2014年 07月 25日
ダーレン・アロノフスキー監督作 『ノア 約束の舟』
「inspire」と断り書きがあったほどですが、さまざま設定が変っていました。
ウオッチャーという堕天使の造形や、ノアの息子のなかで長男のセムだけが妻帯者だったり。
兄弟の関係はカインとアベルを連想させているようで。
次男ハムの父との軋轢がまた別の苦悩を生んで、よりドラマチックな展開になっていました。
・・・次男坊は独立心が強いねぇ
とてつもなく壮大なお話しの、壮大すぎて大雑把に向かいそうな部分は巧く解決されていると思いました。
聖書の物語はジョン・ヒューストン監督作の『天地創造』しか見ていないので、ノア始め登場人物の服装からして斬新なデザインで驚きます。デニムっぽかったりジャケット型だったり。
ノアの風貌も、こちらがいつまでも白髪に髭で白いガウンのような聖人定番の服装のイメージが残っているからなんですけど。
反って祖父メトシェラのほうが従来のイメージです。
でも方舟というよりシェルターのような巨大建造物をいかにも造れそうな意志の強さは見えました。
劇中、神(GOD)と呼ばず創造主(Creator)と呼んでいます。
ノアが家族に旧約聖書の天地創造から失楽園までを聞かせる時も。
「Creator saw the light, and saw that it was good」みたいな。
そこは監督の拘りなんですね。
荒廃した村、人々の変容、ノアの悪夢・・・
洪水のシーンは勿論みごとなCG・VFX。
下から見上げたオリーブをくわえた鳩だけはあまりに作り物的でちょっと残念。
そもそも鳩をあの角度で見たことないのでしたけど。
虹は、もう少し幻想的に表されるかと思っていましたが、しばしば出てくる神の視点としての地球の映像と合わせて、宇宙規模の超常現象となり圧倒的に空を染めました。
とにかく重点は、いかにノアが苦悩しつつ主の命を全うしようとしたかに置かれているので、
聖人ではなく、より人間的なノアが見られました。
そうそう
ノアは神に祈らないんですよね。
一方的にお告げと思しき夢を見させられているだけ。
「神よ!」なんて一度たりとも天を仰がない。