PARCO劇場 『海をゆく者』 25日観劇

帰宅後、折角書いた感想文が席をたった間にupdateと重なって強制終了されてたので、少しづつ加筆修正。

d0109373_3232495.jpgアイルランド、ダブリン北部の海沿いの町にある古びた家に、若くない兄弟がふたりで暮らしている。兄は、最近、目が不自由になり、その世話のために戻ってきたと言う弟にも職は無い。酒癖の悪さで多くのものを失った弟は禁酒中だが、兄は大酒飲みで、クリスマス・イヴの朝も、起きた途端に近所の友人と飲んだくれている。陽気で開放的な性格の兄は、弟が顔を合わせたくない知り合いを「クリスマスだから」とカードに誘って弟を怒らせるが、その知り合いが連れてきた見知らぬ男こそ、弟が最も会いたくない、会ってはいけない人物だった。
(りゅーとぴあHPより)
 






【エンゼル・ハート】
(迷わず「クリスマスの奇跡」という映画のタイトルが思い出されたので感想文のタイトルにしましたが、書いているうちに、ああコレって映画「エンゼルハート」みたいな部分があると思い出しまして・・・。)

いかにもアイルランドらしい。クリスマスらしいお話でした。
それになにより、5人が巧くて。楽しいこと楽しいこと。
ストーリーだけでなく役者さんたちの巧さが堪能できて、気持よく劇場を後にしました。
素敵なクリスマスプレゼントを頂いた気分。

セットは鋼太郎さん演じるリチャードと平田満さん演じるシャーキー兄弟の、地下にある部屋のみ。
壁は下手が煉瓦。上手の壁には壁紙が貼られていますがそれも中央あたりでは剥がれてついには石壁がむき出しになっています。天井には太い梁が何本も通っている凝りよう。(後日追記)

この部屋がもの凄く雑然としているんです。
冒頭、上手のアイリッシュストーブの前で寝ちゃっていた兄が飛び起きるんですが、その辺りもブランケットやらなにやらゴチャゴチャ。
テーブルの下には前夜の酒盛りの後の酒瓶がいっぱい。
階段下にはダーツ板と子供用の木馬が埃にまみれている。
階段横には自転車のタイヤやら箒らしきものが寄せて積み上げられゴチャゴチャ。
下手前には、弟のものらしきまだ整理していないスーツケースが広げっぱなしで放置してある。
なのにクリスマスツリーだけはちゃんと飾られている。
これがこの部屋には不釣り合いで、ニッキーなんかマフラーや耳あてを当たり前のように掛けている。

事故で突然目が不自由になった兄は、苛立ちを酒で紛わせ、世話をする弟に当たり散らす。

この鋼太郎さんの弟を呼ぶ「シャーキー!シャーキーー!」という大声がうるさいの(笑)
いちいち叫ばなくても隣りのキッチンに居るってばーと煩わしく感じて、すっかりシャーキーに同情して見てしまいます。(27日追記)


弟も負けてはおらず怒鳴り合いになったりする。
それでもクリスマスだからと食材やお酒の買い出しに連れ出してくれと言いだす。
弟が点けてくれたストーブの薪が爆ぜる音がする部屋で「これでいい。これでクリスマスらしくなった」と独りごつセリフは、後の伏線になっているんですが、心に染みて心地よく思い出される声です。
アフタートークで「アドリブはありますか?」と質問があったほど、突っ込みセリフも思わず笑ってしまう演技も自然で役柄が完全に浸透しています。
特に鋼太郎さんは自堕落な初老の男を、笑いを誘いながら徹底的に演じきっています。だからこそ時折見せるシリアスな表情と声は一瞬時を止めて心を掴みます。そして、この兄がただのdirty old manではないことを気づかせます。

平田さんの舞台は初めて観ました。
アイルランド人らしい顔立ちといえば真っ先にロイ・キーンが浮かぶ私には、平田さんの寂しげな陰のある顔立ちはアイリッシュらしく見えました。


浅野さん演じるアイヴァンは、恐妻家で気が弱いけれど、リチャードの面倒をみてやったりするし余計なことは言わないし。いいひと。勝手に泊っても許せちゃう感じ。
前夜呑み過ぎてこの家の納戸に泊ってしまったと出てくるんですが、メガネを失くしてしまったので始終目を細めて懲らして見ているのも情けない感じ。でもそれがまた面白い人物像となっています。
長椅子で寝てしまう時も、立てた膝が徐々に崩れてゆくところなんて細かくリアル。
で、彼が最後にどんでん返しを引き起こすんですが、これが最高に傑作でした。場内から拍手が起こりましたもの。

小日向さんは謎の人物役。
絶やさぬ上品な笑みに上品な服装ですがなぜか千鳥足。この理由もあとで判明しますが、ゾッとさせます。
徐々に異形の者であることが判明する過程も、おもしろい。
トリックといえば、キャンドルの炎を吹き消すのに軽く息を吹いただけなのに異常な早さで消えるくらい。
左手を異様に動かすなど、全て役者の技で見せるのですが、小日向さんがまた巧いんです。
最近は映画やドラマが多く、舞台は2年ぶりとか。

d0109373_23203890.jpg 照明も凝っていました。煉瓦の壁に映る巨大化した影。小窓にあたる外の灯り。
ほっとさせるような、窓から伸びてくる朝の光はまるで、すべてを救う神の御手のようです。
ある場面で、キリスト像の目の部分だけに光があたるのも不思議を増幅させます。
















d0109373_23221587.jpg最後にアイヴァンが、シャーキーの元勤務先の社長夫人(元・愛人らしい)から贈られたCDをかけるんですが、なんの曲なんでしょう?
アイヴァンがしきりに、いい選曲だと言ってますが。
で、最後にクリスマスカードを読んで、はっと窓を見上げるのはなぜなのか・・・。


