子連れでロビー大混雑。早目に到着していてよかったです。

75分は短いなぁと思っていましたが、やはり見終わってみるともっと見たいと思います。
それほどふたりのやりとりは傑作。
「誰が見んねん」の掴みから、随所で笑いが起こっていました。
原作未読なので後で改めて読んでみましたが、顔立ちは違ってもふたりの巧さで、原作の世界観は崩れてなかったんではないでしょうか。
内海役の池松さんはもとより芝居が巧いので、「第0話」の、なぜそこで会うようになったかまでの流れが非常に説得力がありました。ひとりになるつもりだったのになんでコイツまた居るねん、な表情が秀逸。
瀬戸にしてももう少し面白く過ごせる場所も知っていそうなのに、そこに来るしかない事情がありそうだし、内海のために付き合ってるようでもある。なんてことをさまざまに想像させるチカラが、演じる菅田さんには在りました。
大した内容もないことをやたら可笑しなやりとりをするって、若いコにはよくあること。
そんなどこにでもある、でも今しかない瞬間の可笑しみが在りました。

驚いたのは、特報映像にあった「けん玉」「タイミング」「スタンディングオベーション」が、本編には無いこと。
スクリーンでも見たかったのに。
ぜひとも続編でもっといろいろ見せてほしいんですが、主演のふたりが超売れっ子ですから無理かな

オリジナルエピソードの「花火」で、
暗がりでゆらゆら歩く人影に驚いた瀬戸の、こっち来んのか、向こう行くのかわかんねー!みたいなセリフが可笑しかった。
線香花火になかなか火が着かなかった時の池松さんが小さく「かぜ」とつぶやいたとこ、好きですわぁ

内海の「もっと大きいのよこせみたいな相槌されても」も可笑しかったー

BGMにタンゴが流れますが、漫才ではなく、タンゴということなんですね。なるほど~






さて、あっと言う間に上映も終わり、雑貨屋さんやゲームコーナーやイートインスペースのある施設内を見物。随分と欧米系外国人さんが多いなあと思いながらウロウロ。
灼熱のテラスでヨットハーバーなど見ておりました。右手の日の出埠頭に大きな建物があるのかと思いきや、なんと大型客船ダイヤモンドプリンセス号が停泊していました。
寄港中に乗客の方々がこの辺りを散策されていたんですね。
タコヤキに挑戦されたりソフトクリーム食べたり、雑貨を不思議そうに眺めたり、思い思いに楽しんでいるもよう。
この日は北東方面が凄い雲で、富士山がまったく望めず残念ですね。
  
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映画
by august22moon | 2016-07-19 23:13 | 映画 | Comments(0)

ローランド・エメリッヒ監督作『インデペンデンスデイ:リサージェンス』

d0109373_18301750.jpg前作が面白かったので期待があったんですが、なんか、途中で飽きてきちゃった・・・

前作は、ジェフ・ゴールドプラムの父親との問題や現大統領とのちょっと笑えるしがらみとか、大統領夫人のがんばりとか、人間ドラマに面白いエピソードが満載で楽しめました。
型破りなパイロットのウィル・スミスが宇宙人をグーパンチでのしちゃったり、「おまえ、臭いんだよっ」なんて文句いいながら基地まで引きずって行くなんてのが可笑しかった。
大統領が「エリア51は存在しまして」なんて国防長官に打ち明けられて呆気にとられるとなんて、傑作な場面でした。

しかしこの続編では、そうゆう人間らしいエピソードが、ことごとく弱くて印象に残るものがない。
だから、闘いに挑む勇壮さもイマイチ迫ってこない。
前作の大統領演説を続編の予告に使うのは、いいアイデアだと感心したんですが、さわりとはいえ今作中に2度も流すのは多い。むしろ無くてよかった。
ホイットモアに覚悟を語らせ、周囲に居合わせた戦闘機パイロットたちが居住まいを正して士気が高まる、というのもしつこく感じてしまいました。
それをなぜ、現在の女性大統領にやらせないのか。カリスマ性の問題か。

20年経って、やはりその宇宙船や戦闘機のデザインの緻密さユニークさは目を見張るものがあるんですが、エイリアンの技術を応用(借用?)していることからして、人類が(ってアメリカだけですが)一丸となって地球を守るっていうカタルシスが無い。
剣を扱う部族の長がエイリアンを剣で倒すんですが、こうゆう闘い方も入れてはいるんですけどね。
折角入手した新技術だから利用するのは理解できるんです。それにしては月面基地は一蹴されちゃって・・・

