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ル・テアトル銀座 『変身』

ル・テアトル銀座 『変身』_d0109373_20433926.jpg久し振りの銀座なので有楽町駅で降りてウロウロ。
立ち並ぶ煌びやかな高級ブランド店に、ほぉ~と溜息















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ル・テアトル銀座 『変身』_d0109373_036431.jpg前夜可愛いカフェを検索していたのに見つけられず、時間も迫ってまいりましたので劇場近くの・・・ドトール(苦笑)
銀座まで来てドトールです。ハハ
でも、あ~落ち着きますー(笑)
















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ル・テアトル銀座 『変身』_d0109373_035337.jpg『ある朝、不安な夢から目覚めると』

カフカの『変身』は私にとって特別な存在です。
中学生の時に読んでまったく理解できなかった小説。
92年宮本亜門氏主演で舞台化されたのをTV中継で見ました。その時に、その意味するところがようやく理解できたような気がしました。
グレゴールの突然の変容はどのようにも例えられ、それは肉体的なものばかりではないということに気づいたのですが、気付いたことで涙が出て、なぜ泣けたのか考えることをその時は拒否しました。
そんな勇気はなかった。
ずっと後に舞台演劇を観るようになって、役者さんが血肉を通わせることで見えてくるものがあると理解したのと同様に、奥底の気付かなかった(気付かぬふりをしていた)何かを掘り起こされることがあるのだと覚悟するようになりました。
そうなると、『変身』を観た時のことを思い出しました。
いつかは観たい。そして観るなら同じスティーブン・バーコフ演出でと願っていました。
その願いが叶いました。
しかも、肝心のグレゴール役が逸材、森山末來さんなので期待していました。

劇場内に出演者宛の贈花が置かれていませんでした。洗練されたホワイエの雰囲気を壊していないばかりか、カフカの不条理な世界への入り口に相応しく思えました。無い方がいいと感じるとは。

ポスターもロゴも素晴らしいデザイン。
母親役は久世星佳さん。
父親役は永島敏行さん。妹グレタは穂のかさん。
原作にある三人の下宿人は一人に。新しいお手伝いさんの老女も登場しません。

セットは92年版と同じ。パンフで見ると86年のティム・ロス(!)主演版から変わっていないようす。
簡素にパイプが組まれただけ。その縦横に組まれたパイプに囲まれた内側がグレゴールの部屋。
手前にはグレゴール以外の家族たちが座るスツールが三脚。
演技はほとんどがパントマイムで表現されます。
壁に大きく影が写されたり、シルエットになったり。
グレゴールの奇声などの音声も加工されます。
マイムのリズムはパーカッションとキーボードで表されました。
妹役の穂のかさんはまだ経験も浅いためか、呼吸法というのか言葉の強弱に不安がありましたが、マイムの動きは可愛らしく、鮮度が好感。
父親役は・・・ちょっと残念でした。人物が見えてこなかった。マイムのリズムにも乗れてないし。

森山さんは‘変身’後、その優れた身体能力でパイプをしなやかに軽やかに登り、ぶら下り、指先を細かく動かし、見事に異形の者を表現。きっと89年の主演バリシニコフにも劣っていないはず。
「毒虫」の不気味な形態となったはずなのに、美しく感じるほどです。
セリフの表現も多彩。窓の外を灰色に見えると表すのも一瞬見えるよう。
初めから息子の変化を受け入れられない父、否、一家の主人としての威厳を取り戻す好機を得た父から、直接に攻撃されて、グレゴールは初めて表情を崩し嘆き叫びます。
その声にも涙が見えました。
心配していた妹も母もこの兄だった異物を遂に疎ましくなる下りでも、変わらない無表情。
遂に部屋を飛ぶ羽虫を食べてしまう時の表情も当然のように無表情なのが、哀しい。
自分たちの新しい人生から排斥するべきと決心(変身)されてしまう残酷。なんという無情。
分かっている顛末にも、思わず絶望してしまいました。
グレゴールはなぜ変身した自分に狼狽し狂乱しないのだろう。甘受しているように見えるのだろう。
最期の瞬間に家族の愛情を思い浮かべながら静かにゆっくり眠るように身体を丸めてゆくのは、彼が全てを拒否し真に自由になった姿でした。


この舞台を観られたことに感謝したい。
森山さんが演じてくれて、良かったです。
無垢でいて混沌。清らかでいて闇を持っている。

休憩なしの1時間40分。
泣き腫らしちゃって俯いたままで歩み出た銀座の夜はまだ宵の口です。
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ル・テアトル銀座 『変身』_d0109373_20475340.jpg・・・偏頭痛するほど泣いちゃいました

















なんだか歩きたくてウロウロして見つけたお店『MIYUKI・KAN(みゆき館)』さんで一服。
コーヒーはポットで。2杯分ありました。 
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ル・テアトル銀座 『変身』_d0109373_2274331.jpgこの感激で、明日のさい芸初日が観られないショックも少しは癒されそう・・・。

Commented by k-mia-f at 2010-03-14 21:40
こんんばんは
『変身』評判がいいようですね。
新潟公演の席は確保済ですが、もしかすると歓迎会と重なるかも・・・。
それで『マクベス』遠征のついでに観にいくか迷い中。
A席でも6000円だしなぁ(貧乏)
観たい映画が数本かあり、どれも新潟上映の予定はないし(劇場情報になくても可能性はありますが)、当日まで決められないかも。

お目当てのカフェが見つからなくて残念でしたね。
見つけたらブログで紹介してください^^

最後に、コメントの返事が遅くなってスミマセンm(__)m

Commented by august22moon at 2010-03-14 22:30
miaさんこんばんは。遅いなんてこと全然お気になさらず。

帰宅してから調べ直したら、1ブロック間違えてて。
あとちょっとで辿りつけたのに、と残念でした。
地図をプリントアウトすればいいのに、覚えられるとタカをくくっておりました(笑)
せっかくチケ取れているのに、予定が入ると迷いますね。
『マクベス』観られるんですね。羨ましい。
私は諦めたので、是非感想聞かせてくださいね。
by august22moon | 2010-03-11 05:26 | 観劇 | Comments(2)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


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