2012年 02月 03日
アントン・コービン監督作 『ラストターゲット』 WOWOW放映
主演のジョージ・クルーニーが制作にも名を連ねています。
原作『暗闇の蝶』の映画化。
J・クルーニーの映画は外れなく面白いからと見始めました。
都会よりも、田舎にある中世の小さな町のほうが孤高の暗殺者の孤独は際立って見えるものですね。
古い石造りの曲がりくねった路地と銃撃戦のギャップも印象的でした。
カンヌで新人に与えられるカメラ・ドール特別賞を取っている監督だけあって、斬新なアングルが目を惹くシーンもありました。
J・クルーニーは独特の俯き加減に視線を外す喋り方もせず、隙のない表情の暗殺者は珍しい役どころ。
突然現れた異邦人に奇異な目を向ける住民の視線が怪しげに映って、緊張感はありました。
でも、与えられた潜伏先も変えて渡された携帯も捨てるほど用心深く警戒を怠らない暗殺者が、娼婦(クララ)に本気になっちゃうかぁ?なんて不審に思う展開もあったりして。
ところが。
ラストシーンがとても良かったです。
それほど美しいと思えなかった川辺が、
靄に霞む女(クララ)の後姿と木漏れ日で、先にクララが言った「天国のよう」に美しい場所に成りました。
銃傷を堪えて彼女の待つ川辺へようやく着いた彼の眼には正に天国になってしまったわけですね。
振り向きざま彼の異変に気付いたクララが「エドゥアルド!」(ジャックの偽名)と叫ぶんですが、
ここでイタリア語発音というのが良かったです。
この声で血と抗争のイタリア映画になりました。
届かない声、というのもね。悲劇性を高めました。
(がんばれー彼女なら違法な医者とか知ってるだろうから、そこ行けば通報されず処置してもらえるぞーなんて思っちゃいましたですよ)
仕上げに、カメラが木立へ視線を上げるとそこには、ジャックが絶滅危惧種だと言っていた白い蝶が舞い上がっていくようすが。
ジャックの魂が昇っていくわけですね。
もうこのシーンのためだけに、すべてがあったようで。
イタリア語の叫び声を最後に持ってくるために潜伏先をイタリアにしたんじゃないの?ってくらい。
イタリア語の発音で名前を叫ぶ声って、感動的に聞こえてしまうんですよね。
アカデミー外国語作品賞でソフィア・ローレンが封筒開けて「ロベールト!」って、それまで英語でスピーチしてたのに、イタリア語の発音で叫んだだけで感動しちゃいましたもの。
昂りがより強烈に伝わってくるんです。歴史的背景や国民性もあるんでしょうが。
もうひとりの暗殺者、マチルデが登場するたびに変装として髪型変えて出て来るんですが、演じるテクラ・リューテンがとっても美しかったです。
最期はあまりに悲惨。
荻上直子監督作 『トイレット』 WOWOW放映
特に別項立てるほどの感想は無いので一緒に。
これは放映後の安西水丸さんと小山薫堂さんの『W座』で、どんな感想仰ってるか聞きたくて録画しました。
おふたりの穏やかな会話が楽しいです。
外国人が発音する「ばーちゃん」っていいですね、と薫堂さん。
「ばーちゃん」と言うよりも「ば、ちゃん」て発音。
ほとんど喋ることなく孫たちといつしか心を通わせている「ばーちゃん」を見て、
もう外国行って無理に英語喋るの止そうかと思ったと、微笑みながら水丸さん。
大らかなだけでなくおちゃめでもいらっしゃるのね水丸さんたら。
で、イラストに起した印象的なシーンは、
ばーちゃんと孫のリサが餃子の皮を作っているところ、でした。
初めての会話シーンですね。
言葉を越えての。