俳優の風貌が役柄に合っていたのが、アメリカのプロパガンダムービーらしさを引き起こしていたんですよね。ロバート・ロッジアの将軍とかアダム・ボールドウィンの少佐とか。
ケネディに似せた風貌の大統領とか。
女性大統領にしたのが結果的にタイムリーになりましたが、それらしく見えませんでした。
(つくづくグレンクローズは巧かったなぁと思います。大統領との友情まで匂わせて)
ウイリアム・フィクナーも、将軍にも大統領にも見えないし。
中国人出すのはもう構わないんですが、中国語捲し立てる設定ってのは必要なのかしら
そんなに意識しなくちゃならない市場でしょうかね・・・
研究スタッフの中にフランス人をひとり配するというのも、私は『未知との遭遇』のトリュフォー(通訳連れてほとんどフランス語で押し通すっていうのも気質を表して面白かった)から知りましたが、独特の空気感の違いが出ます。


娯楽作品と割りきって見ましたが、
この前見た別の映画では、コーラを飲むのも忘れて見入っていたなぁなんてことを思い出す始末。



映画
by august22moon | 2016-07-15 23:00 | 映画 | Comments(0)

トム・フーパー監督作 『リリーのすべて』

d0109373_1723439.jpgこの作品も3ヶ月遅れでようやく先週から地元公開が始まりました。

予告編で『ファンタスティックビースト~』。
古き佳きイギリスの風景がこれほど似合う若手俳優さんはいませんが、そのうちコパーフィールドとがドリアングレイなんかも演じちゃうんじゃないでしょうかね
ゲルダを演じるアリシア・ディカンダー(ディキャンベルって読み方のほうがいいな)はスウェーデン出身なんですね。アカデミー賞でのドレスは「ベル」みたいと称賛されていましたが、あれ、スウェーデンのナショナルカラーって意味ですよね?とEURO16見ててようやく気付きました次第です。


玩具箱のように同じ小さな窓が並ぶカラフルな外壁の建物。運河沿いの市場。整然とした可愛らしいコペンハーゲンの町並みに対して、アイナーとゲルダが住むアパート室内は、まだ若く裕福ではない夫婦の部屋としても殺風景でしたが、その分、変化してゆくふたりの姿が映えました。窓からの光りもやさしい。
衣裳合わせするダンサーをチュチュ越しに撮った画の美しいこと。

画家であることがゲルダという女性にとって大きな意味があるわけですね。
彼女の持つ画力が、無意識に夫の隠された部分までも描きだしてしまった。目の肥えた美術愛好家にはそれが感じとれてしまったんですね。モデルとなった女性の奥底にある何かを。
彼女の能力が、図らずも「リリー」もよって目覚めさせられた。それを彼女自身も少なからず驚きを持って知ることになるこれは、リベラリズムってことなんでしょうかね
苦しんでいる夫をこれ以上傷つけたくない。しかしこのまま進めば、自分は捨てられるのと同じ。浮気されるほうがまだましだわねぇこれじゃ。
開放されるや大胆になっていき、「リリー」として活き活きと外出されたりすると、利己的に見えてしまうんですよね。ただ、そのところをアイナー自身も分かっているのか、公園で冷やかされ殴られた後に向うのは妻の元ではなく、友人ハンスのところなんですね。
この夫婦にとっての救いが、この理解ある友人たちがいたことですね。つかず離れず支えてくれている。どれだけ救われることか。

手術を受けるために出発する駅の場面は、ゲルダにとっては夫との今生の別れ。
アイナーにとっては希望への旅立ちでも、妻にとっては、こんなに残酷な別れはないわけだし。
ゲルダの辛さが胸に迫りました。
列車の中で嬉しさを隠そうとしないのを見せられるとね、やっぱり身勝手に見えてしまうんですよね。
2回目の手術まで間を置かなくちゃいけないのに、生き急ぐように直ぐに2回目の手術受けるなんて言うし。その為に薬の用法容量守らないし。ったく

