2012年 03月 08日
S・ダルドリー監督作 『ものすごくうるさくてありえないほど近い』
レディースデイで女性客だけ。
予想以上に見応えのあるいい映画でした。
ジョナサン・サフラン・フォアの原作タイトルがまずいいです。素晴らしい。
EXTREMELY LOUD AND INCREDIBLY CLOSEって、俄かには意味が分からないけれど。
少年の口癖と父親との思い出である矛盾語法だったんですね。
『リトルダンサー』『めぐりあう時間たち』にも感じた、時間の流れの置き方が面白かったです。
ただ亡き父の突然の死が受け入れられず、暗号のように残された鍵の先にせめて遺言となるものが在りはしないかともがく少年の姿は痛々しかったです。
またこの少年が知能は高いのにアスペルガー症候群というコミュニケーション障害があるのも、観客を少年に惹き付ける要因になっています。
この少年の特性が、過酷なまでの自己分析や、残酷な‘検索’をまでさせてしまうのでしょうか。
父親役のトム・ハンクスが安定して巧くて巧くて。
例えば、観る前にアカデミー賞にノミネートなんかされてニッコリ笑顔で写るような事がなくてよかった、この役を客観視して欲しくないってほど、理想的ないいお父さんが一体化していました。
またあの電話の声さえも巧くて・・・。
母親役のサンドラ・ブロックってどんな役を演じても同じに見えちゃってたんですけど。
今回の役自体もとてもいい役で、泣きの演技も心に響きました。
考えてみたらトム・ハンクスと夫婦役というのも面白い組み合わせ。
晴れてオスカー女優となり堂々の共演。
感激屋のヘクターとの場面は笑いを誘ってほっとさせる場面でした。
エンドロールでジョン・グッドマンとあってどこに出てた!?と一瞬焦りました。
アパートのドアマンが見憶えある顔だぞ?とは思っていたんですけどね。
私ったらこの映画見る前に書店で『なぜ君は絶望と戦えたか』なんて立ち読みしてしまったものですから、オスカー君が哀しみを爆発させた時に、本村さんの被害者は立ち直るために死に物狂いで生きなくてはならないんですとの慟哭が過ってしまいました。
最終的に、ひとそれぞれの涙があるのだとして、テロ被害を描く映画とは一線を画すお話しだったのが良かったです。
(ショーン・ペン監督作の「9.11」ドラマのように)
悲しみを知って心からひとの悲しみに寄り添えるようになるということや、
親は子供をちゃんと見つめているということも、
理不尽で非人道的な行為になど揺るがない大いなる愛情なのだから。
この演技でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたマックス・フォン・シドーは『エクソシスト』のメリン神父をリアルタイムで見ている私には、まだ82歳だったの!?という感じです。
(子供だったし、恐怖のあまり老け役だなんて余裕なかったんですね。)
地下鉄で懐中電灯に照らされた時の視線。
逃げろと指示しといて呼び鈴もう一度押してから逃げる茶目っけある後ろ姿。
戦争で生じた家族との軋轢・・・。
豊かな演技でした。
オスカー、来年こそ。