さて、5分の休憩を挟んで出演者全員によるアフタートークです。






記憶は曖昧なんですが。

みなさん、ダイニングチェアーのような椅子なのに鋼太郎さんだけリチャードのアームチェアー。一番若いのに貫録満点(笑)
毎回司会役を設定していて今回は浅野さん。
芝居より緊張しています、と。
そのせいか、登場の場面でドア脇の壁に頭をぶつける場面でいつもは平らなところにぶつけるのに今日は角にぶつけちゃって・・・コブができた。場内、爆笑しつつ、痛そ~。
トークテーマは舞台に因んで「賭け事」なんですが、全員「やらない」。
で、話が広がらないと大笑い。
ただ、鋼太郎さんは「ムサシ」の地方公演の時、小栗くん藤原くんら5人で食事代を賭けたジャンケンをした話をされました。「(2人が)人気者なんで外へ出られなくてホテルの中華レストランでランチ食べたんだけど。ホテルなんで高いのよ。5人で6万。」これには全員びっくり。
「これはスリルがあった(笑)負けたら払わなくちゃならないから。そしたら小栗の付き人のコが負けちゃって。一番薄給で働いてるコなのに。(泣きマネで)分割で支払ってもいいですかなんて」

【質問コーナー】

Q ずっと呑み続けていて、たいへんでは?
平田さん・・・ボクは最後に呑むので、しかも缶ビールで、缶は空なので。
大谷さん・・・劇中の密造酒はジャガイモなどで作られるスピリッツなので本来は透明。酒らしく見せる為に麦茶にして貰った。ウーロン茶だと咽喉や胃をやられるから。強い酒なので舐めるようにと演出上の注意があったのでそれほど呑んでいない。
小日向さん・・・引っ込んだ時にトイレ行くのは可能だけどと笑って。でも行ってないそうです。

Q 上演前に食事で気を遣っていることは?
小日向さん・・・あまりお腹いっぱいにならない程度に。眠くなるので。蕎麦くらい。
鋼太郎さん・・・空腹になるとそっちに神経がいっちゃうので、食べておく。
大谷さん・・・しっかり食べておく。今朝も野菜炒めみたいなものに卵のせた丼を作って食べました。今朝は奥さんが胃の検診で出かけたので自分で作りました、とのこと。
浅野さん・・・バナナはいいらしいね。今回は無いけどよく稽古場に置いてある。

Q アドリブはありますか?劇中、小日向さんがビールの空き缶を踏んで踵にはまったのを脚を振って取ったのは芝居?芝居の一部のように自然でした。
小日向さんは笑顔で(終始笑顔)・・・あれはアクシデントです。外れなかったので脚を振ったと。
鋼太郎さん・・・アドリブはない。セリフが多いのでアドリブを入れると崩れちゃう。

Q 今までの舞台でアクシデントは?
みなさん思いつかない様子のところ、鋼太郎さんが「オレあるよ。」と『タイタス』初日の無い筈の右手使っちゃった事件を披露すると、小日向さん知らなかったらしくビックリされてました。
すると大谷さん、『ピーターパン』の舞台でフック船長役のひとが鉤型の義手を付け忘れたというお話を思い出す。
浅野さん・・・で、人差し指を鉤の形にしてやったらしい。
場内爆笑。
小日向さん・・・「12人の優しい日本人」で、長セリフの最中のちょっとした隙に生瀬さんがトイレに行ったという話。
「出トチリはあります」。『オケピ』でのこと。川平慈英くんと話していて出番を忘れ慌てて走って。段差を忘れていて「弁慶の泣き所を打って、切れて出血」。転んだ拍子に持っていた小道具のウサギだけが舞台へ。
浅野さん・・・ユースケサンタマリアさんが引っ込む場面を間違えて居なくなって全員唖然とした話。
大谷さん・・・芝居で相撲の突っ張りをしていたら、肋骨が骨折してしまった。毎公演の度にやっていて骨にダメージを受けていたらしい。で、スローモーションでマイムにしたらそのほうがウケが良かった。
平田さん・・・つかさんの舞台で。当時は今と違って小道具は自分で準備。持っているべき石を忘れたので仕方なく持ったふりで‘在るもの’として演じたら、それが良かったと好評で。それからのつかさんの舞台は小道具の無い舞台に変わったそうで、皆さん感心。

Q 浅野さんと小日向さんがテレビでやった「タバコを吸う」マイムを見せてください。
浅野さんがやって下さったんですが、タバコを吸う一連の動作を早送りかコマ送りのように演じるマイム。お見事でした。続いて、マグロを釣って捌いて食べるまで、というのもやってくださいましたが、場内大いに感嘆して拍手喝采。すごーい。

Q 他の役をやるとしたら?
これは前にも質問されたそうで、全員が「リチャードはやりたくない」。
ずっと大声で叫びっぱなしで大変、と。
平田さん・・・まだ終わってみないと分からない。自分の役が一番好きでないと。

鋼太郎さんは最年長65歳の役だけどメンバーの中で一番年下。他の4人は偶然にもほぼ同じ年(55歳・平田さんがひとつ上)と言うと会場から驚きの声が上がったので「えーって・・・」(笑)
一番若いから体力的にキツイ役だったのかな、と。

30分ほどで終了。

by august22moon | 2009-11-26 01:21 | 観劇 | Comments(0)