ゲルダは、支援するパートナーというより、母親のように見えてきました。

1回目の手術を乗り越えた後、デパートの香水売り場で働く「リリー」。
パリに住んでいたことを活かしなさいと上司に言われ、はにかんで俯くところが巧い。
「パリではパヒュームは身体につけません。空中に吹いて・・・潜ります」
・・・これは、お客さん買っちゃうね
この場面、香水瓶越しの画も美しい
遂に「Danish girl」になれて、女性同僚たちと談笑しながら退社するさまも、なんと幸せそうであることか。

簡単に整理のできない問題に悩み惑い続けるアリシア・ディカンダーが巧かった。
繊細なガラス細工のようなエディ・レッドメインに比べて、自ら人生を切り開いていこうとする逞しさが感じられました。

いつか夫から渡されたスカーフが風に飛ばされたのを掴もうとするハンスを停めて
「このまま飛ばさせてあげて」。
この時のアリシアの、感情が溢れ出た表情が素晴らしい。
ようやく彼は自由になれたのだという涙の中に、夫婦のままでいたかったという涙は混じっていなかったのかな

フィヨルドの上を舞う絹のスカーフは一瞬、かもめのように見えました。



映画
by august22moon | 2016-06-24 23:00 | 映画 | Comments(0)

堤幸彦監督作 『天空の蜂』 wowow放映

d0109373_15103495.jpg公開時に躊躇しているうちに見逃した作品です。
犯人の「痛みを伴わない想像力は、ただの甘い夢にすぎない。想像してみるがいい、ダイナマイトはいつも10本とは限らないことを」という予言は、20年前は想像すらしなかった現在に突き付けられると、単なるエンタテインメントと受け取らせないちからがありました
しかもその声明文が公にされずに葬られるというのも、「安全神話」という言葉が過ります。
CG技術に関して批判も多いようですが、邦画としてはあれ以上求めるのは酷だとね、思うんです。作り手側が見せたかったのはそこだけではないでしょうし。

三島の背景ですが、どうして親より先に消防のレスキューが到着していないんでしょう。学校側が警察沙汰を躊躇して通報が遅かったということかな?
まるで昼休み終わったんだから早く教室へ戻りなさーいみたいな教師の口調にはゾツとしました。あれが意図的演出だとしたら、なんともおぞましい。
三島が「新陽」の屋根で墜落するビッグBを両手を広げて向える想像の画を、息子を受け止めようとしたその瞬間と繋げたのは、彼の慟哭と絶望が見える、印象的なシーンとなっていました。

共犯者・雑賀も被爆しているという設定なんですかね?犯行以前に既に心身ともにぎりぎりの焦燥感があって、彼にとってはもう死に様しかないんですね。アパートから逃亡し車に飛び込むまでがよかったです。こうゆう刹那的な役が似合いますね。

刑事たちの地道な捜査のようすが丁寧に描かれています。聞き込みに回り、名簿の名前をひとつづつ当たり、そこにベテラン刑事の感が働くってところは、巨大ヘリや原発の近代的な描写と対照的。
アジトまで迫ったところで自衛隊の捜査員に阻まれるけれど、犯人確保に刑事の執念を見せるあたりも物語に奥行きが出ました。

共犯となってしまう三島の恋人の赤嶺淳子も悲劇的。
利用されているだけかもしれないとと気付いていても離れられなかった。汗を拭くことも乱れた髪を直す余裕も失せた陰鬱な表情。使われない航空チケット。乱暴に切った髪。哀しすぎる・・・

クライマックスの、自衛隊ヘリに2名も自衛隊員が同乗しているのに、コントローラーを向けるのがエンジニアである必要性は?訓練された空曹ならスキッドに立ってもっと身を乗り出すことも出来たでしょうに。
これも主役氏の見せ場を作るため?
主要登場人物が皆さん安定の演技であったのに、肝心の湯原に関する全てが浅く嘘っぽい。この俳優さんは体格も風貌も主役の華はあるけれど、臨場感が湧かないんですよね。
公開時に見るのを躊躇ったのはこのためですが、今回見て、やはりという印象です。


映画
by august22moon | 2016-06-23 23:00 | 映画 | Comments(2)

ジョディ・フォスター監督作 『マネーモンスター』

d0109373_16434914.jpgちょっと疲れちゃって居眠りしちゃわないか心配だったんですが、スリリングでテンポもよく、面白かったです。

J・フォスター、もう映画監督4作目なんですね。
ジョージ・クルーニーが財テク番組司会者で、番組冒頭ではおねーさんたち従えて踊ったり、「さあ、リングに上がれ」なんてボクサースタイルで煽るクレイジーさは、まるで「ウルフオブ~」のようですが、軽薄なノリでエンタメ化させても、彼が演じると嫌らしさを感じない。スタッフも困惑するようなアドリブ満載っていうのも彼の洒脱さに似合ってる気がします。
電話で「アイアコッカだ」とふざけて応えていたので、ゲイツってだけでも人をくったようなのに、合成したんですね。

