2010年 12月 13日
トラン・アン・ユン監督作 『ノルウェイの森』
She showed me her room. Isn't it good, Norwegian wood
監督が日本人でないことは良かったと思いました。
サイモン・マクバーニーの舞台「エレファントバニッシュ」を観た時もそう思いましたが、村上作品にどこか無国籍な空気を感じているからかもしれません。
この監督の作品は見たことがないのですが、草や虫のカットが印象的でした。
他にも、池、海、雨など水を多用しています。
松山ケンイチさんはやはりとても良かったです。
ああ、ワタナベってこうゆう声なんだと思えました。
セリフはなるべく原作に忠実にしたようですが、独特の喋り方がちゃんと馴染んでいるようでした。
菊池凛子さんは、私の中の直子像とは違っていました。
出演を知った時に緑役かと思いましたが、やはりそちらのほうが合っていたのではないかな。
緑役の水原さんは初々しくて、演技の経験がないところも新鮮でよかったです。
なぜか時々日本人ではなくベトナムの少女のように見えてしまいました。
監督の出生が刷り込まれてるからかしら。
永沢もイメージに合っていました。エピソードがもう少しあってもよかったのに。
「突撃隊」にいたってはほんのちょっとしか出てきませんが。あ、ピッタリ!と感じるほど柄本時生くん巧い。
どうしてもカットする場面が多いのは仕方がないのですが、自分が強く印象に残っている場面はほとんど出てきませんでした。
まず冒頭のワタナベが機内で「ノルウェーの森」を耳にして過去を想起する場面がありませんでした。
直子の姉や父親などの背景をすっぱりカットしているし、
ワタナベとの会話で垣間見せる精神的に不安定な部分もあまり出てこないので、直子が崩壊する要因と過程が原作を読んでない人には分かり難いのではないでしょうか。
突然、療養所へ入ってしまったように見えます。
火事を見ながらギターを弾く場面もカット。
直子と暮らすために庭をきれいにしたりして準備した家はアパートになっていたし。
(アパートはなぜあんなに薄暗いんだろう)
親を亡くしたと打ち明けた漁師から自分の亡くなった親の話を聞かされる場面も無かった。
レイコさんも若すぎる上に彼女のエピソードまで描く時間はもはや無くて、行動が唐突になってしまっていました。
小説で完結しているものを映像化する意味を改めて考えてしまいました。
「1000万部売れていれば1000通りの解釈がある」と松山さんが発言していたように、これもひとつの解釈と見るしかないのでしょうね。
それでも松山さんのように柔らかく存在されると、自分の中で未消化だったところが腑に落ちたりして、見て良かったと思えます。
ラストの電話の場面の表情もとても良かったです。
村上作品に音楽は不可欠ですが、ジョージの弾くシタールの寂しげな音色とジョン・レノンの渇いた声が作品世界の切なさを増幅させます。
この曲を選んだ村上氏には(誤訳の認識も含め)改めて流石と感嘆するばかりです。
♪ And when I awoke I was alone. This bird has flown. So I lit a fire.
Isn't it good, Norwegian wood