2013年 12月 14日
ポール・グリーングラス監督作 『キャプテン・フィリップス』
これは『ボーン・シリーズ』の、『グリーンゾーン』の、あのポール・グリーングラス作品でした。
もう、すっごい迫力と緊迫感でした。
海賊役の人たちを素人さんにしたのも功を奏しています。
実際に起きた事件で結末も解っている上で、息をのむ展開になるって凄い。
モキュメンタリー形式の手持ちカメラの揺れが懸念したほど気になりませんでした。
船上で、戦場なのだから、視界が不安定になることは当たり前と感じてしまうほどのめり込んでしまいました。
吹き替え版も上映されていましたが、字幕版で見まして。戸田奈津子マムの字幕でございました。
ケビン・スペイシーがプロデュースに名を連ねていました。
放水程度の防護策では怯まない小型船に向けて撃った信号弾が当たらない時はですねぇ、もうもう!次こそ当てろー!んがー!外れたー!なんてムキになっちゃったですわ。
梯子が掛かった瞬間にそれまで台詞もかき消すほどに盛りあがっていた音楽が一気に小さくなるところも絶望感を煽りました。
無論、トム・ハンクスを配しているのですから、船長の人間性も見事に表現され、感情移入してしまうのも当然。
船員を守る勇敢な対処も、機転の効いた応答も、船長の名に恥じぬ行動でした。
ラストはT・ハンクスにアドリブで演じさせたそうですが、USネイビーとシールズの大活躍で終わりそうなところ、名優圧巻の演技で締めました。
なんといってもVFXもCGも使わず実際に2隻の駆逐艦に空母が救命ボートを囲んだ画が凄いです。
船会社を脅すだけのつもりが大国アメリカを敵にしてしまった。
スキャンイーグル、来たーっ!とかね、思わず。
ネイビーシールズがヘリから舞い降りて、艦内での無駄のない行動と的確な指示。
元シールズ隊員を配役したそうですが、彼らの体格が凄い。海賊たちの枝のように痩せこけた手足と比べると既に勝負は決まっている格差。
言語の解る隊員や交渉専門家の巧みな賭け引き。
艦上から、揺れる救命ボートの小窓越しに3名の海賊を同時に射殺する狙撃隊。
仕事が終わって何事もなかったかのように静かに戻って行くその後ろ姿。
(その場面をきっちり入れておくのが正にP・グリーングラス作品)
これを単純にかっこいいと讃えるのは浅薄でしょうが、思わず感嘆。
貧しさ故に無謀な海賊行為しか生きる道のない国の悲劇へ視点を向けさせる、単なるプロパガンダや愛国主義的に傾くのをぎりぎり回避して見えました。
寒風が吹き荒ぶ一日で、流星見物は無理ですが、夜空は冴え冴えとシリウスが青白く美しく光っていました。