株で大損した青年カイルがねぇ、もう気の毒で気の毒で。妻に説得されるどころか罵倒されて人格否定までされて、愕然とするところなんて哀れで。
確かに遺産を使い果たしただけでなく、一生掛かっても返済しきれない巨額の借金を抱え込んでは逆上も仕方ないですけどね。
演じるジャック・オコンネルって多分初めて見たんですが、とてもよかったです。
根は普通の好青年って感じなので、尚更ラストが悲痛。
アメリカじゃ、撃たれちゃうか・・・

生放送中のスタジオに銃と爆弾を持った男が乱入して生放送どうなる!?ってだけでなく、ディレクターのパティがスタッフに情報を収集させて、個人が8億ドルもの損失出したのが「アルゴリズムのバグ」が原因ではなく、アイビスキャピタルのCEOキャンビーの画策によるものであることが判明していくまでがスリリングで面白かったです。
道路封鎖のロケも敢行してダイナミックな見応えも出ました。

パティは、イヤホン通して犯人を刺激しないようにリーにアドバイスし、カメラアングルを指揮して、生放送のアクシデントを乗り切る。
J・ロバーツは、さほど抜け目ないやり手な雰囲気は出してなかったですが、この前代未聞の事態に、視聴率と反響が念頭になかったとは言い切れない。

スタジオカメラマンも、爆弾の危険の中を最後までカメラを離さない。リーと同じようにどこまでカイルに同情的になっていたかは判らないんですが、居たたまれない様子で外へ出るけれどカメラは現場の床に置いていく。しかもONのまま。このカメラマンを追っているのが珍しい。
ぐったりと座りこんだところに、なぜ危険を顧みず映し続けることが出来たのかとインタビューされる。
ただ夢中だったと応えているけれど、報道する側がよく答えるこの使命感の裏には常に、最前線の優越と恍惚が見え隠れする。

声高に問題提起することも、はたまた情緒的になることもなく、無情にばさっとエンディング。
緊迫の実況に半分面白がってTVを見ていた視聴者も、その後に何をするでもなく、ただ茫然としているだけ。リアリティーショーを見ているような感覚だったんでしょうか
「来週の番組、どうする?」なんてパティの言葉は、元凶が自分たちでなかった安堵が感じられました。
それに応えるリーの笑顔には、複雑な心境も思惑も見えませんでした。

広報だか秘書だかのカトリーナ・バルフが美しいですこと。白いコートなびかせて颯爽。



d0109373_21443142.jpgこれはいつかのモカ。喫茶『リマ』さんにて。
アラビアのアネモネのカップにしてくれないか毎回期待しているのですが、出てこない(笑)
この時はロイヤルコペンハーゲンのトランクェーバー
軽快なドラムのジャズが流れて落ち着いた雰囲気の中、美味しくいただきました。
ごちそうさまでした。

外に出ると小雨がパラつき始めていました。バス停に着くと、ベンチに小学生の姿がありました。
俯いてゲームをしているコに「傘、忘れちゃった?」と声をかけながら半分差しかけました。知らないひとに話しかけられてもスルーと親御さんの言いつけを守ってか、ゲーム進展に夢中だったか、俯いたまま。
ベンチは既に濡れていたので、バスが来るまでの数分間傍らに立っていました。










d0109373_14332716.jpgつまり、こんな状況。


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by august22moon | 2016-06-17 23:01 | 映画 | Comments(0)

瀬々敬久監督作 『64 ロクヨン 後編』

d0109373_15593419.jpg観客の期待するものがなんであれ、原作を越えた作品を創ろうとしたがるのは仕方のないことだとは思うんです。これはこれでアリだと迎えられる場合もあるし。
当初はラストが違うという情報だったので、確かに原作のラストは隠蔽の告発を含めた事件解決に向けて動き出したところで終わっているので、描く余地がありますしね。
しかし監督がインタビューで、「映画は主人公や登場人物の行動を追って見せるものだから、最後も主人公自らも行動させたかった」と発言しているのを読んで、ちょっと厭な予感はしたんですよね。

