2010年 07月 18日
小栗旬監督作 『シュアリー・サムデイ』
奇しくもジブリ作品と同日公開でロビーはたいへんな人で混みあっていました。
妹は『アリエッティ』。
まずこれはプロデューサーにとっての冒険作。
当代の人気若手俳優にメガホンをとらせるとは当の監督よりも、かなりな挑戦であったはずです。
ホンさえ良ければ、‘残る’作品になるでしょう。
ストーリーは言ってみればベタな青春ものなので、新人監督さんに無理のないお話しです。
嘗て、米米クラブのカールスモーキー石井氏の初監督作『河童』では、とにかく構図がことごとく凝っていて、アーティスト(芸術家)としての類稀なる感性が映像に現れていると感じました。
それは、岩井俊二氏という最強のパートナーを得て2作目『ACRI』の斬新なファンタジーに結実したよう。結末はともかく。ありきたりな構図のない絵が楽しめました。
小栗くんは俳優なので、現在の自分の持つ若さを投影したかったのでしょうか。
展開は回想が多くテンポもあって、いい意味での若々しさがありました。
映像技術の専門的なことは分かりませんが、主人公5人の高校時代の夏は眩しい太陽が感じられましたが、3年後の鬱屈とした彼らに注ぐ陽光は少し曇ったようなトーンで暑さを感じさせません。
そこに彼らの心情を表現しているようです。
予告編で出た、土砂降りの雨の中で打ちひしがれている5人の高校生の絵は、最後のイメージショットでしたが、たいへん印象的な絵でした。
勝地くんは、5人の中で最も弾けたコミカルな役どころで可愛らしかったのですが、少々知的な印象が残ってしまいます。がんばっていましたけど。
鋼太郎さん演じるクレージーなボスの強烈さがこのお話しの拠り所のような。
バーの窓ガラスを全損させて侵入して、小声で「よいしょ」とか「ここにドアあったのー」。不敵に笑って「オーケー?」と言うなど、不気味なキャラクターを巧く創っていました。さすが。
横田さんは5人の若者のうちのひとりに影響を与えるカリスマ的なストリートミュージシャン役。
声のトーンが甘すぎる気がしました。もう少し低くてもよかったかも。
自由人で風のような男だからかしら。
監督は若い5人を圧倒させるようなオトナを置いておきたかったのかな?
この2役を始め、2人の父親など、自分より年上のオトナを、力量に頼らずどう描けるかが重要と分かっていたようです。
エンディングの手嶌葵さんの歌は素敵でした。
そうそう。「旬ザク」登場してました。
監督拘りの品を配置する。これはよいお遊び。
衣装ディレクションもかなり良い感じ。
ワタシも初日上映を見てきました。
楽しい内容でしたよね。
初監督としては無難にまとまってるのでは?
ベテラン組がいい味出してました。
鋼太郎さんの存在感はさすが!
横田さんといい、舞台俳優さんがうまく締めているカンジがしたのは
贔屓目でしょうか?
これをきっかけに、鋼太郎さんや横田さんにもっと注目してもらいたいとは思うのですが、“軽い”(←失礼)ファンが増えるのもどうかなと思う、
複雑な心境です。
それぞれにしっかりキャラクターが創り込まれていましたね。
古典劇の複雑な芝居をやり遂げている役者さんは厚みや奥行きがあるように見えますものね。
若手人気俳優さん目当てに来た人が、共演者や演劇自体にも魅了され人気が波及することは素晴らしいことですが、仰るとおり演技をきちんと観賞できるおとなのファンが増えることこそ望ましいですね。
と、自戒を込めて。(苦笑)