2013年 04月 20日
中村義洋監督作 『ポテチ』 wowow放映
で、『ポテチ』を初めて全編見ました。
原作にないエピソード挿入も最小限に留めた、68分という短さもよかったと思います。
濱田さんが、忠司に合ってるし。
というか、彼がキャラを自分のものにしちゃうんでしょうね。
微妙で繊細な表現が出来るので、母親に「尾崎見れてうれしい?」なんて、真意を探ろうと正面ではなくその横顔に尋ねるところは、忠司の純粋さが現れていました。
子供なんですよね。
昔はよく「あんたは橋の下で拾って来たコなのよ」なんて、子供には残酷すぎる冗談をいう母親がいましたが、そんな言葉も真に受けちゃう。
もし自分が望まれない存在であったらという恐怖に、子供なんで縛られてしまうんですね。
しかし、万有引力も三角形の内角の和も知らないまま成長できちゃったというのは、それだけで、奇跡。
母親もあまりにけろりと明るくて、密かに苦悩してる息子と、どちらが真実なのか惑わせます。
石田えりさんの影も毒もありそうな人が、いいひと演じると見る側に意外性と緊張感を持たせて、面白い構造になります。
伊坂作品のあちこちに登場する黒澤の正体不明で冷徹でドライなのか結構いい人なのか掴めない感じを、大森さんが巧く表していて、映画化の度に顔を出して欲しいなぁと思えました。
極力視線を外しているとこなんて、特にいい。
原作で泣けた、「ただのボールがあんなに遠くに」は・・・仕方ないかな?
文字で表された時ほど揺さぶられる響きは感じませんでした。
ただ、その前のホームラン打ったくらいで人生は変わらないという身も蓋も無い黒澤の言葉の影がここにあって、それでもきっとなにかが動くんだという一縷の望みが呼び起こされちゃうのでした。
気恥ずかしさをも含みながら。