見てびっくり。ラストどころじゃないじゃん!まさかここまで勝手な行動をさせるとは。
あれでは逸脱行為。広報官が容疑者を誘き出し、直接対決って・・・ハリーキャラハンじゃないんだから。
これでは単に俳優の見せ場を作るためだけの変更に過ぎない。

唯一信頼している松岡が、犯人を昭和64年へ引きずり戻って宣言してるのに、なぜ待てない?
結果的に二渡に恩を売る結果になるのは三上には不本意のはず。報復人事も誤解ってことにするの?
・・・もう、「そんなことをしたらメチャクチャになります」、だわ。
秋川を河原まで追って来させたのも同様。
後編での秋川の見せ場は、記者会見場で彼なりのやり方で三上ら広報室に協力しようとするところなんですが、それだけじゃ勿体ないと思ったか。
幸田はショッピングセンターのトイレで電話してませんでした?なぜ車内じゃないことにしたの?

日吉が泣きながら部屋から出てきた時。母親に謝るだけで、前編の「きみのせいじゃない」のその先の、彼を14年の重荷から解放させた言葉が無い。
日吉にかける数々の言葉は、三上が日吉の向こう側に娘を見ていた言葉だったのに。
記者会見で二課長が捜査本部から情報を小出しにしか提供されず何十回も往復させられる場面は短縮すべきと思っていたのでそこはよかったんですが、何十回往復してるのか示してないので、美雲の心配も倒れて救急車と騒ぐのも大袈裟に見えてしまいませんかね。
いかにも頼りない感じは、流石に柄本さん巧いから面白かったですけど。
目崎に初めて会った時の松岡の表情もそう。ハンカチバサッはまあいいけど
捜査車両の追跡もなんだか短い気がしちゃった。凄い緊迫感出せる、それこそ映画的な息詰まる場面なのに。

殺された娘と同じ年の目崎の次女の誘拐を企ててもやり切れなかったという場面を作って、雨宮の葛藤を見せているところはいいと思いました。
復讐の一念で生きてきたとはいえ、実行は容易なことではなかったろうし。
そこで、幸田が動いたことや、誘拐しないで脅迫することにした理由が成立しました。
しかし、その後の次女の一連の行動は余計。

緒形直人さんは温和な役柄が多いところ、珍しい役柄で堪能しました。
思わず近道に入ってしまった後とか、メモを読んで被害者から真犯人へと豹変する表情は素晴らしい。
なぜあんなことが出来たのか自分でも判らない。犯行場面では追い詰められた男の異様さが見事。
渡辺真起子さん演じる目崎の妻の、警察への警戒感を感じる目つきが、通報の遅れた理由を表して巧い。身代金誘拐も妻の発案かもなんて背景も浮かびました。
外車ディーラー時代の裕福な暮らしぶりを横顔に残しているのもこの一家に深みが出ました。

綾野剛演じる諏訪が三上からの電話を受けて、移動します待ってくださいとさり気なく会見場を歩きだし、まだ廊下に出ないうちに急にダッシュして「どうぞ」と応えるのには、焦りや憤りが出ていました。
抑えた芝居を要求される地味な役どころでも光るのは、さすが。

永瀬さんは、侘しさと奥底に一念を燃やし続ける男の役ですが、その疲弊した表情は見事でした。「あなたは大丈夫ですか?」も、美那子に微かにする会釈もよかった。
でも、あのスタイリッシュさは滲みでちゃうもんですねぇ。居住まいもちょっとした動作も洗練されてる。

まるで火葬のようなどんど焼きの場面は、雨宮ひとりのほうがいいのに。
誰も彼を救うことなど出来ないんだから。
そうすればそれこそ「慟哭」なのに。
無念、無情、寂寥。そうゆうものだけで満たされた人間ドラマを見せてもいいと思うんです。生きるとは時にそうゆうものだから。
重厚感と緊迫感あるドラマなのに、ちょっと惜しいな、という印象でした。


土日はかなり混んでいたそうなので平日にしたのにチケットカウンターが長蛇の列でびっくり。
今作もかなりお客さんが入って(端っこの席しか空いてなかった・涙)いたのですが、図鑑行列もあったようです。



映画
by august22moon | 2016-06-14 23:00 | 映画 | Comments(0)

