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ガス・ヴァン・サント監督作 『プロミスト・ランド』

ガス・ヴァン・サント監督作 『プロミスト・ランド』_d0109373_0541595.jpg夏公開作が地元でようやく公開。
アメリカでは12年12月公開ですが日本での公開が1年以上遅れたのはやはり、シェールガス掘削が土壌に影響を与えるものであることがテーマとなっている点が問題となったようです。

今回久々に、共同名義ではあるけれど主演のマット・デイモンが脚本と制作を担当。
環境問題にも関心が深い彼らしい作品です。

マット演じるスティーブと気の合う同僚役で出演のフランシス・マクドーマンドとの軽妙なやりとりがユニーク。
AT車しか運転できないスティーブが、運転してみようとして駐車場から出るだけで何度もノッキング(?)しちゃうのを俯瞰で撮った場面なんて可笑しい。
住民説明会で反対意見を説く男性が高校の化学教師と知って安心してたら、実はMIT卒でボーイング社にいた工学博士。高校生に教える化学なんて彼にとっては趣味程度なんだとTV電話で本社から教えられた時は、びっくりして思わずカメラアングルから隠れたり。

ビッグプロジャクトを任され、なんとしても成功させると乗り込んだ地。
慣れた様子で地元のグロサリーストアで服を調達しバーで皆に奢り、村に溶け込もうとする。
契約に回る時、庭でおもちゃで遊んでる子供にわざと「あなたが地主さん?違うの?じゃなぜここで働いてるの?」と、好印象を得るためのマニュアルどおりの常套句を繰り返したり。
で、強かな部分もあるけれど、そこはマット演じる人物らしく、大金を手にできると分かって先に高級車買っちゃう住民男性に、大金がいかにひとを変えてしまうか目の当たりにして愕然としてしまう。
代金以上は要らないと釣銭を返す手造りレモネードを売る少女にも、真の豊かさと大切なものに気付づかされるんですね。
この女の子がまた毅然といい表情。

環境保護団体の妨害も会社側の策略だったと茫然自失で住民に打ち明けるんですが、この時、地元高校のバスケチームを応援する言葉(これもきっとマニュアル)を辛うじて最後に加えるとこなんて、切ない。
この一言の演出の為に、集会を高校の体育館でやって、大会が近いからもう練習させてと選手たちが入って来た場面がわざわざ挿入されていたのかと思えるほど。

大企業側の人間が、気付いてゆくというストーリーは平凡ですが、真相の露呈する瞬間や当惑し葛藤するマット・デイモンの表情は見応えがあります。
そうゆうのが似合ってる。
ニューヨークのトイレの水より不衛生な飲料水の地域もあるんだとハイテンションで論じながら、トイレの水でアイスバケツチャレンジするのより、似合ってる。

同僚スーを演じるフランシス・マクドーマンドが安定の巧さ。
ふたりの社員としての決定的な温度差が表されるところは巧妙でした。
少女の作るレモネードはすぐ買い、マイクナイトには上手くない歌を歌い、食事に呼ばれれば是非レシピを教えてとぬかりない立ち居振る舞い。
グロサリーストアの主人といち早く親しくなるんですが、それが計算のようにも本気のようにも見える。
本社へ帰る日にミントタブレット1個買いに来る。
つまり買うものなんてないのにわざわざお別れ言うために立ち寄ったんですね。
この男性も察して、「終わりなのか」と問う。
すると間髪入れずさらりと「終わりよ」と返しながらも、複雑な女心を垣間見せて秀逸。

ペンシルベニアの広大な土地が冒頭で延々と映されます。
その土地は、変えてはいけないと思わせる、これぞアメリカという美しさ。
住民にとっては、美しいだけでは生きていけないのだけれど。

ああ、どうか。アリスのところへ行っちゃうなんてラストは、マットのアイディアじゃありませんように。


映画
by august22moon | 2014-11-26 21:56 | 映画 | Comments(0)

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by august22
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