2010年 02月 24日
原田眞人監督作 『突入せよ!あさま山荘事件』
これは文芸春秋社刊の原作も読んでいましたし、串田和美氏、大森博氏が出演するので見に行きました。
佐々淳行氏役の役所さんは、佐々氏の厳格な印象とは違う、まさにキャリア。
時に鷹揚で温厚。
山荘を鎮圧し、「髪の毛掴んで顔をあげさせてもいいか」と尋ねた県警機隊員にも、原作では「おう、いいとも」と応えたとなっていますが、役所さん演じる佐々‘局付’は、冷静に「いいよ」。
カミソリ後藤田役が藤田まことさんだと、大変なこと簡単に言っちゃう「君、ちょっと行ってなぁ」の名(?)セリフが活きますね。
公開当時はもちろん最初の放映でも名前も知らなかった俳優さんが今は有名になっている、というのはよくあることですが、あれ?なんか聞き覚えのある声がしたと思ったら上地雄輔さんでした。
「歴史的なリンゴだ」とやって佐々氏に「ユーモア感覚豊か」と書かれた鴻池隊員役でした。
役名が松坂っていうのは監督のユーモア感覚でしょうかね。
原田監督作品は『金融腐蝕列島・呪縛』も見ましたが、その特徴は聴きとらせようとしないかと思わせるセリフがあること(笑)
『呪縛』では全員が早口。椎名桔平さんが突然「木炭」と言うので一瞬なんのことか分からなかったりしたんですが、あ、そうか「MOF担」かなんてことがありました。
取材カメラマン役の遊人氏が仲間と喋っている場面もまったく聞き取れなかったです。
この映画にも何ヶ所かありました。警備会議場面や山荘前での機動隊隊員の会話など。
抑えた芝居でドキュメンタリー色を出させていたり。
平凡に流れそうな場面も、凝った構図で印象的な場面になっていたり。
何度も映像化された題材も新鮮な緊張感で見られました。
で、先の「顔を上げさせても~」は実際には吉野のことなので、鈴木一真さん演じた中野雅人か。
武田真治さん演じるは大河内浩。さすれば坂口のことか。
このあたり実際と違いはあるようですが、予告編で拳銃を打ちながら飛び出してきた時と、顔を上げさせられた時の不敵な笑いを口元に残した鋭い目つきに惹きつけられて、本編を楽しみに見たのに瞬きほどのあっと言う間でよく見えなかったのでした。
せめてあと2秒、いやあと1秒写していて欲しかったほど素晴らしい眼光でした。
映画は、主軸を長野県警対警察庁・警視庁とし、犯人側のことは描かれていません。
そんな程度のことで揉めるか、という諍いがコミカルに見え、ヒーローを存在させない映画となっていました。