2014年 04月 28日
石井裕也監督作 『舟を編む』 テレビ東京放映
地上波ってノーカットと謳わない限り、カットされていることが多いですからね。
公開時に見られていないので、初めて見ました。
原作では物足りなかった、編集部内の混沌や、辞書作りの途方もない量の作業のひっ迫感がきちんと表されていたのではないでしょうか。
原作で気になったライトノベル風なところもなく。
香具矢の働く小料理店で、次の料理の準備をさせるにも「はい」と合図しあうだけで、カウンター内では大将と板前が会話しないという、この料理店の質の高さもさりげなく示されて気持ちよかったです。
馬締光也の個性である間の抜けた感じは、演じた松田龍平さんのお得意のキャラクターを活かしたものでしたが、巧く嵌っていました。
ただ、辞書をあれだけ買いこんだのに、紙袋を軽々と持ちすぎでしょう。
他のキャスティングも違和感無かったです。
特に小林薫さんは流石の台詞力と改めて感じました。
国語学者の松本が亡くなるくだりも、病院に駆け込み、背後で看護師に走るなと注意されたのを受けて早歩きに抑えるもやはり駆けださずにいられず、病室のドアを開け愕然とする横顔だけで間に合わなかった無念を表したのはよかったです。
何人もの編集者が交代しながら、多くの人々の手にかかって、長い年月をかけて出来上がるものであることが感じられました。
海とも森とも例えられる辞書を広げて、密かに五十音を呟きながらページを捲っていく。
あのもどかしさと姿勢が正される感覚は、どんなに電子化が進んでも、失われてはならないものですね。