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堀田善衛著 『広場の孤独』 新潮文庫版

第26回芥川賞受賞作品。
サンフランシスコ講和条約締結前夜、朝鮮動乱勃発下の新聞社に臨時社員として翻訳を務めるひとりの男の惑いと決意に、当時の日本を反映させて描かれています。

共産党員の記者、輪転機係りの青年、ハーフの記者、アメリカ人や中国人の特派員記者、祖国を亡命した元貴族のブローカー・・・。
登場人物がそれぞれにたいへん個性的で、戦後日本の縮図となっています。
亡命貴族の存在が聊か非現実的に映りますが、こうゆう不可思議で怪しげな人物もまた当時の混沌のなかには存在しえたのでしょう。
「下山事件」等の裏にも見え隠れした闇と同様。
欧州からの意図せぬ救いの手、試される日本人としての矜持、とここは比喩として絶妙。
惑い模索する男たちと対照的に視線のぶれない女たち。
(木垣の内縁の妻が、この男に会いに行った行動力も然したるもの。)

報道の一翼を担う者として条約とその後の日本を内から見守ることを選択した木垣の決断に悲壮感が見えました。
激動の時代に於けるそれぞれの姿は、リースマンの「孤独な群衆」という言葉を想起させます。


中学生の頃、この作家を知った時に、「ほった ぜんえい」と読み間違えたのですが、
そのほうが前衛と同音でいいのになんて、今でも密かに「ぜんえい」と読んでいます。


本・読書
by august22moon | 2013-08-14 22:17 | 読書 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22
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