2011年 11月 14日
S・ソダーバーグ監督作 『コンテイジョン』
ミッチ(マット・デイモン)の妻・ベス(グウィネス・パルトロー)は、香港への出張後にシカゴで元恋人と密会していたが、せきと熱の症状が出始める。同じころ香港、ロンドン、東京で似たような症状で亡くなる人が続出。フリージャーナリストのアラン(ジュード・ロウ)は、伝染病ではないかと考え始めブログで指摘する。さらに帰国から2日後、ベスが死亡し、続けてベスの連れ子クラークも命を落とす。報告を受けた世界保健機構(WHO)のドクター・レオノーラ・オランテス(マリオン・コティヤール)たちが、続いてアトランタの疾病予防管理センター(CDC)が調査に乗り出す。
面白かったです。
バンデミックに必須なスケールも、行政の問題点や調査機関の奔走も、それぞれの正義や使命感との葛藤など、様々なドラマや現象が余すことなく捉えられて106分中だるみもありませんでした。
タイトルで既に感染原因が判っているので、感染者が触れるものが次々クローズアップされて観る側を集中させます。
映像も、シルエットやカメラ角度など多彩で雄弁。かなりショッキングな映像もありましたがレイティングはG。
ヒーローを創らなかったことで、ありがちなパニック映画に陥ることはありませんでした。
マット・デイモンが冒頭から出るとヒーロー的大活躍を想像してしまいましたが、残された娘を守る健気な父親を抑制の効いた演技で魅せています。
医者に「奥さんは亡くなりました」と告げられたのに「で、妻と話しができますか?」と事実と受け止められないようすや、ひとりクローゼットで涙する姿は、こちらまで涙、です。
ご近所に声掛けて無人だと家探しして食糧探すんですが、切ない表情を垣間見せるところなんて彼らしさが出てました。
次作はニール・ブロムカンプ作品ですって!
WHOやCDCの冷静で懸命な働きも描かれますが、副所長役のローレンス・フィッシュバーンは、沈着冷静で頼もしいだけでなく、人間的な部分も表現して存在感がありました。彼は声がいいですね。
あの声で「hang in there」なんて。がんばれそ。
CDCの調査官を演じたケイト・ウィンスレットはやはり巧かったです。前半のテンションを牽引していました。
彼女の出演作ってどうもトラウマになりそうに重苦しい作品が多くて。中にはなんで見ちゃったんだろうと悔むような作品も見ていたのですが、無私の使命感で颯爽と活躍する姿は初めて見ました。
ジュード・ロウも意外にこうゆう役が嵌るんですね。
ネット社会がもたらす弊害で情報が錯綜し、遅々として進まぬ行政の対策に、遂には略奪・暴動にまで発展するのにも説得力がありました。リアリズムとしてこうゆう現象を描かれると、日本との違いを考えさせられました。海外のメディアが関心する筈です。
乾電池を買い占める場面があって、そこは震災直後を思い出させました。
それにしても、ひとは毎分5~6回は無意識に顔を触るってセリフには驚きです。
そうゆうものなのね。
ひとは普通に社会生活していたら、どこにも触れないでいるのは不可能。
劇中に感染者が触れるバスの手すり、エレベーターのボタン、ドアノブ、グラス、チケットやクレジットカードのやりとり等々、‘接触’への不安を駆り立てます。
肝心なところは?と思わせておいてのラストは戦慄でした。
専門用語やデータ解析も多いし、巧い俳優の表情を見逃さない為にも吹き替えのほうが見やすいかも。
「豪華キャスト」ではなく、「全員アカデミー賞で贈る」のCMコピーは傑作。
(写真は一昨年3月に撮ったもの)
昼間、にわか雨がありましたが
それほど冷え込みのない夜です。