2014年 12月 28日
デヴィッド・フィンチャー監督作 『ゴーンガール』
強烈な妻に比べればいかにも頼りなげにみえるベン・アフレック。
『アルゴ』の次になにをするか注目されるところ、彼の風貌とその印象を活かした役柄を選択するとは。
ボニー巡査部長役のキム・ディケンズにしても、コーヒーカップ片手に現場に乗り込む姿など颯爽とした女性を好演。
この女性なら最終的には真実を暴き出せるのだろうと想像させます。
ニックの妹、エイミーの母親と、登場する女性がみな芯が強く逞しく描かれています。
だから夫ニックにしてもエイミーの父親にしてもどこか影が薄くみえちゃうという描かれ方。
近年の日本でも問題視されている「印象操作」というのが本作のテーマとなっていて、クレバーな妻はこれを利用し、不器用な夫はこれにのまれ翻弄されてしまうという対比が面白かったです。
まずロザムンド・パイクのキャスティング成功ありきで、この演技は高評価されるのでしょうね。
とくに美しさが際立っているわけでもないのですが、あの光のない目がサイコパスには効果的。
幼い頃から抑圧されてきた自我があり、それが唯一自分を曝け出せる相手だった夫に裏切られたのをきっかけに爆発するという背景でエイミーの悲劇を表しています。
しかしそこまでの執念はどこからくるのだろう。
相手に復讐するための完全犯罪への異常なる情熱が、彼女の生きるよすがみたい。
血痕を残すために、自分の血を採血しタッパーに溜まる間、読書してるなんていうのは序の口で。
計画が意外なところで破綻してしまったがためのリカバリーが、逆にさらにエイミーのサイコパスぶりを覚醒させてしまい、復讐を完結させる好機に切り替えてしまうのが、あまりに壮絶。
しかし、お金を奪われないでいたら、当初の計画はどうだったのか。実はデジー殺害も計画にあったのか。
明晰な人間なら、計画通りにいかなかった場合も考慮してあるはずだし。
カレンダーには死ぬ日までが記されていたけれど、これは自分が死ぬ日ではなくて、誰かのだったのかも。
自分が死んだら、仕上げが見られないですものね。
冒頭の薄い朝の光、室内の逆光、褪せた色合いなど、フィンチャー作品らしい映像が印象的でした。