人気ブログランキング | 話題のタグを見る
NEW POST

『THE COAST OF UTOPIA』 23日観劇

『THE COAST OF UTOPIA』 23日観劇 _d0109373_15362160.jpg【 コースト オブ ユートピア 】
さて、改めまして。
開場5分後くらいに入場。
舞台では既に「本読み風景の場」が始まっています。
外国人を演じる時のこのプロローグは『タイタス』等と同様の開幕ですね。
本来の舞台設定なら後方すぎる席ですが舞台位置のおかげでまあまあのお席。
音響ブース内のスタッフさんは既にお疲れのようで仮眠中。 

横田さん当日はアッズーリ。エースナンバーの10(笑)
因みに勝村さんはユーベでした。
横田さんはリラックスした雰囲気で隣に座った石丸さんや池内さんらと言葉を交わした後、少し中座。
合図の声が上がって紗幕が引かれ開幕。
紗幕の影で舞台転換の間BGMとして、オバマ大統領の演説や、鳩山氏の「政権交代を」という演説が騒音に混ぜて流れました。
この紗幕は転換以外にも背景として効果的に使われました。
特に面白かったのは、ゲルチェンの妻ナタリーが同居する詩人ヘルヴェークに情愛を剥きだしにする場面に、マネの「草上の昼食」画を投影したこと。唐突感や生々しさが防げました。





『THE COAST OF UTOPIA』 23日観劇 _d0109373_19331199.jpg【遥かなる岸へ】
冒頭のバクーニン家の様子はまさにチェーホフ「四姉妹」の世界。四姉妹が白樺林の中で車座に座っている場面はとても美しい絵でした。
広大な領地に話が及んでは「桜の園」。麻実れいさん演じるヴァルヴァーラはまるでラネーフスカヤ。
「モスクワへ!」って意気込んだので、なかなか出発しなかったりしてなんて思ってしまいました(笑)
女性の高い声だからか、舞台側観客の方を向いて喋られると聞き取れない人もいました。
京野さんのヴァレンカの声にはなんか疲れちゃった・・・。

池内博之さんのベリンスキーは、貴族出身ではない引け目からかどこか初で内気な青年。面白味のある人物です。一旦喋り出すと情熱的で、ゲルツェン家の絢爛たる屋敷内に圧倒されながらも持論を捲し立てる場面は、最初は訥々と次第に熱を帯び興奮状態となる様が素晴らしく、自分の言葉の威力に押し出されるように部屋を飛び出た後に、観客の中には拍手された方もあったほどでした。
このベリンスキーは後に文芸評論家となるのですが、この国に文学は無いと嘆き「ロシアと聞いて作家の名前が思い浮かぶようになれば仕事は完了だ」という希望に満ちた表情も豊かで、貧困と病に苦しむ後半まで出色の出来といえるものでした。
『リア王』でも良かったけれど益々素晴らしい。

《追記》 ゲルツェンの回想シーンで生前のベリンスキーが登場するのですが、スローモーションで出てくる池内さんの晴れやかで無垢な表情が素晴らしくて。
ゲルツェンの息子のパズルに夢中になる姿には涙がでました。


勝村さんは、行動派の革命家バクーニンを活き活きと演じられています。
後半で、流刑地から逃亡し帰還したころには風貌もかなり変わってしまったと、ゲルツェンとオガリョーフにからかわれる場面では、逆に阿部さんと石丸さんが勝村さんのアイデアに乗せられてるのが明らかで客席から笑いが起こりました。
反論も可笑しみがあり「おまえ、フリーメーソンか?」には笑っちゃいました。

石丸幹二さんは初めて観ましたが、まさに‘詩人’。
回想シーン。ゲルチェンの子供と釣りを楽しみ聴覚障害のコーリャの遊ぶ姿を遠く眺めて「人生。人生だ。」と独り言つ声は特に情感豊かで美しかったです。

横田さん演じる医師ケッチェルは、哲学や思想を戦わせるサークルの集いから登場。自由の国フランスに憧憬を寄せトリコロールのスカーフで着飾る仲間をひやかすセリフで始まりました。
医師という立場ゆえか革命を論じる貴族たちから一歩離れた冷静さが見えます。
こだわりのコーヒーの場面は微笑ましい。
後半演じるのは、なんとカール・マルクス。
マルクス自身を演じるというより、革命論者たちから‘エコノミスト’と揶揄される人物として存在させていたので、野卑な言葉を使ってまで論破しようとするなど威厳ある風貌とは裏腹に、俗物的な側面を強調したものでした。


『THE COAST OF UTOPIA』 23日観劇 _d0109373_02780.jpgⅠ部が終わって背中が少し痛かったのでこれからの時間を考えると不安になりましたし、睡魔に襲われることも懸念されたんですが、熱い理想論と裏腹に破たん的な生活だったり悲劇が襲ったりとドラマが盛り沢山で冗長な場面もなく面白かったです。オシリも痛くならなかったし。
休憩ごとに一服しに出るようにしてました。30分休憩ではまだ空腹でもなかったんですが、持参したパンを食べて、45分休憩ではおにぎりを客席で食べました。座れるとこもなかったし。

多くの思想家たちの理想が崩れてゆく「前夜」までのお話なので、それから先の絶望的な未来を思うと空しく響いたり。暴力による革命の時代を予想したチェルヌイシェフスキーの言葉に頷いたり・・・。
ペンのみで革命と理想を説いたゲルツェンの周りの、激しい展開への好奇心は「時間」を忘れさせました。

第Ⅲ部の休憩時間にホアイエに出ると、そこは思ったより人がいなくて静かで、深夜になってしまったかのよう。
終盤ではふと、今この星でこんな熱を持って起きているのは私たちだけなのではという錯覚に陥りました。
22時20分終演。カテコ2回目から総立ち。出演者さん観客双方で拍手。
横田さんも満面の笑み。

混沌と猥雑の街へ飛び出し、駅まで猛ダッシュ。
なんとか最終の新幹線に間に合いました。余韻もなにもあったもんじゃありません(苦笑)
 
Commented by mihona_76 at 2009-09-25 00:05
いつものことながら冷静な劇評。こんな風に言って(書いて)みたいと
あこがれてしまいます☆

ワタシが観劇した日はお客さんの反応がイマイチで、スタオベもほとんどなし。東京と大阪の違いってこんなものなの??と思ってしまったのですが、たまたまそういう客層が集まった日に観劇しただけなんですね。
ワタシひとりがなんか取り残されたカンジがしたのだけど、そうじゃなかったんだ。ヨカッタ♪

一度しか観劇できないのが残念です。せめてもう一度観劇できたら、
もっと話の中身に入っていけるのにな。
10時間の観劇、お疲れ様でした!!


Commented by august22moon at 2009-09-25 00:52
みほさん、早速のコメントありがとうございます。
いや、冷静を装っているだけで(笑)
劇中に目が合ったーなんて言って呆れられるヤツです。

私もスタオベしたいのに誰も立たなくて、立ったら後ろの席の方にご迷惑かなと我慢した時もありました。
『冬物語』でブラバへ行きましたが、確かに大阪のお客さんは反応がいいですよね。笑いも随所で起きるし。

私も今回は1回しか見られないので、もう1回見ればもっと理解できたと残念です。
by august22moon | 2009-09-24 23:00 | 観劇 | Comments(2)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31