2011年 11月 01日
C・ジェフズ監督作 『サンシャインクリーニング』 BSJAPAN放映
かつては学園のアイドルだった姉のローズは30代の今は問題児の息子オスカーを抱えハウスキーピングとして働くシングルマザー。学生時代の恋人と腐れ縁のまま不倫中。一方の妹ノラは、いまだに自立できずに父親と同居中。バイト先も長続きしない。父親も父親で一攫千金を狙って怪しげなお菓子の訪問販売に手を出している。そんな中、息子と家族のためにと、ローズは割のいい仕事を求めて事件現場のハウス・クリーニングを始めることに。嫌がるノラも無理やり手伝わせ、最初は現場の予想以上の惨状に悪戦苦闘する2人だったが…。
偶然合わせたチャンネルで始まって、そのまま見入ってしまいました。
ヘビーなお話しかな?と思っていましたが所謂ハートウォーミングムービー。
『リトルミスサンシャイン』のスタッフ制作作品と後で知りました。
監督はクリスティン・ジェフズ。
とりあえずお金が欲しくて、不倫相手である刑事の薦めを受けて準備もロクにせず始めちゃって、最初はゴム手袋だけで防護服もマスクも無しという無謀さ。
これは家庭用の洗剤ではダメだとようやく分かって、専門店へ行くんですがそこのオーナー・ウィンストン(クリフトン・コリンズ・Jr)が、無表情なうえに隻腕といういかにも訳ありな風貌なのに余計なことは言わないばかりか、親切に汚染除去用の洗剤を教えてくれたり、バイオハザード除去に必要な研修まで申し込んでくれる。
店では黙々とプラモ作ってるんですが、突然ローズから子守り頼まれて一瞬戸惑いつつも引き受けちゃう。
その子の誕生会にも付き合ってくれて、おじいさんが贈った約束と違う双眼鏡に「名品だ」なんてフォローまでしてくれちゃって。
なんてなんていい人なのウィンストン!!
クリフトン・コリンズ・Jrがまた巧い。清濁併せ呑む心の広さを感じさせる人物を好演して、このお話しに奥行きを与えていました。
姉妹の父親役のひとがやけに巧いぞと思ったらアラン・アーキンでした。メガネで分からなかった。
無論、当初は生々しい現場の後始末というハードさに怯むんですが、それも慣れてくると名刺作って広告打ってニュース見て姉妹で「今、ニュース見た!?」と連絡取り合って、現場に飛んで行って仕事を取っていくようになります。
保険会社に名前売っとくと仕事貰えるなんて、いかにもアメリカ。
時には、長年連れ添った老夫婦のご主人の自殺に茫然としている老婦人に寄り添ってあげていたり。
全て処分してくれと遺族から依頼されたものの、その家族の写真を大切にしていたのを見ると処分するのを躊躇ったり。様々な人生を垣間見ることになります。
この姉妹の母親も自殺しているので、当然そのことが甦ってきたり。
で、仕事用に購入した中古車に付いていたほんとに使えるのか怪しい無線で、一方的に「ママ、声が届いてる?今日は息子の誕生日よ。ママにもここに居て欲しかったわ」なんて語りかけます。
中古車屋のおやじさんが、天国までこの無線は届くんだぞと息子に言ってたのを聞いてたんですね。
素直にホロリとくる場面です。
この場面でローズ役を演じるエイミー・アダムスはセンチメンタルにならず、高揚のままにマイクを手にした感じです。
自分の子供には自分と同じ哀しい思いはさせないという決意を、この仕事で更に強くしたと感じさせました。
家族再生なんて言葉は興ざめですが、自信を失いかけた平凡な家族がそれぞれの生き方を見つけたラストに、危なっかしさを残したところが反って余韻を持たせて良かったです。
クリフトン・コリンズ・Jrを検索して辿り着き
>なんてなんていい人なのウィンストン!!
に嬉しくなって思わずコメントさせていただきます。
クリフトン・コリンズ・Jrはアクの強い役が多く(そこが好きなのですが)
こう言うさり気無いナイスガイ(死語)役は珍しいのでお気に入りの作品です。
もちろん作品自体も重くなりがちなテーマを押し付けがましくなく描いていて大好きです。
彼は「カポーティ」でも、謎の多い犯人ペリー役を‘冷血’なだけでない秘めたものを持った男として見事に演じていましたよね。
この映画では、敢て‘アクの強い’俳優さんをウィンストン役にキャスティングしたことが成功の一因となってますね。
ウィンストン、ほんとナイスガイでした!
‘押しつけがましくなく描いて’・・・仰るとおりだと思います。
例えば、亡くなった老人の部屋のメモもチラリとしか写さないとか、いくらでも重苦しい話しに出来るものを、あえてしなかったところがいいですよね。
意図せず出会った映画に感動して、そしてまた同じ思いをされた方に出会えて、とっても嬉しかったです。
コメント下さって本当にありがとうございました。