トム・マッカーシー監督作『スポットライト 世紀のスクープ』

d0109373_15572518.jpgようやく先週末から上映(こんなんばっかです)
待ちくたびれた観客で場内盛況で、最前列しか空いて無くて首が痛くなっちゃった。
こうゆうセリフ一語も見落としたくない作品は吹替版のほうがじっくり演技を堪能できますね。
字幕版しかないんで仕方ないですけど。

舞台は01年。この頃はまだ、紙媒体の資料を閲覧しに出掛けて行き、取材に奔走するところなど、『大統領の陰謀』の頃と基本的には変っていないですね。
お役所仕事に振り回され、ようやく閲覧すると既に手を回され廃棄されていたり。発見しても「コピー室は4時で終了」。
古いデータは、地下倉庫に保管された資料や以前の掲載記事の切り抜きなどを探さなくてはならない。
関係者への取材には録音ではなく、その場でメモしていく。
このメモ帳がですねぇ、スポットライト編集部が皆、A5サイズ位の縦型リングノートなんですね。
ウッド・スタインコンビは掌に収まるくらいのミニサイズでしたが、やはり縦型のリングメモ。
書き続け易いからなんでしょうね。
この、発言の全て書き漏らすまいとペンを動かし続け、しかも取材対象者の表情も見逃すまいとしてる。
この動作を見ているだけでも緊迫感が感じられました。

新任の局長バロン(リーブ・シュライバー)がいかにも、なんらしがらみもないという風貌。リーブ・シュライバーだとみんな同じになりそうなところ巧く造形されていました。ジャーナリストらしい中立性と、どんな小さな変化も見逃さない視線を持つ人物らしい。
スポットライトのメンバーもコントラストがよかった。常にあうんの呼吸で仕事しあっている雰囲気がその部屋にはありました。

被害件数と加害者神父の多さ、教会側にあまりにも都合のいい隠蔽同等の保護体制、弁護士の忠告どおりの妨害工作に、チームは愕然としていくんですが、リーダーであるロビー(マイケル・キートン)は、強大な敵に対して詰めの甘さがあってはならない失敗は許されないと、真の調査報道を冷静に考えている。
このあたりも、先走った特ダネ記事でフーバーを終身長官にしてしまったブラッドリー主幹の慎重さを彷彿とさせます。
と、見終わってから『大統領の陰謀』が過っていたんですが、後でロビーの上司に当たる部長のベンという人物のフルネーム確認したらなんと、ベン・ブラッドリー・jr なんですねぇ。あの主幹の息子。ああ、びっくり。
当初ロビーにこの取材を止めるよう忠告をしてくるし、レゼンデスの自宅へ取材の進捗状況を探りに来たりする。彼こそ既に10年前に告発があったにも関わらずロビーに小さな事件としてしか扱わせなかった人物。

で、早く掲載しなくては被害者が増えるばかりとレゼンデス(マーク・ラファロ)はさすがに抗議するんですが、これぐらいに抑えているところが良かった。
他のメンバーにしても、自宅の近所に教会の施設があることを知り、自分の子供たちにも危険が迫るかもしれないと不安に苛まれる記者もいれば、被害者たちの傷の深さを目の当たりにして、自らの教会への信頼との板挟みで悩む記者もいる。
しかしその苦悩や怒りを抑えて、忍びこむピアノの旋律が熱を冷ましていくようでした。

掲載もクリスマスは避けて年始にするんですが、スポットライトチームはどんな思いで聖夜を過ごしたのだろうと考えると暗澹たる気持ちになりました。

冒頭で、事件発覚後直ちに釈放され、まるで誤認逮捕のごとく平然と出て行く神父を警官が見送る場面があり、事件の闇の深さをさらりと静かに見せています。愕然とさせるイントロダクションです。
記事発表後も、教会側の反応は出さず、スポットライト編集部に、被害者からの電話が鳴り止まない中、マイケル・キートン演じるロビーがデスクの受話器を取って落ち着いた声で「This is SPOTLIGHT」と応えて幕。
カメラは俳優のアップに寄らず引きの映像で、劇的に終わらせない。
しかしその声は、宣言のように響きました。

全編、世界を震撼させるスクープを発表するまでの、記者たちの奮闘を、無闇に煽ったり、声高に提示することなく、抑制をきかせ、しかし真正面から見据えている。オスカーも納得の気骨ある作品でした。



映画
by august22moon | 2016-06-09 23:00 | 映画 | Comments(0)

永井聡監督作 『世界から猫が消えたなら』

d0109373_112539.jpg撮影が始まったと聞いて早2年。なんでこんなに時間が掛かるのかと思いましたが、VFXシーンが多いからなんですかね。
原作の書名が映画的だなぁと思っていたんですが、原作の川村元気氏は映画プロデューサーだったんですね。映画好きの友人と、映画の名セリフのやりとりなんてちょっと楽しい。
「考えるな、感じろ」はもれなく出てきますねぇ。喋り方も特徴的でしたしね。フィ~~~ル
間違い電話で「あれ?今『メトロポリタン』見てます?」も面白い。

奥田瑛二さん演じる武骨な職人肌の父親。登場場面の少ない中にも流石の巧さが光りました。
父が撮ったピンボケの写真。嗚咽しながら手も震えて撮った1枚。そこに父親の全てが凝縮されているのは感動的でした。
出産の時も臨終の時も、妻が大切にしていたのであろう懐中時計を修理し続ける男。
妻の時間を進め続けようとしていたかのようです。
最後の「ありがとう」の声のトーンは、まだ若く新米パパらしい。その声の余韻が素晴らしかった。
直後の暗転に流れるテーマ曲も雰囲気に合ってました。

映画好きな友人役の濱田岳さんも、とぼけた可笑しみのある役どころが合ってました。
毎日DVDを渡し続けて、突然「忘れた」の表情もいい。どうしても思いつかなかったのかもしれない。
人生の最後に見せる映画なんてないと店の床にDVDを撒き散らす場面や、最後の日にどう向き合っていいか分からず、ただ涙することしかできない表情は絶品。
残されるものの辛さが感じられました。

余命幾許もない母に、楽しい人生だったのかと「僕」が悔やむ場面。
映画でもドラマでもよく目にする母子場面ですが、佐藤さんの泣き方が男の子らしくて自然でやり過ぎない感じでよかった。
自らも突然、末期と診断され、「シャンプーまとめ買いしたばかりなのに」なんて考えるのは、意外と現実的かもしれませんね。19-20歳の青年にとっては特に。

回想シーンと現在の妄想シーンを交互に出しているので、珍しいお話しに見えますが、ストーリーは平凡。
妄想で起こる事態が画期的な映像であるくらいですかね。
原作はどうなのかあらすじを調べてみましたが、こちらは最後の日へ向けて主人公はさまざまな事をしているんですね。その辺りがほとんど描かれない。

アルゼンチンの場面が設けられていますが、これがちょっと説明不足で唐突。
服装や内装が全体に暗いトーンなので、ブエノスアイレスの明るいカラフルな町並みが対照的です。
それにしてもなぜアルゼンチンへ行ったのか。ふたりとも映画好きだから『ブエノスアイレス』の舞台となった街を見たかったんですかね。それにしては舞台となった橋を教えられてる。
世界中を放浪する生命力溢れる男と出会い、別れた直後にあっけなく交通事故で亡くなってしまう。
幾たびも危険をくぐり抜けてきたであろう人間の生命が、いとも簡単に奪われてしまう残酷を表したかったのでしょうか。
宮崎あおいさん演じる女性はこの無情に抗うように「生きてやる」と叫ぶ。
感動的な場面ではありますが、彼女の死生観がいまひとつ掴めない。
第一、なぜイグアスの滝なのか。大自然の前では、人間なんてちっぽけなものだということ、かな?
ひとにとってひとの生命は、なにより重く大きいものであると、彼女はぶつけたのかもしれません。

主人公は学生で、郵便配達はバイト。郵便配達人であることが彼のストーリーになにか関係があるのかと思いましたが、まったくそうゆうこともなく。

キャベツごと買わなくても、空き箱を貰えなかったのかな?
しかもあんなにたくさんの大玉キャベツが入る箱かなぁ・・・まぁ、不器用さは出ていますが。


もし明日、自分や愛しいひとが消えても世界は変らず動いていく。
たとえ悪魔と契約しても、生命に代えられるものはない。
大切なかけがえのない思い出たちで人生は彩られている。
人生は、「生まれてくれてありがとう」と感謝で迎えられて始まり、生んでくれて「ありがとう」と感謝を返して終わる。

そんなことを、若い魂は知るのですね。


映画
by august22moon | 2016-06-03 23:23 | 映画 | Comments(0)


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